第十五話 迫り来る脅威
十二支たちは、変わらずアザラシの前を走っている。
その後ろ……。
アザラシは。
ズリ。
ズリ。
ズリ。
進んでいた。
しかし、の距離は。
確実に縮まっていた。
「……」
寅(虎)は、何度目か分からないほど後ろを振り返っていた。
「……近い」
「まだ結構あるよ?」
申(猿)が答える。
「スタート直後を思い出せ」
「まあ……そうだね」
申(猿)も認める。
アザラシは、少しずつ。
確実に近づいてきている。
「……腑に落ちない」
寅(虎)が呟いた。
「何が?」
「……差が縮まるはずはないんだ」
「……」
申(猿)は答えなかった。
確かにそうだ。
走る十二支と。
這うアザラシ。
本来なら、差は広がり続けるはずだった。
それなのに……縮まっている。
「……!」
辰(龍)も、ようやく後ろを振り返った。
「……」
遠くに……。
一匹のアザラシ。
ズリ。
ズリ。
ズリ。
「……」
辰(龍)は黙っていた。
「どうした?」
寅(虎)が尋ねる。
「……何でもない」
辰(龍)は前を向いた。
「ただの気のせいだ」
「気のせい?」
「……あのプレッシャーは……」
申(猿)が呟く。
「どんどん……近づいてくる!」
「……」
その頃、アザラシは。
「……」
前だけを見据えていた。
少しずつ……。
確実に近づいている。
しかし。
「……まだ」
アザラシは呟く。
「……まだ足りない」
ズリ。
ズリ。
ズリ。
身体を動かす。
さっきより今……。
今より次は少しだけ……。
上手く動ける!
「ここ」
身体を捻る。
地面を押す。
進む。
「こっち」
また進む。
「なるほど」
アザラシは、自分の身体の感覚を確かめる。
「こうすれば、もっと進める」
ズリズリ。
ズリズリ。
ズリズリ。
神様は、その姿を見ていた。
「……」
もう。
「ただ這っているだけ」とは言えなかった。
アザラシは。
自分の身体を理解し始めている。
「……」
神様は少しだけ目を細めた。
そして……十二支たちとの距離を見る。
「……可能性が」
神様は呟いた。
「追いつくかもしれない」
その言葉は、アザラシの耳には入らなかった。
ただ。
前へ。
前へ。
進んでいた。
ズリズリ。
ズリズリ。
ズリズリ。
そして……十二支たちの背後から。
少しずつ……。
その姿が大きくなっていた。
誰もまだ、その意味を理解してはいなかった。




