↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/325

95話 対話

息子は無言で朝食を食べていつもより早い時間に玄関に向かう。外にあの子達の気配はもう無い。だけど私は何か無性に気になって、懐中時計の場所を魔力感知で探ったがこの近くには無い。


「和樹!懐中時計は……」


玄関まで追いかけた私とは目を合わせる事なく息子は黙って家を出た。

そうだ。プライバシーより、守るための自衛だ。


千里眼で懐中時計の位置を確かめると、香原さんが見えた。


そうか、息子がストーカーに遭っているなら、香原さんが逆恨みされているかも知れない。彼女が巻き込まれている事に何故思い至らなかったのだろう。

でもあれは使用者制限があるから香原さんに効果は無い。あのお守りでは彼女は守れない。


「和樹と喧嘩したのかい?」

黙って俯くと、夫は私の肩に触れるか触れないかの力でそっと手を乗せた。

「君達は2人とも、何でも一人で考えてしまう癖があるよね。もっと僕に話してくれないか。そんなに僕は頼りないかい?」


答えられずにいると肩に置かれた手が離れた。


「僕に言えない事なら、お義母さんに会った時相談してみるか、せめて和樹本人とは話し合った方がいい」

私は隠し事をしている罪悪感で顔を上げる事もできずにいた。

夫が私の前にしゃがみ、私の目を見た。


「唯芽。和樹はもう小さな子供ではないよ」


夫は静かに立ち上がると、カバンを持ってリビングを出た。玄関の鍵が閉まる音がして、しばらくしてエンジン音が遠ざかっていった。


「マスター、もう、和樹さんに言うべきです」

わかってる。でも。


お母さんの店に行くと、すぐに私の様子に気付いたお母さんは、私をカウンターに座らせた。

「酷い顔だよ。何があったんだい?」

事情を話すとお母さんは私の目を見て言った。

「あんたが息子を信用していないのにどうやって和ちゃんがあんたを信用できるんだい?あんたには家族を守れる力があるんだろう?なら話すべきじゃないのかい?」


私なら、あの子達を守れる。


私はすぐにメッセージを起動する。

『懐中時計は和樹にしか効果がない。香原さんにはこの前あげた宇宙玉ストラップを代わりに渡して欲しい。帰ったら全て話すから』


玄関の音と、息子の魔力の気配がした。私は唯花を膝に座らせリビングで静かに息子を迎える。


「和樹、先に一番大事な事を言っとく。私はあの懐中時計にあなたの身を守る様に願ったの。そしたらもともとあなたについていた守護霊様が宿ってあなたを守ってくれた。あれは他の人が持っても効果が無いの。香原さんにはちゃんと別の物を作るから信じて待って欲しい」


使用者制限があるから、強い効果を発揮するのだ。

立っていた息子が荷物をおろして神妙な顔で私の向かいに座り、テーブルの上に懐中時計を置いた。


「つまり母さんには霊能力があって不思議なお守りを作る力があるってこと?」

悪態をつかれると予想していたので驚いた。

「信じてくれるの?こんな訳わかんないことを」

「信じるよ。あんな事があったら信じるしかない。俺がずっと感じてた違和感は、その人形?それも母さんが作ったの?」

唯花は私の膝から立ち上がってお辞儀をした。

「初めまして。ゴーレムの唯花です。この家に忍び込んでいた事を謝罪します」

息子は身構えた。まさか喋るとは思っていなかった様だ。

私は全てを話した。転移から全て。


「父さんには?ちゃんと話した?」

「言えないよ。どう思われるか分からないもの。私はもう人間じゃないくらい強い。もし怯えられたらと思うとどうしても言えない。和樹にだって本当は言うつもり無かった」


言える訳ない。初ちゃんの時みたいに嫌われて去られる覚悟なんてできてない。

だって私のかけがえのない家族なんだ。


「父さんには母さんが言えるタイミングまで黙ってる。けど、俺は今も母さんを人間じゃないとか怖いとか思わないし、父さんも多分大丈夫だと思うよ」

「多分じゃだめなのよ……」


息子は、いずれ話す覚悟ができるまで黙っている事を約束してくれた。


懐中時計を受け取った私は側面に小さな魔石を埋め、発動する時光らない様に偽装し、紛失防止は息子自身が場所が分かる様に変更した。

私は万が一のときのために、懐中時計の魔力をしっかり記憶した。


家族を守ることが、私にとって一番大切。


「これからは一人で何でも決めるな。母さんが興味ない事考えるの苦手なのは知ってるから、俺が代わりに考えてやるよ。だから絶対先に相談しろ」


息子が強く言う。

自分の方が大変なのに、私の事を気遣ってくれる息子に、報いないと。


「分かったよ。ストーカーの事は警察にも相談したし、私もあなた達を守るから。だから和樹も1人で何とかしようとせずに私や律樹さんにもっと相談して欲しい」

「分かった」

家の中に、異世界の事を相談できる相手ができた。昨日成人したばかりの息子が心から頼もしく思えた。


第二章完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。