第十四話 這い寄る進化者
レースは続いていた。
十二支たちは、アザラシの遥前方を走っている。
その後ろ、アザラシは。
ズリズリズリ。
進んでいた。
しかし……少しずつ。
その距離が縮まっていた。
「……」
寅(虎)は、後ろを見る。
「……やっぱりだ」
「何が?」
申(猿)が尋ねる。
「あいつ」
寅(虎)は目を細めた。
「近づいてきてる」
「……え?」
申(猿)が振り返る。
遠くに……一匹のアザラシ。
ズリズリズリ。
「……本当だ」
申(猿)が呟く。
「でも、まだ遠いよ?」
「最初はもっと遠かった」
「……」
申(猿)は黙った。
確かにレースが始まった直後、アザラシは、ほとんど見えないほど後ろにいた。
それが今は……。
少しだけ、大きく見える。
「……速くなってる」
寅(虎)が言った。
「少しずつだけどな」
「そんな馬鹿な」
辰(龍)が口を挟む。
「這っているだけだぞ?」
「でも、近づいてきてるのも事実だ」
「その程度の速度上昇は誤差でしかない」
「またそれ? 認めなよ」
申(猿)が呆れる。
「さっきから誤差、誤差って」
「事実だ」
辰(龍)は前を見る。
「我々が止まっているわけではない」
「じゃあ、なんで近づいてきてるの?」
「……」
辰(龍)は答えられなかった。
その頃、アザラシは。
「……」
前を見ていた。
十二支たちの姿が……。
少しだけ、近くなっている。
「……」
しかし、アザラシはそれを見ても何とも思わなかった。
「まだ」
ズリズリズリ。
「もっと」
身体を動かす。
少し捻る。
身体を戻す。
地面を押す。
そして……進む。
「……これなら」
また少し。
「……こっち」
さらに少し。
アザラシは、自分の身体と向き合い。
速くなった。
それは確かだった。
だが……。
「僕は、まだ……自分のことを……」
アザラシは呟く。
「もっとできるかもしれない」
ズリズリズリ。
神様は、その言葉を聞いていた。
「……」
そして、少しだけ笑った。
「そうか……」
神様は空からアザラシを見る。
「君は、自分のことが知りたかったんだね」
アザラシは答えない。
ただ……前へ……前へ進む。
十二支たちとの距離は。
少しずつ。
確実に……縮まっていた。




