96話 香原さんのお守り
警察は早速巡回もしてくれたし、ひとまずは大丈夫だと信じたい。
千里眼でちらっと見えた香原さんは随分綺麗になっていた。息子が勝手にハーブティーを飲ませていたのだ。ストーカーからのストレスをハーブティーの精神安定効果で誤魔化していたのだ。気付いてやれなかった事が悔やまれる。
あれだけ姿が変わっているなら、おそらく香原さんには魔力がある。だから一度でも会えば、離れていても何かあった時私が転移で助けに行ける事は分かった。それまで持ち堪えられる程のお守りを作らないと。
香原さんに思い入れのない私が作れるかは分からないけれど、やってみるしかない。
常に持ち歩くには適度な大きさの魔石が良い。私は緑色の鹿の魔石と、虹色の鱒の魔石を手に取った。緑の魔石をオーバル型に変形させ、涙型にした虹色魔石をステンレスのリングで繋げて組紐を付けた。鱒の魔石には隠蔽をかけ、改めて香原さんを思い浮かべる。
息子を好いてくれる女の子、息子が自分を守ったあの懐中時計を渡すくらい大切にしている女の子だ。何かあったら息子が悲しむから、絶対に守ってあげたいと強く強く願う。
「できた」
鑑定する。
[守護のストラップ:製作者唯芽。香原柚月専用]
和樹のパートナーである限り厄災から身を守る
隠蔽効果効果の発動を隠蔽する
何とか使用者制限が付いたけれど曖昧な文言でちょっと不安だ。前に作った宇宙玉よりは効果が高い気はするが。
とにかく明日息子からこれを香原さんに渡してもらおう。一応隠蔽をかけたから効果は目には見えないはずだけれど、私の事を話すかどうかは息子に任せるしかない…。
私はバローマの拠点から商業ギルドへの道を唯花と歩いていた。
神様が上げたいらしいこの世界の生活水準。私は今まで全く興味が無くて見ていなかったけれど、地球に無くてここにあるものと、その逆をきちんと見極めないといけない。
物価もばらつきがあるから、ここで無価値でも地球で使えるものがあるかも知れない。
「安くて効率の良い魔道具が鶏の魔石でできないかな……」
一番良いのは、ダンジョンでもっと良い魔石が手に入る様になって、良い魔道具師さんがこの街に来ることだと思うけれど。
深い階層の良い魔石でならどんな魔道具もできそうだけれど、私一人が取ってくるんじゃダメだ。
「何が問題で深い階層に到達できないんだろう。やっぱり大きなマジックバッグが無いとだめなのかな。どう思う?エリザさん」
「マジックバッグがあったとしても、水が日持ちしません。食料は塩漬けにすれば日持ちしますが水が無ければ食べられません。獲物を持ち帰るのはともかくとして、浅い階層を無視して深く潜って強い魔物を倒す事ができたら、レベルが上がって今より到達階数は伸びるかも知れませんが」
水魔法の普及率は低いわけでは無いけど、全ての飲み水を魔法で何とかするのは無理だそうだ。
「そっか。塩漬けでも乾燥でも、水は絶対に必要だ。ダンジョンに川あったよね?」
「あります」
エリザさんはダンジョンの大まかな地図を見せてくれた。
各階層にあるのは、かなり親切設計だ。
「なんだ。これだったらいけるかも」
エリザさんの意見を参考に、考えてみる事にした。




