第二十話 あと一匹
コロンコロンコロンコロンコロン。
アザラシは進んでいた。
……残り三匹。
「……」
アザラシは前を見る。
そこには……。
戌(犬)。
「……!」
戌(犬)がアザラシに気づく。
「まさか……来たのか……!」
アザラシは止まらない。
コロンコロンコロンコロンコロン。
「待て!」
追ってくる。
だが、距離は縮まらない。
むしろ、離れていく。
「くっ……!」
アザラシはその横を通り過ぎた。
コロンコロンコロンコロンコロン。
「…………」
残り二匹……。
そして。
さらに一匹……午(馬)。
「……!」
牛(馬)がその姿を見つける。
「何だと……」
アザラシは、ただ転がっていく。
コロンコロンコロンコロンコロン。
「まだだ!」
相手が速度を上げる。
それでも、アザラシは少しずつ前へ進む。
「なぜ……!」
そして。
また追い抜く。
コロンコロンコロンコロンコロン。
アザラシは振り返らない。
そのまま前を見る。
「……」
残り一匹……。
アザラシは、少しだけ立ち止まった。
「……」
前方を見る。
そこに、最後の一匹亥(猪)がいる。
アザラシは。
その姿をじっと見つめる。
「……」
そして、ゆっくりと転がり始めた。
コロン。
コロン。
コロン。
亥(猪)もアザラシに気づいた。
「……来るか」
アザラシは進む。
しかし、その距離はまだ縮まらない。
「……」
コロンコロンコロン。
アザラシは。
少しだけ、首を傾げた。
「……」
そして、またを前を見る。
最後の一匹。
その背中を追いかける。
だが。
アザラシはまだ追い抜かなかった。
レースはまだ続いている。
そして、アザラシの前には。
あと一匹。
…………残り一匹。




