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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生
第1章【砂に黄金、泥に蓮】

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第54話-足元から鳥が立つ

オリバとの戦闘が開始された直後、蓮は前方へと視線を移す。


すると、そこで戦闘の準備をしていたポロンの様子がおかしいことに気づいた。


前傾姿勢で構えるポロン。


その両手には、自身の身の丈以上もある巨大な大剣が握られている。


しかも、その大剣は激しい青白い炎を纏っていた。


「あれ……なんだ……?」


オリバは決闘前、自分たちの相手になるのはランクⅠのスライムだと言っていた。


そのため蓮は、正直なところ、それほど強い相手ではないと踏んでいた。


それだけに、今のポロンの状態が明らかに異常に見える。


最初の行動順はオリバだった。


しかし、オリバは【防御】を選択。


これは彼なりの「戦闘には参加しない」という意思表示なのだろうと蓮は考える。


「私がやるからねーーーー!!!!」


「えっ?」


続いての行動順はオクだったが、オリバが防御状態に入るや否や、前方からポロンの大声が響いてきた。


オクはポロンをちらりと見たあと、その言葉の意味を理解したのだろう。


オリバと同じく【防御】を選択する。


そして、次の行動順――。


ポロンの番。


先ほどまでは大剣だけに見えていた青白い炎が、いつの間にかポロンの全身を覆っている。


「ちょっと……あれは何……?」


「ア゙ア゙ア゙ーーーー! 明のバカヤロー!!!!」


(えっ……明って言った?)


もはや奇声ともいえるほどの大声を上げながら、ポロンがランクⅠのスライムへと突っ込んでいく。


その姿を見た蓮は、思いっきり引いてしまった。


直後――。


凄まじい勢いで間合いを詰めたポロンの大剣が振り下ろされる。


次の瞬間、オリバのスライムは一刀両断にされていた。


「ははっ……では、私の敗北ということで」


その光景を見たオリバが笑いながら敗北を選択したことで、決闘はあっさりと終了する。


だが――。


蓮の混乱は、これだけでは終わらなかった。


━━━━━━━━━━━━━


【スライムを倒しました】


獲得経験値:55EXP


━━━━━━━━━━━━━


「おっ……」


本当に経験値が入った。


つまり、オリバが話していた方法で経験値を獲得できること自体は、これで確認できたことになる。


その直後だった。


「しまったぁ~! 忘れとったってーーー!」


「えっ?」


今度はオクが突然叫び出した。


もちろん、蓮にはオクが何を叫んでいるのか全く分からない。


訳が分からないまま画面を見ていると、新たな表示が現れる。


━━━━━━━━━━━━━


オクトパシー美恵のスキル


【天使の右手or悪魔の左手】


を発動させますか?


【YES NO】


━━━━━━━━━━━━━


「……なんだこれ?」


全く意味が分からない。


分からないので――。


蓮は何も考えずに【YES】を選択した。


「あっ! RENちゃん、それ――!」


オクが何かを言いかけた、その直後。


画面が左右に二分割される。


何が何だかわからなさ過ぎて自分が《ちゃん》付けで呼ばれていたなんて蓮はこの時、全く気付かない。


左には――【-100%】


右には――【+100%】


そして、その二つが交互に点滅を始めた。


(……まるでルーレットだな)


そこまで考えたところで、蓮はふと思い出す。


「あっ……そういえば、オクさんって【ギャンブラー】だっけ……」


ようやく事態を理解した。


「えっ……ってことは……-100%って、どういうこと?」


そして、理解した瞬間――。


先ほどのオクの叫びの意味も理解した。


「ちょっ、これ――」


しかし、もう遅い。


無情にもルーレットは回り始めていた。


左右を行き来する点滅は次第に加速していく。


そして、しばらくすると今度は徐々に減速していき――。


最後の点滅が、左側で止まった。


━━━━━━━━━━━━━


【-100%】


━━━━━━━━━━━━━


「…………え?」


続いて、先ほど獲得した経験値の表示が切り替わる。


━━━━━━━━━━━━━


獲得経験値:55EXP


    ↓


獲得経験値:0EXP


━━━━━━━━━━━━━


「…………」


蓮は、しばらくその数字を見つめ続けていた。


その直後――。


━━━━━━━━━━━━━


【ゴブ太のレベルが上がりました】


━━━━━━━━━━━━━


「……ん?」


その表示を見て、蓮はふと我に返る。


(マジか……0になったの、俺だけか……)


どうやら【天使の右手or悪魔の左手】の影響を受けたのは、蓮が獲得した経験値だけだったらしい。


一方、ポロンも経験値が入ったことを確認したようで、少し驚いたような顔をしている。


「あ~……REN君、ごめんなぁ~。スキル、オフにするの忘れとったわ」


思わず恨めしそうな視線を向ける蓮に、さすがのオクもバツが悪そうにしていた。


「いや……まあ、いいですよ」


(でもまあ……とりあえず経験値が入ることは分かったからな)


今回の戦闘で重要なのは、経験値そのものではない。


オリバの召喚モンスターを倒すことで、本当に経験値を獲得できるのか。


その確認が目的だったのだ。


そう自分に言い聞かせ、蓮はオクに気にしないよう伝えた。

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