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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生
第1章【砂に黄金、泥に蓮】

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第84話-蓮、腹の内を探る

ティグリスに自分の拠点を紹介した後、蓮はクラン【秘密の花園】のメンバーにも、彼のことを紹介することにした。


突然、見知らぬ虎人族の青年を連れてきた蓮に対して、三人の反応はそれぞれだった。


ポロンはユニークイベントで仲間になったNPCということに興味を示し、大根もティグリスの加入を歓迎してくれた。


オクもまた、特に反対する様子はなかったのだが、話を聞いた後で少し気になることを言い出した。


「へぇ~、ユニークイベントで仲間になったNPCなんや。なかなか珍しいやん」


「そうなんですよ。俺もまさか、こんなことになるとは思ってなかったんですけどね」


「まあ、ユニークイベントっちゅうのは、何が起こるか分からへんからなぁ」


オクはそう言うと、ティグリスの方へちらりと視線を向けた。


「せやけど、ああいうイベントってな、終わるときがちょっと寂しいもんなんよ」


「……え? どういうことですか?」


蓮は思わず聞き返した。


「いや、別に大した話やないねん。イベントの最中は色々あるんやけど、いざ終わってみると、妙に空しくなることが多いんよなぁ」


「……そういうものなんですか?」


「まあなぁ。終わってみんと分からへんこともあるっちゅう話や」


(……終わるときが寂しい、か……)


蓮はオクの言葉が少し気になった。


ティグリスを仲間にしたばかりだというのに、もう別れ際の話をされるとは思っていなかったからである。


(……そういえば、このイベントって、どうなったら終わるんだろうな……)


ティグリスの目的は、孤児院のために100万Gを稼ぐことだった。


しかし、それがそのままユニークイベントの終了条件になっているのかどうかは分からない。


(……まあ、まだ始まったばかりだしな……)


蓮はもう少し詳しく聞いてみようと思った。


だが、この後にはホウキ星との打ち合わせを控えている。


(……今すぐどうこうなる話でもないだろうし、また今度聞けばいいか……)


若干後ろ髪を引かれる思いはあったものの、蓮はそれ以上追及しないことにした。


そして、クランメンバーへの紹介を終えた蓮は、ホウキ星との打ち合わせに向けて準備を始めた。


今回の目的は、以前から頼まれていた【ブロンズゴーレム】の討伐について、具体的な話を進めることである。


(……さて、そろそろホウキ星さんと話をしないとな……)


蓮はホウキ星にメッセージを送り、チャットモードを起動した。


そして、相手が入ってくるのを待つことにした。


(……それにしても、このチャットモードって本当に便利だよなぁ……)


ゲームを始めてからまだそれほど経っていない蓮だったが、このチャットモードはすでに何度か利用していた。


ゲーム内で直接会おうとすれば、当然ながら互いの居場所を確認し、待ち合わせ場所を決める必要がある。


しかし、チャットモードであれば、互いがどこにいようと簡単に話し合いをすることができる。


もちろん、機能そのものは現実世界の通話アプリと大して変わらない。


それでも、広大なゲーム世界の中で利用するとなると、その便利さはまた格別だった。


(……まあ、考えてみれば当たり前の機能なんだけどな……)


蓮はそんなことを考えながら、ホウキ星が入ってくるのを待っていた。


すると、ほどなくしてチャットモードに新たな参加者が現れた。


どうやら、ホウキ星が入ってきたようだ。


「どうも、こんばんはです、RENさん。お待たせしてすいません」


「こんばんは、ホウキ星さん。大丈夫ですよ。全然待ってませんから」


二人は現実世界と大して変わらない挨拶を交わした。


ゲームの中とはいえ、こうしたやり取りは現実とほとんど変わらない。


(……さて、問題はここからだよな……)


蓮は改めて、今回の打ち合わせの目的を思い出した。


ブロンズゴーレムの討伐。


当初は回復役としてホワイトピジョンを確保するつもりだったが、ティグリスを仲間にしたことで、その予定は大きく変わってしまった。


(……まずは、その辺りから説明しないといけないよな……)


蓮は少し考えを整理すると、ホウキ星に向かって口を開こうとした。


しかし、その直前だった。


「それでRENさん。準備の方はできましたでしょうか?」


「あー……準備ですか……。正直に言うと、ちょっと不安な部分はありますね。というのも、最初に考えていた計画とは、少し違う方向に進んでしまいまして……」


蓮は少し言葉を濁しながら答えた。


もっとも、ホウキ星が尋ねてきたのは、討伐に向けた準備の進み具合という、ごく普通のことだった。


そのため、蓮も特に困ることなく返答できたのだが、問題はその後だった。


「なるほど。やっぱりRENさんは【召喚士】ですからね。【ヒール】は覚えられなかったですよね」


「あー……まあ……そうですね……」


蓮は曖昧に答えた。


確かに、回復手段を確保できていないという点では、ホウキ星の言うとおりだった。


当初は【ホワイトピジョンの心】を入手し、回復役となる召喚モンスターを確保するつもりだった。


しかし、ティグリスを仲間にしたことで、予定していた資金のほとんどを失ってしまったのである。


(……さて、どう説明したものかな……)


蓮は少し考え込んだ。


もちろん、ティグリスが仲間になったことを伝えるだけなら、それほど難しい話ではない。


問題は、ティグリスとの出会いがユニークイベントによるものだったという点である。


(……これって、どこまで話していいものなんだろうな……)


ホウキ星とは、ほぼ同じ時期にゲームを始めたこともあり、これまで何度かやり取りをしている。


今回のブロンズゴーレム討伐についても、協力するつもりで話を進めてきた。


だからといって、何でもかんでも話してよいのかと問われれば、蓮には判断がつかなかった。


何しろ、このゲームでは情報そのものに価値がある。


そのことは、これまでに出会ったPLAYERたちから何度も聞かされていた。


ポロンもそうだった。


オリバもまた、同じようなことを話していた。


このゲームにおいて、情報は武器である。


(……情報は武器、か……)


蓮は改めて、その言葉を思い返した。


ゲームを始めたばかりの頃は、教えてもらう側だったこともあり、それほど深く考えていなかった。


しかし、今は少し事情が違う。


自分が他のPLAYERに情報を伝える立場になって、初めて考えなければならないことが出てきたのである。


(……ティグリスのことを話すのはいいとしても、ユニークイベントのことまで説明する必要はあるのかな……)


もちろん、ホウキ星と協力してブロンズゴーレムを討伐する以上、こちらの戦力については伝えておいた方がよいだろう。


だが、ティグリスを仲間にした経緯まで詳しく説明する必要があるのかどうかは、また別の話である。


(……うーん……)


蓮はどう説明するべきか決めかねたまま、しばし考え込んでしまうのだった。

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