第53話-蓮、決闘を申し込まれる
外観は、野球場を思わせるほど立派な建物。
それが、これから闘技場になる予定の施設だった。
中はどうなっているのかと思い足を踏み入れてみれば、内部も外観に見劣りしないほど立派な造りになっている。
自動ドアを抜けた先には、十人ほどが横並びでも歩けそうな広い通路。
正面には、売店を思わせる小さいながらも整ったスペース。
二階へと続く階段を上がれば控室があり、三階は観客席へと続いている。
オクの話では、これまで賭博場に呼び込めた客は二十人にも満たなかったはずだ。
だが、この施設なら、その百倍以上を一度に収容できるのは明らかだった。
「オクさん、これ……立派すぎないですか?」
「まー、ちいと立派すぎる気もするけどなぁ。今から金をかけずに闘技場へ変更できそうな施設っちゅうたら、こんくらいしか見当たらんくてなぁ……」
恐る恐る質問する蓮に対して、オクはあっけらかんと答える。
「RENさん、大丈夫だよぉ~。ここって前にクランにいた人が建てた施設で、もうずっと誰も使ってなかったからねぇ~。気兼ねなく使ってね~」
「はぁ……そう言ってもらえるなら……」
ポロンの軽い調子の言葉が、今の蓮には気休めにしか感じられない。
それほどまでに大きく、立派な施設だった。
だが同時に、蓮の中には一つの疑問が浮かんでいた。
(もしかして、俺が加入する前って、かなり大きなクランだったのか……?)
言われてみれば、思い当たるところはある。
(そういえば、ここ以外にも使ってない施設って結構あるよな……)
それなのに――。
(クランメンバーも、俺以外に三人しかいないし……)
これだけの施設を所有しているクランに、現在いるメンバーは蓮を含めてたった四人。
どう考えても釣り合っていない。
何か理由があるのだろう。
だが、それが何なのかを聞くのは、なんとなくこの場ではやめておいた方がいいような気がした。
「では、一通り施設の見学もできたところですので、次は実際に闘技スペースとして活用できそうな場所への案内をお願いします」
「…………」
(……この人、気にならないのかな)
色々と考えがそれていく蓮をよそに、オリバは何食わぬ顔で本題へと話を戻している。
蓮はこの時、そんな彼の心の強さを少しだけ羨ましく思っていた。
闘技スペースへ移動すると、オリバは蓮たちから少し離れた場所に立った。
「まずは、前回の話し合いで確認した内容からですね。確かポロンさんは、ランクⅢのレベル上げがまだ終わっていないんですよね?」
「は~い。終わってませ~ん」
ポロンから返事を聞くと、オリバは一体の召喚モンスターを呼び出した。
現れたのは、見覚えのある姿をした小さなモンスター。
「この子はランクⅠの召喚モンスター、【スライム】になります」
「スライム……」
「まずはこの子をポロンさんに倒してもらって、実際に経験値が入るかどうかを確認したいと思います」
「分かりましたよぉ~。じゃあ、装備整えてパーティ組むねぇ~」
ポロンの言葉の直後、蓮の前にパーティへの招待が表示された。
「RENさん、YESを押す前に装備揃えてねぇ~」
「あっ、そうだった」
蓮は先ほど召喚士サロンでステータスを確認する際、分かりやすいように装備を全て外していたことを思い出す。
慌てて装備を元に戻してから、パーティへの参加を選択した。
これで、蓮、ポロン、オクの三人が同じパーティとなる。
「準備はいいですね。では、今度は私からポロンさんに【決闘】を申し込みますので、それを受け入れてください」
「決闘?」
初めて聞く言葉に、蓮が反応する。
「はい。受け入れると、私対三人での戦闘になります」
オリバはそう言うと、自分の隣にいるスライムへと視線を向けた。
「皆さんは私ではなく、このスライムを倒してください」
「スライムだけでいいんですか?」
「はい。スライムが倒されたら、私が敗北を宣言します。それで戦闘は終了です」
そこまで説明すると、オリバはポロンと蓮へ交互に視線を向ける。
「戦闘終了後、ポロンさんとRENさんは経験値が増えているか確認してください。これで実際に餌場として利用できるかどうかを確認できます」
「ポロンちゃん、結果教えてな」
「は~い。おっけーで~す」
次々と進んでいくオリバの説明に、蓮の理解は若干遅れ気味だった。
一方、ポロンとオクの二人は問題なくついていっているようだ。
召喚モンスター。
パーティ。
そして今度は【決闘】。
一気に初めての出来事がなだれ込んできた蓮は、どうしていいのか分からず、隣にいるオクをちらりと見る。
(……これでいいのか?)
するとオクは、何も言わず指で「OK」のジェスチャーを返してきた。
(あ、いいんだ)
どうやら、このまま進めて問題ないらしい。
蓮が少しだけ安心した、その直後――。
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【決闘】
VS オリバ
スタート!
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視界に大きく文字が表示され、戦闘画面へと切り替わった。




