第十二話 自分なりの進み方
レースは続いていた。
十二支たちは、アザラシの遥か前方を進んでいた。
その後ろ。
アザラシは。
ズリズリズリ。
ひたすらに地面を這っていた。
「……」
神様は、その姿を見ていた。
十二支たちとの距離は、どんどん広がっている。
「……大丈夫かな」
神様が呟く。
しかし。
アザラシは止まらない。
ズリズリズリ。
「……遅いね」
卯(兎)が後ろを見る。
「かなり離れたな」
丑(牛)も振り返る。
「わかりきっていただろう」
辰(龍)が言う。
「勝負になるはずがない」
巳(蛇)が頷く。
「おっしゃる通りです」
「……」
寅(虎)は何も言わなかった。
ただ、少しだけ……アザラシを見ていた。
「!……あいつ」
「まだついて来ているぞ」
「ん?」
申(猿)が振り返る。
「そりゃついては来るでしょ」
「いや」
寅(虎)は目を細めた。
「……そういう意味じゃない」
遠くにいるアザラシ。
その姿は、相変わらず地面を這っている。
しかし、少しも止まっていない。
「最初から……ずっと同じだ」
寅(虎)が呟いた。
「何が?」
申(猿)も少し考える。
「速度に変化が無い……確かに」
十二支たちは再び前を向いた。
アザラシは。
ズリズリズリ。
ただ進んでいた。
しばらくして。
神様だけが気づいた。
「……」
アザラシの動きが。
少しずつ変わってきている。
「……まさか」
アザラシは、前を見ていた。
「……うん」
小さく呟く。
「これなら」
ズリズリズリ。
「もっと……」
神様は目を見開いた。
「……何をしているんだ?」
アザラシは答えない。
ただ、地面を這いながら。
少しずつ、自分の進み方を変えていた。
現状、劇的に速くなったわけではない。
手足が生え、走れるようになったわけでもない。
ただ、自分にできることを一つずつ。
「……これが僕のやり方……!」
アザラシは初めて、自分というものを少しずつ理解し始めていた。
そして、遥か前をいく十二支たちとの距離が。
ほんの少しだけ、縮まり始めていた。




