第79話-禍福は糾える縄の如し
「お~。RENさん、ユニーク発生させたんだねぇ~。おめでとう~♪」
「そうなんですか……。っていうか、ユニークって何ですか?」
ティグリスへの返答に迷った蓮は、ひとまず彼との会話を保留にし、ポロンに相談することにした。
早速連絡を取ってみると、すぐに返事が届いた。
蓮は待ってましたとばかりにチャットモードへと移り、カールの孤児院で起きた出来事から、ティグリスに仲間入りを申し出られたことまでを説明した。
すると、ポロンから返ってきたのは、いつもの軽い調子の祝福だった。
「ユニークっていうのは、プレイしてて特定の条件を満たしたときに起こる、特別なイベントのことかな~」
「特別なイベント……ですか? ってことは、攻略法とかは……?」
「ん~、あるにはあると思うけどね~。確か、プレイヤーの総数に対して何%とか、発生する割合が決まってるはずなんだよね~。だから、狙って探そうとするとめっちゃ面倒な感じだよ~」
「……なるほど」
つまり、発生条件を調べようにも、そう簡単にはいかないということらしい。
(……結局、自分で判断するしかないってことか)
蓮はポロンの説明を聞きながら、改めてティグリスの申し出について考えた。
「RENさんの今までの話を聞いた感じだと~、多分、そのトラの亜人の子が100万G稼ぐまでは、RENさんと一緒にいる感じだよね~」
「ですよね……。ちなみに、途中で死んだりした場合は……?」
「それは大丈夫じゃないかな~。恐らくだけど、その亜人の子が100万G稼ぐまでは、貧乏神みたいにRENさんに引っ付いてくると思うよ~」
「貧乏神って……。いいことないじゃないですか」
ポロンは楽しそうに笑っているが、蓮としては不安しか覚えない。
そもそも、これから自分自身の金策が必要だということは、すでに結論として出ている。
それなのに、さらに他人の面倒まで見ることになるかもしれないのだ。
(……いや、ちょっと待てよ。俺だって100万Gなんて持ってないんだけど?)
ティグリスが自分で稼ぐつもりなのは分かっている。
だが、戦闘経験もなく、何ができるのかも分からない相手を連れて歩くとなれば、それなりに手間もかかるだろう。
ましてや、100万Gという目標を達成するまで一緒にいるとなれば、いつまでかかるのか見当もつかない。
(……本当に貧乏神だったらどうするんだよ……)
蓮は思わず頭を抱えたくなった。
「RENさん、今、金策のこと考えてるでしょ~?」
「まあ……はい。確かにそうですね」
「それも分かるんだけどね~。でも、ユニークって基本的にはプレイ内容の助けになるように設定されてるからね~」
「……そうなんですか?」
「うんうん~。パッと見た感じだとデメリットになるかもって思っても、最終的にはプラスになると思うよ~」
「……なるほど」
(……貧乏神って言ったり、プラスになるって言ったり、どっちなんだよ……)
ポロンの説明を聞くたびに、蓮の考えはあっちへ行ったりこっちへ行ったりと忙しい。
もっとも、ポロンが言っていることも分からなくはなかった。
ユニークという特別なイベントである以上、何かしらの意味があるのだろう。
もちろん、実際にどんな結果になるのかは分からない。
それでも、ここまで話を聞いて、蓮の気持ちは少しずつ固まりつつあった。
(……まあ、結局のところ、引き受けた方がいいんだろうな)
ティグリスが孤児院のために稼ぎたいと思っていることは、先ほどの会話から十分に伝わってきた。
蓮自身も、できることなら力になってやりたいと思っている。
金策のことを考えると不安は残るが、それだけを理由に断るのも違う気がした。
(……まあ、引き受ける方向で考えるか)
もっとも、ティグリスの目標である100万Gについては、蓮自身も稼ぎ方を教えてほしいくらいなのだが。
そんなことを考えながら、蓮はポロンとのチャットを終えた。




