第63話-初めての金策
「それにしても……五十億Gか」
オークションの画面に表示された数字を見ながら、蓮は改めて呟く。
高い。
今の自分からすれば、間違いなく途方もない金額だ。
だが――。
「……あれ?」
そこで蓮は、ふと何かが引っかかった。
(ちょっと待てよ。確か召喚モンスターの経験値って、1EXPにつき1Gで買えたよな?)
以前、召喚士サロンでゴブリンをLv20まで育てるために必要な経験値を調べた時、その数字は五百万を超えていた。
蓮は試しに、フリーウルフのレベルをLv14に設定し直して購入金額を確認してみる。
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【購入金額:80,000G】
【購入しますか? YES/NO】
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「八万G……」
以前、サロンでゴブ太の経験値をGで購入しようとした時のことを思い出す。
確かLv14まで上げるために必要な累計経験値も、八万EXPを少し超えるくらいだったはずだ。
召喚モンスターの経験値は、1EXPにつき1Gで購入できる。
それなら――。
「もしかして、これって思ったほど高くないのか?」
オークションの値段がどのように決められているのか、今の蓮にはまだ分からない。
だが、少なくとも出品されている召喚モンスターの価格には、それなりの理由があるのかもしれない。
もちろん、だからといって安いわけではない。
五十億G。
今の蓮がどう頑張ったところで、簡単に手にできるような金額ではなかった。
「そっかぁ……ということは、やっぱり金策って重要なんだな」
ここにきて蓮は、改めて金策の重要性を認識させられた。
現段階で蓮が思いつく金策といえば、サロンでモンスターの心を購入し、それをオークションで売ることくらいである。
まだ詳しい相場を調べたわけではないが、これまで聞いた話からすると、モンスターの心一つでも数万G程度の利益は見込めるらしい。
だが――。
(そんなこと考えるPLAYERなんて、他にもゴロゴロいるよな……)
そもそも、仮に一つ売るたびに数万Gの利益が出たとしても、それを積み重ねて先ほど見た五十億Gのような金額に届くには、一体何回繰り返せばいいのか。
「……十万回でも足りないよな?」
考えただけで気が遠くなる。
そんなことを延々と繰り返していたら、それこそ金策だけで一体どれだけの時間がかかるのか分かったものではない。
それに、今の蓮には闘技場の準備もある。
オクは自分のランクアップがかかっているだけに、闘技場についてはできるだけ早く準備を進めたいはずだ。
そんな彼女に、金策のために闘技場の準備を後回しにしたいなどと言ったところで、良い返事が返ってくるとは到底思えない。
「うーん……金策か……」
そう考えたところで、蓮の頭に一人の商人の顔が浮かんだ。
「……モルス」
以前、蓮に装備を提供してくれたPLAYERである。
確か彼は、自分のことをランクⅣの商人だと言っていた。
それに、かなりの古参PLAYERでもある。
ポロン、オク、大根がどれほど長くAFOをプレイしているのかは知らない。
オリバとモルスの関係についても、蓮にはよく分からない。
だが、少なくとも金を稼ぐ方法についてなら、今の自分より遥かに詳しいはずだ。
「……一回、モルスさんのところに行ってみるか」
そう決めた蓮だったが――。
「でも、おっと。その前に……」
蓮は再びオークションの画面へと目を向ける。
モンスターの心をサロンで安く購入して、それをオークションへ出品する。
これなら、少なくとも今すぐにでも始められる金策だ。
「せっかくだし、一回やってみるか。出品の方法にも興味があるしね」
蓮は一度オークション会場を出ると、急いで召喚士サロンへ向かい、ランクⅠのモンスターの心を一揃い購入する。
そして再びオークション会場へ戻ってきた。
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【落札にきた】
【出品にきた】
【やめる】
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今度は【出品にきた】を選択する。
すると所有しているアイテムの一覧が表示されたため、その中から【ゴブリンの心】を選択。
続いて、希望する販売価格を入力する画面が表示された。
「値段は自分で決めるのか……」
適当に決めてしまう前に、蓮は一度【ゴブリンの心】の出品状況を確認してみることにした。
現在出品されているものを見てみると、価格はおおよそ二万G前後。
「じゃあ、とりあえず二万Gでいいか」
蓮は販売価格に20,000Gと入力する。
すると、最後に注意事項が表示された。
どうやら商品が売れた場合、販売価格の10%が手数料として差し引かれるらしい。
「二万Gなら、手数料が二千Gで……手元に入るのは一万八千Gか」
それでも、心屋での購入価格は1,000Gだ。
売れさえすれば、17,000Gの利益になる。
蓮はその条件を了承し、【ゴブリンの心】を20,000Gで出品した。
それに、これなら売れたとしても、サロンへ行けばいつでも簡単に補充できる。
(もし一日に何個も売れるなら、これを繰り返すだけでも結構稼げるんじゃないか?)
そんな少し安直な考えを抱きながら、蓮はモルスのところへと向かっていった。




