第三話 神様の居場所
神様の居場所が分からない。
アザラシは考えていた。
「……困ったな」
神様に理由を直接聞く。
そこまでは決まった。
問題は、その神様がどこにいるのか。
「誰に聞けばいいんだろう?」
辺りを見渡す。
当然、答えはない。
しばらく考えたあと。
「……そうだ」
アザラシは気付いた。
「干支になれた動物に聞けばいい」
神様から声を掛けられた動物たち。
彼らなら、神様のことを知っているかもしれない。
アザラシは海を出た。
まず向かったのは、子(鼠)のところだった。
「ちょっと聞きたいんだけど」
「何?」
「神様って、どこにいるの?」
「……なんで?」
「会いたいから」
「理由は?」
「聞きたいことがある」
「なにを?」
「僕がレースに呼ばれなかった理由」
子(鼠)は少し黙った。
「……ああ」
「何か知ってる?」
「いや、知らないけど」
「そう」
アザラシは少し考える。
「君は、神様に呼ばれたんだよね?」
「まあね」
「自分から行ったんじゃなくて?」
「神様から声が掛かった」
「そのとき、どう思った?」
「干支になるチャンスがきたと思ったよ」
「なるほど」
アザラシは頷いた。
「じゃあ、自分で参加するかどうか決めたんだ」
「そうだけど?」
「……いいな」
小さな声だった。
「何が?」
「いや」
アザラシは首を振る。
「ありがとう」
その場を離れる。
次に向かったのは、丑(牛)だった。
「君も神様に呼ばれたんだよね?」
「そうだ」
「レースに参加するかどうかは?」
「自分で決めた」
「そう」
また一つ確認する。
寅(虎)も。
卯(兎)も。
辰(龍)も。
巳(蛇)も。
午(馬)も。
未(羊)も。
申(猿)も。
酉(鶏)も。
戌(犬)も。
亥(猪)も。
みんな、神様から声を掛けられていた。
そして。
みんな、自分の意思でレースに参加していた。
アザラシは何も言わなかった。
「……」
しばらくして。
海辺に戻る。
波の音を聞きながら、アザラシは空を見上げた。
「……みんな、選べたんだ」
参加するか。
参加しないか。
挑戦するか。
諦めるか。
その選択肢を、みんな持っていた。
アザラシには。
それすらなかった。
「……僕には、選ぶこともさせなかったんだ」
静かに呟く。
怒鳴るわけでもない。
泣くわけでもない。
ただ。
納得できなかった。
「僕が負けるとでも思ったのかな」
神様が何を考えていたのか。
まだ分からない。
ただ一つだけ。
分かったことがある。
「……やっぱり、直接聞くしかない」
「僕がどうするかは、僕が決めることだから」
その目に、迷いはなかった。
しかし。
「……神様、どこにいるんだろう?」
そこだけは、まだ分からなかった。




