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第五話

「ほぉ~見つかったか。

 それは重畳重畳」


 その老人は見るからに怪しかった。今いる場所が薄暗い宿の一室である事を差し引いても、こげ茶色のローブを深くかぶり喋り方から何まで怪しかった。

 この老人が今回のマリーたちの依頼者だった。マリーたちもジンたちと同じくトレジャーハントを生業としている。昔はジンたちと組んだこともあるが、訳あって今は決別している。とう言うか、マリーたちは積極的にジンたちを目の敵にしている。

 そんなマリーたちもジンたちと同じ様に王都でいろいろと遺跡の情報を探していた。そんな中、王国学術院の教授であるこの老人から依頼が来たのだ。

 そう、こんななりのドナテルロ・ワプルツと言う胡散臭げな老人は、れっきとした王国学術院の教授なのだ。そして、マリーたちはその王国学術院の卒業生だった。今まで直接の面識はお互いに無かったが、老人の方がマリーたちの事を聞いてたこともあり連絡してきたのだ。巷で噂になっている遺跡の現地調査を頼みたいと。

 巷と言うが王国全土では無かったし、言うほど確かな情報とは言い難かったのでマリーたちはこの噂をスルーしていた。しかし、依頼となれば別だ。別途必要経費が落ちるのであれば行くのもやぶさかではない。

 そして来てみるとジンたちがすでにおり、同じように噂の遺跡を狙っている。これ幸いと見つからない様にジンたちを監視していたのだ。それで、遺跡の情報が手に入ったのは幸運だった。



「一応確認しますけど、大きな門だけですの?

 何かほかに目印になる物とか」

「無いの。まったく無い。

 ただこの街近くの森の中にあると言うだけじゃ」

「何ともあやふやな感じですわね。

 何かの言い伝えか何かでしょうか?」

「いや、違う。

 儂が幾つかの書物からそれらしい記述を読み解き距離を割り出した所、たまたまこの街の近くだっただけじゃ」


 老人は何か自慢するかのように言う。その言葉にマリーの右後ろに立っていたラルクは疑問を投げかける。


「それなら、今流れている噂は何処から出たのでしょうか?」

「さぁ~のぉ~、儂の論文でも見たんじゃないかのぉ~」

「……そうですか」


 何とも胡散臭げだった。ラルクはそう感じてマリーに目を向けるが、肝心のマリーは気にもしていな様で感心していた。


「さすがですわ。

 噂になるほどの論文とは。このマリー、感服いたします」

「そうじゃろ、そうじゃろ。

 フォッフォッフォッフォ」


 若干、素直で人を疑うことが少ないマリーに対しラルクは何か言いたげだったが、そういったところも含めて自分の主をラルクは敬愛していたので、何かあった時はフォローすればいいかと気持ちを切り替える。



「それでは、これから現地調査に向かいます。

 早ければ明日にでもご連絡いたします」

「少し待つのじゃ。

 そこには、儂も連れて行ってほしいのじゃ」

「ご一緒にですか?」


 突然の要求にマリーたちは戸惑う。街から半日ほどの所とはいえ魔物が出る森の中、マリーたちでさえ油断すれば魔物の餌だ。

 それを足手まといの老人を連れて行くとなると何があるかわからない。


「ドナテルロ様、お言葉ですが魔物が徘徊する森ですので、御身が危険です。

 我々に任して頂ければよろしいかと」


 ラルクは穏便に拒否すると、老人は首を振り答えた。


「いや、何、おぬしらの事を疑うわけではないのじゃ。

 しかし、かの地は儂が長年求めていた場所。

 そして、儂なら遺跡の中もある程度分かるかもしれん。

 自分の身は自分で守る。これでも魔術の素養はあるしの」

「とは言いましても……」


 ラルクはマリーに判断をゆだねる様に視線を送る。マリーは少し考えてから告げる。


「わかりました。

 ただ、遺跡やその道中ではわたくしたちの指示に従うことが条件です。

 従わない場合は見捨てる事もありますのでご了承を」

「よろしいのですか?」

「致し方ないでしょう。

 多分、このご老人はなりふり構わずついてこられるでしょう」

「はぁ~、そうですね。そのような感じを見受けられます」

「フォッフォッフォッフォ。

 結構結構。それで儂はかまわん。

 この目でしかと遺跡を確かめれば死んでも本望じゃ」



 何か漠然と面倒事になりそうな気がしてきたラルクだった。


 ちなみに一言も喋らなかったヘルネは寝ていたわけでは無い。たとえ腕を組み目を瞑っていたとしても……。




――― ◇ ――― ◇ ――― ◇ ――― ◇ ――― ◇ ―――




 そんなマリーたちの悪巧み?に気付く訳も無く、ジンたちはリオの装備を買いに来ていた。

 ここは街でも大きい店で、冒険に役立つ装備が一式揃うほどいろいろな物が売っている店だった。

 そんな店に早朝から押しかけ、リオたちは試着室を出たり入ったりしていた。



「これなんかどうかしら?」

「かわいい~~♪」「ピコ♪」

「おい!」

「じゃ~こっちもどうかしら?」

「こっちもかわいい~~♪」「ピコ♪」

「おい!!」

「何よ?」「?」「ピコ?」

「いつまでやるつもりだ?」

「いつまでって、決まるまでよ。もちろん」「うん」「ピコ」

「だ~~!!

 今すぐ決めろ! 今すぐにだ!!」


 それまで、いらいらとした様子で立っていたジンは地団駄を踏みそうな勢いで言う。それに首を傾げならジン以外の三人は問う。



「「どうして?」」「ピコ?」

「言わねぇと分からねぇのか!

 これを見ろ! 何着揃えればいいんだ?」


 ジンが指示した先には服が何着も置いてあり、何着試し着したか分かる様であった。その上、それ以上に増えていきそうな感じだった。


「だいだい、今から森に入るって言うのに、そんなひらひらな服はありえんだろ!

 藪だってあるし、ノースリーブなんかダメじゃねぇ~か!

 ましてや、アオ助に服なんている訳ねぇだろ!!」


 デデ~ンという様に話を振られたアオは若干恥ずかしそうにする。その姿はノースリーブのワンピースだったが……。性別は女の子なのだろうか?


「ええ~。かわいいのに~」「ピコ~」

「そうよ。

 女の子はいつも身だしなみに気を付けないといけないのよ。

 男と違って!」

「だからと言って、限度ってもんがあるだろうが」

「女心が分かってないわね。

 それだからモテないのよ」「うんうん」「ピコピコ」

「ほっとけ」


 言っている事はジンの方が正しいはずなのに三対一と分が悪かった。世の女性の理不尽にジンは嘆きながら肩を竦める。



「服選びで今日一日潰すつもりか?

 さっさと行こうぜ、探索に」

「遺跡は逃げないわよ」

「逃げはしないが、他の誰かが先に見つけるかも知れねぇだろう?」

「……わかったわよ。

 じゃ~これとこれとこれね。

 続きは帰ってからにしましょう」

「は~~い」「ピコ~」

「……始めに決めたやつじゃねぇか。

 しかも帰ってからもやるのかよ」

「うるさいわね~。

 男が細かいことを気にしないの」

「へいへい」


 遺跡に向かう前から何やら疲れているジンだった。




 そして、ジンが危惧したようにマリーたちが先に遺跡に向かっている事は知るよしも無かった。

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