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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生
第1章【砂に黄金、泥に蓮】

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第55話-蓮、しっくりこない

「みなさん、これでランクに関係なく経験値を獲得できるということは実感できましたね」


決闘が終了すると、オリバは蓮たちの方へと歩み寄ってきた。


口調は穏やかで、その表情にも柔らかな笑みが浮かんでいる。


だが、蓮の表情は若干引きつっていた。


どうにもこの男のことは苦手である。


それでも、オリバの言っていること自体に間違いはない。


ほんの一瞬ではあったが、蓮も確かに経験値を獲得できたのだ。


そのため、ひとまず首を縦に振っておく。


「では、RENさんとポロンさんの同意も取れましたので、ここからはオクさんの条件とすり合わせながら、賭博場としての内容を煮詰めていければと思うのですが、どうでしょうか?」


(あー……二人の名前も覚えたんだな……)


最初に話し合った時には、名前を聞こうともしなかったオリバが、今では自然に二人の名前を呼んでいる。


どうやら蓮が召喚士サロンへ行っている間に、ある程度のやり取りをしていたらしい。


「ちなみに、経験値はなんぼほど獲得できたんや?」


オクがポロンへと尋ねる。


ランクⅢのLvMAXであるオクは、今回の経験値分配から除外されている。


そのため、自分ではどれほどの経験値が獲得できたのか確認できない。


「えーっと……確か150くらいかなぁ~?」


(あっ……ポロンさんはオクさんのスキルを使わなかったんだろうな……)


先ほど蓮の経験値を無慈悲にも0にした【天使の右手or悪魔の左手】。


どうやらポロンは発動させなかったらしい。


「えっ……確かランクⅠのスライムやったよな? それが一人当たり150くらいって、そこそこ多くないん?」


「そうだねぇ~。私もちょっとびっくりしたよぉ~」


二人の会話を聞きながら、蓮も先ほどの表示を思い出す。


自分が獲得した経験値は55EXP。


ポロンが150EXPだったのなら、かなり大きな差がある。


「ん? そういやRENちゃんは、なんぼ入ったん?」


「あっ、俺は55でした」


「55?」


「はい。まあ……0になりましたけど」


「…………」


一瞬、オクの動きが止まる。


「あ~……それはほんまにすまんかったって」


「いや、もういいですよ……」


蓮としても、経験値を稼ぐことが今回の目的だったわけではない。


ロアとゴブ太には経験値が入っていたし、オリバの話が本当だと確認できただけでも十分である。


すると、二人の会話を聞いていたオリバが口を開いた。


「RENさんの場合は、少し計算が違いますからね」


「計算?」


「はい。今回、私のスライムを倒したことで得られた経験値は300EXPです」


オリバが説明を続ける。


「ただし、オクさんはランクⅢのLvMAXですので経験値の分配対象にはなりません。ですから、まずはRENさんとポロンさんの二人で分配され、それぞれ150EXPとなります」


「なるほど……」


そこまでは蓮にも分かる。


だが、それなら自分も150EXPを獲得していなければおかしい。


「でも、俺に入ったのは55EXPでしたよ?」


「RENさんは人間ですから、まず種族特性による経験値10%のボーナスが入ります。150EXPに10%が加算されて165EXPですね」


「増えてるじゃないですか」


それなのに、なぜ55EXPになったのか。


蓮が首を傾げると、オリバの視線が蓮の足元へ向いた。


その先には、ロアとゴブ太がいる。


「あっ……」


「そういうことです。召喚モンスターを連れている場合、召喚士が獲得する経験値は召喚モンスターにも分配されます」


165EXP。


それを蓮、ロア、ゴブ太の三体で分ける。


「165を三体で分けて……55」


「はい。ですからRENさんが55EXP、ロアとゴブ太もそれぞれ55EXPを獲得したということですね」


「なるほど……」


そこで蓮は、先ほどゴブ太のレベルが上がった理由にも納得した。


そして同時に――。


(……やっぱり俺の55EXPだけ消えたのか)


改めて突きつけられた事実に、蓮は少しだけ悲しくなった。


「でも、多いといっても獲得経験値300ですよね? それだと出場する人を探すにしても、そこまで強みにはならないんじゃないですか?」


「ん~。確かにRENちゃんの言うことももっともやけどな。それについては、あんまり心配してないかな」


(えっ……RENちゃん?)


いつの間に呼び方が変わったのだろう。


「そうだねぇ~。相手の人も経験値増加装備とか付けると思うからねぇ~」


「経験値増加装備ですか?」


オクに呼び方のことを聞き返そうとした瞬間、ポロンの言葉が割って入る。


結局、蓮の意思とは関係なく会話はそのまま先へと進んでいった。


「そうだよぉ~。装備品の中には、獲得経験値を増加させる効果を持ったものもあるからねぇ~」


「へぇ……」


そんな装備まであるらしい。


すると、今度はオリバがその説明を引き継いだ。


「今回の話に興味を持つのは、主にランクの高いPLAYERになるでしょうからね。そういった方なら経験値増加装備を自分で用意することもできるでしょう」


「それだと、どのくらいの経験値になったりするんですか?」


「そうですね……条件次第なので一概には言えませんが」


オリバは少し考えてから答える。


「経験値増加装備を重ねたうえで、高ランクの召喚モンスターや複数の召喚モンスターを一人で相手にできるのであれば……獲得経験値にゼロを一つ増やすくらいは、それほど難しくありませんよ」


「えっ……? 本当ですか? そんなになるの……」


300EXP。


そこにゼロが一つ増えるのなら、3000EXP。


今回とは話が大きく変わってくる。


「はい。それと、経験値を増やせるのは倒す側だけではありません」


「え?」


「召喚モンスターの方も装備をしていれば、その分、倒したPLAYERが獲得できる経験値は増えます」


「召喚モンスターの装備でも……?」


「はい」


オリバはいつもの柔らかな笑みを浮かべたまま頷いた。


「ですから、先ほどの300EXPだけを基準に考える必要はありませんよ」


オリバの説明に、蓮はひとまず納得する。


確かに、経験値を稼ぐ場所として考えれば十分に魅力はありそうだ。


それなのに――。


(……なんだろう)


何かが、しっくりこない。


オリバたちの説明には納得できる。


できるのだが……蓮の中には、どうにも拭いきれない引っかかりが残っていた。

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