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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生
第1章【砂に黄金、泥に蓮】

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第58話-例外のないルールは無い

「まずはRENさん。これから私たちは、闘技場そのもののルールから、戦闘に関する細かなルールについて話をすることになるのですが、その際に忘れてはいけないことがあります」


「はい……えっ……?」


闘技場の基本的なルールから、戦闘に関するルールへ。


その話に移ろうとしたところで、オリバが蓮をじっと見つめる。


いつものニヤニヤした表情とは違う。


「今回の場合、経験値を賭けるという案については、正直なところ運営に審査を通してみなければ実現できるか分かりません。ですから、それが駄目だった場合についても考えておかなければならないということです」


「あー……はい。確かにそうですね」


どれだけ重要なことを言われるのかと身構えていた蓮だったが、それなら自分にも予想できる範囲の話だった。


少しだけ安堵の表情を浮かべる。


「ではRENさん。先ほどのスライムとの決闘で、私が提案したルールをもう一度思い出していただけますか?」


「はい。確か……召喚したスライムを倒したら、オリバさんが戦闘を放棄……した感じで終了だったと思うんですけど……」


蓮は、つい先ほどポロンが叫び声とともにスライムを一刀両断した光景を思い出しながら答えた。


「そうですね。では、なぜ私がそんなルールを提案したと思いますか?」


「えっ……」


蓮は言葉に詰まった。


そもそも蓮には、決闘のルールなんて分からない。


経験者であるオリバがそう言っていたから。


その程度の気持ちでしか聞いていなかったのだ。


「まず第一に、召喚士が召喚モンスターを闘技場で戦わせる場合、召喚士自身も闘技スペースへ移動しなければなりません」


「なるほど……」


(そういえば、闘技スペースにいるメンバーでパーティを組んだりしたよな……)


召喚モンスターだけを相手に戦うわけではない。


あくまでも決闘を行うのはPLAYER対PLAYERなのである。


「そうするとですね。当然、相手側のPLAYERが召喚士本人を攻撃してくる場合もあります。まあ、攻撃されるだけならまだいいのですが……中には【盗む】などを仕掛けてくる不届きなPLAYERもいるわけです」


「盗むですか……? アイテムとか盗られちゃうんですか……?」


「アイテムだけではありません。Gを盗られる場合もあります。ちなみに、どのような方法であれ、一度相手の手に渡ってしまったアイテムやGは、その時点で相手のものになります。運営に問い合わせても取り合ってはくれません」


「えっ……」


「こういったPLAYER同士では決められないシステム上のルールを、裏ルールなんて呼ぶPLAYERもいますね」


それを聞いた蓮は、ようやく自分自身にも関係する話なのだと認識したのか、ハッとした表情で唾を飲み込んだ。


「ですから、そういった行為を最初から除外するためにも、あらかじめ禁止事項として宣言し、闘技場のルールに盛り込んでおく必要があるのです」


「なるほど……」


(この人、やっぱり危機管理は徹底してるよな……)


「後は、全体攻撃を封じる効果もありますけどね」


「えっ……全体攻撃も駄目なんですか?」


「別に駄目というわけではありません。ただ、決闘は基本的に一発勝負です。こういった勝負の場合、全SPを注ぎ込んだ全体攻撃を使えば、一瞬で勝負がつくことも珍しくありません。特に装備でINTなどをきっちり上げてきたりしますからね。何の対策もしていなければ、カモにされて終わるだけです」


「……?」


カモにされる。


その言葉に、蓮は違和感を覚えた。


「でも、闘技場って相手に経験値を稼がせるための場所ですよね? カモにされてもいいんじゃないですか?」


「【盗む】についても、最初から装備品以外のアイテムやGを空にしておけばいいだけですからね。確かに、そうしておけばカモにされるというのも一つの方法かもしれません」


そこでオリバが一度言葉を切った。


「ですが、実は闘技場について、まだ一つお話ししていないルールがあります」


「お話ししてない?」


オリバの言葉を疑っているわけではない。


だが、蓮はなんとなくきな臭いものを感じ始めていた。


「例えば、5対5で決闘を行ったとしましょう。相手側のPLAYERが二人倒れ、こちらは召喚モンスター五体がすべて倒されたとします」


「はい」


「その時点で私が敗北を宣言すれば、決闘はそこで終了です。召喚モンスター五体分の経験値は、最後まで残っていた相手側のPLAYER三人で分配されます。そしてこちらは、倒したPLAYER二人分の経験値を召喚士が獲得することができるのです」


オリバの説明を聞き、蓮は少し不満そうな表情を浮かべた。


「どうしました?」


「いや……でも、それができるなら、無理に闘技場へ来る必要ってないんじゃないかなって……」


「確かにそうですね。ただ、この仕組みにはいくつかの制約があります」


オリバは人差し指を立てる。


「まず一つ。PLAYERを倒して経験値を獲得できるエリアは、PK――PLAYER KILLが認められたエリアでなければなりません。そして、このPK可能エリアを用意するというのが意外と手間なのです」


(もしかして……ここの施設って、かなりいい施設なのか?)


一目見た瞬間から、ここが立派な施設であることは蓮にも分かっていた。


だが、初めて聞く言葉まで出てきたことで、改めてこの闘技場について頭の中で整理し直す。


「それと、決闘で経験値を獲得できるのは、敵味方ともに最後まで残っていたキャラクターだけです」


(これは、さっきの話からなんとなく分かるな……)


蓮が頭の中を整理しているのを察したのか、オリバは一つずつ区切るように説明を続ける。


「そして確かに、PLAYER同士で決闘を行った場合でも経験値を獲得することはできます。ただしPLAYERを倒して経験値を獲得できるのは、倒した側から見て、相手が同ランク以上の場合に限られます」


「ちょっと待ってください」


蓮はそこでオリバの話を止めた。


「例えば、オリバさんと俺が対決したとします。オリバさんが勝った場合、オリバさんに経験値って入るんですか?」


「私がRENさんを倒しても、RENさん本人の分の経験値は入りません。私の方がRENさんよりもランクが上ですからね」


「じゃあ、やっぱり……」


「ただし――」


オリバが言葉を重ねる。


「RENさんが召喚したモンスターを私が倒した場合、その召喚モンスターの分については経験値を獲得できます」


「……え?」


「なぜかは分かりませんが、召喚モンスターについては、PLAYER同士にあるランク差による経験値取得制限の対象にはならないそうです」


そう言って――。


オリバは、いつものニヤニヤした表情に戻った。


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