第九話 十二支、再び
神様は、十二支を再び呼び集めた。
遥か昔……。
一度だけ集まった動物たち。
それが今、再び集結しようとしていた。
「いったい何の用だい?」
「急に呼ばれたから来てみたけど」
最初に現れたのは、子(鼠)だった。
続いて。
「神様が呼んだなら、来るしかないだろう」
丑(牛)。
「面倒だな」
寅(虎)。
「何か面白いことでもあるの?」
卯(兎)。
「また神が私を呼ぶとはな」
辰(龍)。
「辰(龍)様が呼ばれたのなら、当然私も」
巳(蛇)。
「何か食べるものある?」
午(馬)。
「まあまあ、落ち着こうよ」
未(羊)。
「で? 何の集まり?」
申(猿)。
「……眠い」
酉(鶏)。
「いったい何かあったんだ?」
戌(犬)。
「不愉快だ」
最後に亥(猪)。
十二匹。
それぞれが集まった。
そして。
「……」
全員の視線が、一匹に集まる。
そこにいたのは……一匹のアザラシだった。
「場違いだね」
子(鼠)が言った。
「まぁ……そうですね」
未(羊)が答える。
「ここに何しに来たんだ?」
寅(虎)が首を傾げる。
「……」
アザラシは何も言わなかった。
神様が口を開く。
「今日、君たちを再び呼んだのは」
「もう一度、レースをしてもらうためだ」
「……レース?」
丑か(牛)が聞き返す。
「今さら?」
「そう」
神様は頷いた。
「ただし」
神様はアザラシを見る。
「今回は、彼も参加する」
「……」
十二匹の視線が、再びアザラシへ向く。
アザラシは静かに立っていた。
正確には立てていなかった、這っていた。
「……この子が?」
卯(兎)が首を傾げる。
「うん」
「レースに?」
「うん」
「……どうやって?」
アザラシは答えた。
「這う」
「……」
誰も何も言わなかった。
すると、寅(虎)が小さく笑った。
「なるほど」
辰(龍)も口元を上げる。
「随分と面白いことを考えたものだな」
アザラシは二匹を見る。
「何?」
「別に」
寅(虎)が言う。
「そう」
アザラシは興味を失ったように寅(虎)と辰(龍)を見る。
「僕はただ、自分がどこまでやれるか確かめたいだけだよ」
十二匹が静かになる。
神様は、その言葉を聞いていた。
「……それでは」
神様が告げる。
「レースの準備を始めよう」
遥か昔……。
一度だけ行われたレース。
それが。
今度は、アザラシを加えて始まろうとしていた。




