第66話-ハズレと思う結果は人次第
モルスの店ですれ違った冒険者は、自らを【ホウキ星】と名乗った。
蓮とホウキ星はお互いに軽く自己紹介を済ませると、詳しい話をするためにチャットモードへと移行する。
(いやー、このチャットモードってのも便利だよな……)
通常であれば、人に聞かれたくない話をする際には、周囲の状況を気にしなければならない。
だが、チャットモードならその必要がない。
チャットモードへ移行してしまえば、周囲にどれだけPLAYERがいようとも、会話の内容が他人に漏れることはないのだ。
こういうところは、やはりゲームならではだろう。
そんなことを考えながら、蓮はさっそく案件について詳しい話を聞いていく。
まず、ホウキ星は予想通りランクⅠの【見習い採掘師】だった。
「採掘師って、やっぱり鉱山とかで鉱石を掘る職業なんですか?」
「まあ、それが基本ですね。でも、別に鉱山じゃなくても【採掘】自体は使えますよ」
「そうなんですか?」
「はい。極端な話、そこら辺の道端でも使えます」
「道端でも?」
思っていた採掘のイメージと少し違い、蓮は首を傾げる。
ホウキ星の話によると、採掘師は様々な場所でスキル【採掘】を使用することによって、その場所に応じたアイテムを入手できる職業らしい。
鉱山であれば、鉱石をはじめとした様々な鉱物。
だが、【採掘】を使えるのは何も鉱山だけではない。
普通の道端で使用することもできる。
しかも、基本的にハズレはないらしい。
「えっ? じゃあ、道端でも何かしら手に入るってことですか?」
「一応は。ただ、道端だと砂とか土とか雑草とか……そんなのばっかりですけどね」
「あー……なるほど」
確かにハズレではない。
何かしらのアイテムは手に入っているのだから、嘘でもない。
だが、それを当たりと呼んでいいのかは微妙なところだろう。
「だから採掘師って、どこで【採掘】するかが結構重要なんですよ。同じスキルを使っても、場所によって手に入るものが全然違いますから」
「へぇー……」
一見すると、どこでもアイテムを入手できる非常に便利な職業。
だが、価値のあるものを手に入れようと思えば、それに適した場所を探さなければならない。
どこで【採掘】するのか。
それ自体が、採掘師にとって重要な要素になるということなのだろう。
そして今回、ホウキ星が【協力要請】を出した理由も、まさにその採掘場所に関係しているらしかった。
「それで、今回の案件はどういった内容になるんですか?」
そう尋ねると、ホウキ星の表情が一瞬だけ曇った。
「実は僕、今【鉱物同好会】っていうクランに所属してるんですけど……」
「はい」
クランに所属していることといい、今回のようにギルドを通して自分で案件を出していることといい、ランクⅠの冒険者ではあるものの、蓮にはホウキ星が完全な初心者だとは思えなかった。
「このクランなんですが、名前の通り採掘師を中心に運営されているクランなんです。みんなで集まって【採掘】をして、手に入れたアイテムを使いながらゲームを進めていこうって感じですね」
「みんなで集まって採掘するんですか?」
「はい。クランリーダーが【一致団結】っていうスキルを持ってるらしくて、一定範囲内に集まって同じ作業をすると、入手できるアイテムのレア度が上がるらしいんです」
「へぇー……そんなスキルがあるんですね。いいじゃないですか」
複数人で同じ作業をすることで、その成果に補正がかかる。
採掘師が集まるクランとは、かなり相性のいいスキルなのだろう。
蓮は少しだけ羨ましく思った。
「話だけ聞くと、みんなで仲良く採掘してる感じで楽しそうですよね」
「そうなんですけど……実際には、楽しいことばかりでもないんですよ」
「といいますと……?」
「今、クランのみんなで採掘している場所が、南の山にある鉱山なんです」
それは、ギルドに出されていた【協力要請】にも書かれていた場所だ。
「その鉱山に、【採掘】を使うと【銅塊】っていう銅の塊が取れる場所があるんです。今、僕が割り当てられているのがそこなんですけど……」
ホウキ星はそこで一度言葉を切る。
「そこで【採掘】を使うと、決まってゴーレムが出てくるんですよ」
「えっ……敵が出てくるんですか?」
思わず聞き返した蓮だったが、すぐに別の疑問が頭に浮かんだ。
(……モンスターが出てくるのは、ハズレじゃないのか?)
先ほど、【採掘】には基本的にハズレがないと聞いたばかりだ。
砂や土ならまだ分かる。
使い道があるかどうかはともかく、少なくともアイテムではある。
だが、ゴーレムはどう考えてもアイテムではない。
「はい。それで、そのゴーレムを倒せばアイテムを入手できるらしいんですが……」
ホウキ星は困ったように笑う。
「僕一人だと、勝てないんですよね……」




