第67話-百聞は一見に如かず
「あのー……ホウキ星さんって、ランクはⅠなんですよね? レベルはいくつなんですか?」
「レベルは10です」
(ランクⅠのレベルMAXでも勝てないのか……)
現在の蓮は、ランクⅡの【召喚士】だ。
ランクアップしたことでステータスも上昇している。
とはいえ、蓮自身のレベルはまだ1。
ランクⅠだった頃と比べて、圧倒的に強くなったというほどではない。
そんな自分が本当に力になれるのだろうか。
蓮は若干の不安を覚える。
「それって、ゴーレムがかなり強いってことですよね?」
「そうですね……」
「だったら、もう少し弱いモンスターしか出ない場所に移動するとかはできないんですか?」
わざわざ勝てないゴーレムが出現する場所で、採掘を続ける必要もないように思える。
入手できるアイテムの価値は下がるかもしれないが、まずは安全に採掘できる場所でレベルを上げ、それから戻ってくればいい。
蓮としては、その程度の考えで聞いただけだった。
だが――。
「あー……でも、それだとクランを抜けられないんですよね……」
「クランを抜ける?」
思ってもいなかった言葉が返ってきた。
ここまで話している間にも、ホウキ星の表情が時折曇ることはあった。
蓮はてっきり、ゴーレムに勝てず採掘できないことが原因なのだと思っていた。
だが、どうやら違うらしい。
「クランを抜けるって……どういうことですか?」
そう尋ねると、ホウキ星の表情が再び少しだけ曇った。
「意味としては、言葉そのままに受け取ってもらって構いません。今所属しているクランを抜けて、ゲームを続けていきたいということですから」
「……」
蓮は、ホウキ星が所属しているクランについて詳しく聞こうかと思った。
だが、すぐに思いとどまる。
今ここで詳しく聞いたとしても、話を聞けるのはホウキ星からだけだ。
おそらく、クランについて良くない話を聞くことになるだろう。
だが、その話だけをうのみにして、自分が何かを判断していいのかは分からない。
そう思った瞬間、蓮は何も言えなくなってしまった。
「とりあえず僕としては、クランを抜けるために銅塊を100個納める必要があります。それとは別に、ギルドへ100個納品すれば【見習い採掘師】からランクアップできるので……できれば合わせて200個、手に入れたいんです」
「銅塊200個ですか……」
力になれるかどうかも分からない状況で提示された条件が、銅塊200個。
今の蓮には、それがどれほど大変なことなのかすら分からない。
ただ、ギルドへ銅塊100個を納品することが【見習い採掘師】のランクアップ条件だという。
ゲーム側から提示されている条件なのであれば、まったく達成できないような数ではないのかもしれない。
「ちなみに、報酬は応相談となっていましたけど、具体的には何ができるんですか?」
「えーっと……正直なところ、手持ちのGもそれほど多くないので、僕の方から報酬を提示するというよりは、何か僕にできることがあれば、その分協力しますよっていう形ではダメでしょうか?」
(あー……この辺はやっぱり、ランクⅠのPLAYERってことなのかな)
ギルドの案件を利用して協力者を募集するなど、蓮よりよほどAFOに慣れているように見えたホウキ星。
だが、手持ちのGには余裕がないらしい。
そんなところに、自分がランクⅠだった頃の姿を重ね、蓮はなぜか少しだけ安心した。
(やっぱりG稼ぐのって大変だよね……)
「ちなみに、出てくるゴーレムについて、何か分かってることってありますか?」
「出てくるモンスターは、正確には【ブロンズゴーレム】っていうゴーレムなんですけど……ご存じないですか?」
「ブロンズゴーレムですか……」
「……」
(採れるのが銅塊らしいからな……ブロンズゴーレムって、そのまんまじゃん)
名前を聞いて妙に納得はしたものの、蓮には肝心のモンスターに関する知識がない。
ブロンズゴーレムという名前を聞いたところで、どれくらい強いのか見当もつかなかった。
そんな蓮の表情を見て、ホウキ星もそれ以上説明できることがないのか、困ったように黙ってしまう。
「んー……じゃあ、試しに一度、実際に戦ってみることってできますか?」
「それって……鉱山に行って、一緒に戦ってもらえるってことですか?」
「そうですね……。それが一番分かりやすいなら、そうしたいかなと思いますけど……」
蓮の返事を聞いた瞬間、ホウキ星の表情が目に見えて明るくなった。
まだ案件を受けると決めたわけではない。
それでも、たった一度だけでも一緒に戦ってくれるということが、今のホウキ星にとっては十分に嬉しいことなのだろう。




