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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生
第1章【砂に黄金、泥に蓮】

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第78話-鶏口となるか牛後となるか、まだわからない

「俺の名前はティグリス」


「ティグリス君っていうのか。年はいくつなの?」


突然、仲間に入れてほしいと言い出したトラの亜人の少年に、蓮は戸惑いながらも年齢を尋ねた。


見たところ、蓮よりも若干小柄ではあるが、その差はわずかなものだ。


周囲にいる亜人の子供たちと比べても、特別幼いという印象は受けない。


「十八だ。もう成人してる」


「…………」


年齢を聞いたものの、蓮はどう反応すればよいのか分からず、思わず黙り込んでしまった。


というのも、このゲームの世界では何歳から成人として扱われるのか、蓮は知らなかったのである。


ましてや、亜人の寿命がどのくらいなのかも分からない。


十八歳で成人だと言われても、それが人間と同じ感覚なのかどうか、判断のしようがなかった。


ただ、少なくとも体格だけを見れば、幼い子供という感じではない。


「……ダメか?」


蓮が黙り込んでいると、ティグリスが不安そうに尋ねてきた。


どうやら、蓮の沈黙をあまり良い反応ではないと受け取ったらしい。


「いや……あのね。仲間って言っても、そもそも俺が何をしているのか分かってるの?」


「えっ? そんなの冒険者だろ? 盾持って鞭装備して、モンスターを二体も連れてるんだから、誰だって分かるだろ」


「……ああ、まあ、そうだよな」


蓮は改めて自分の格好を見下ろした。


確かに、盾を持ち、鞭を装備し、そのうえモンスターを二体も引き連れている。


(……まあ、確かに。この格好を見て農民だと思うやつはいないよな……)


そう考えると、何だか自分の質問がおかしく思えてきた。


蓮は苦笑いを浮かべながら、ティグリスに向き直った。


「まあ、冒険者なのは間違いないけど……。それで、どうして俺の仲間になりたいんだ?」


「それは……さっきカールが言ってただろ? この孤児院には寄付が必要だって。だから、俺がこいつらの分まで稼がなくちゃいけないんだ」


(……まあ、そうだよなぁ。何となく予想はつくよ)


蓮は周囲を見回した。


ここは粗末な木造の建物だ。


別の部屋にいたとしても、カールとの会話が聞こえていたとして不思議ではない。


ティグリスも、孤児院が置かれている状況を理解しているのだろう。


「それで、モンスターと戦って稼ぎたいってことか?」


「分かんない。そうできればいいとは思うけど、正直、モンスターと戦ったことはないから自信もないんだ。だから、それ以外のことでも何でもする」


「……ずいぶん現実的だな」


「正直、俺も死にたくはないしな」


「…………」


ティグリスの言葉を聞いて、蓮は改めて彼がNPCであることを意識した。


時々忘れそうになるが、蓮が今いるのはゲームの世界である。


蓮自身はPLAYERなので、戦闘で敗北したとしても、自分の拠点に戻ってもう一度やり直すことができる。


だが、NPCの場合はどうなのだろうか。


(……そういえば、NPCって死んだらどうなるんだ?)


これまで、蓮はそのことを深く考えたことがなかった。


PLAYERと同じように復活できるのか。


それとも、一度死んでしまえば、それで終わりなのか。


(……いや、待てよ。そもそも俺、そんな基本的なことも知らないのか……)


蓮は目の前に立つティグリスを見つめた。


彼は孤児院のために働きたいと言っている。


だが、そのために命を懸けることまで望んでいるわけではない。


少なくとも、先ほどの言葉を聞く限りではそうだろう。


(……これは、簡単に返事できる話じゃないよな)


蓮はどう答えるべきか考えながら、しばらくティグリスの顔を見つめていた。


「なるほどな……。ちなみにティグリスは稼ぎたいって言ってるけど、具体的にどのくらい稼ぎたいとかってあるのか?」


「んー……わかんねぇけど……。100万Gくらい?」


(……そんなん、俺も稼ぎたいわ!)


蓮は思わず大声でツッコミそうになったが、何とかこらえた。


100万G。


それは、現段階の蓮にとっても簡単に稼げるような金額ではない。


それをこうも軽々しく口にされると、何とも言えない気分になる。


(……まあ、具体的にどのくらい必要なのか分かってないんだろうな)


蓮はそう自分に言い聞かせ、何とか冷静さを取り戻した。


「100万Gか……。そいつはかなりデカい目標だぞ。多分、俺についてくるよりも、他の人を当たった方がいいんじゃないかな」


「でも、待ってても他の人がいつ来るかなんて分かんないだろ? だったら、お兄さんについていくよ」


「……なるほどな」


ティグリスの言葉からは、何としてでも自分で稼ごうという積極性が感じられた。


(……それだけ行動力があるなら、昼間に街へ出て仕事を探してもよさそうなもんだけどな)


蓮はそんなことを考えたが、そもそもここはゲームの世界である。


NPCがどこまで自由に行動できるのかも分からない以上、現実世界と同じ感覚で考えるのは違うのかもしれない。


それに、ここまで話してみて、蓮自身もティグリスを仲間にすることに悪い印象は持っていなかった。


むしろ、できることなら力になってやりたいと思っている。


ただ、問題はそこではない。


(……そもそも、NPCを仲間にするって、どうすればいいんだ?)


ティグリスの申し出を受け入れたい気持ちはある。


しかし、初めての事態に、蓮はどう判断すればよいのか決めあぐねていた。

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