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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生
第1章【砂に黄金、泥に蓮】

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第45話-蓮、召喚士の規矩準縄を知る

「ごめんくださーい」


3階に上がり、通路の先に見えたそれなりに立派な扉を前にした蓮は、恐る恐るよその家を訪ねるような様子で扉を開けた。


しかし、蓮の訪問に反応を示す者はいない。


パッと見た感じ、広さは1階や2階と同じくらいだろうか。


PLAYERらしき者は数人ほど。


そして部屋の反対側には、簡素なカウンターらしきものが数か所見受けられる。


「へー……ここがサロンか……あれっ?」


『REN999様、お久しぶりでございます』


一瞬、視界全体がわずかに薄暗くなった後、聞き覚えのある声が流れてきた。


「この声って、確か……ニールだっけ?」


『はい。REN999様、ニールでございます。この度はランクⅡへの昇格、誠におめでとうございます』


聞き覚えのある声に、蓮は少し安心する。


「ありがとう。でも……いきなりどうしたの?」


『はい。この度のランク昇格に伴い、REN999様は【召喚士】となりました。それに伴いサロンの利用資格を満たしましたので、サロンの利用方法についてニールがご説明させていただきます』


(良かったーーーーー!!!!)


突然のニールの出現。


ゲームを始めたばかりの頃にもニールから説明を受け、おぼろげながらもスキルについて理解できた経験があっただけに、蓮の心に一気に光が差したような気分になった。


『まずはREN999様。今回【召喚士】になられるまでに、モンスターの心からモンスターを育成されたかと思いますが、お間違いないでしょうか?』


「はい。ロアと名付けたフリーウルフがいます」


決して頼りになる存在とは言えなかったが、これまで蓮なりに大切にしてきた相棒の存在を即座に思い浮かべる。


『はい。では、そのまま一番左端にあるカウンターに座っている男性に話しかけてください』


蓮はニールの指示通り、左端にあるカウンターへ移動して男に話しかけた。


「はい、いらっしゃい。ここでは召喚対象の登録と削除が行えますよ」


「召喚対象の登録?」


『【召喚士】というのは、自身の【召喚】というスキルを使い、人やモンスターなど様々な対象を呼び寄せる能力を持つ職業です。ここでは、その対象となる人やモンスター、装備品などの登録、もしくは削除が可能となっております』


ここに来る前、蓮は【召喚】を使用しようとして何もできなかったことを思い出す。


そして、その理由が召喚対象の登録を行っていなかったからなのだと察した。


「それなら、登録をお願いしたいんですが……」


「はい、分かりました。現段階でREN999様が召喚対象として登録できるものはこちらになります」


男の言葉とともに、蓮の前に一覧が表示された。


━━━━━━━━━━━━━


【フリーウルフの心:ロア】


【鞭】


【守りの盾】


【派手な帽子】


【見習いローブ】


【静歩のサンダル】


【薄明りのペンダント】


━━━━━━━━━━━━━


「えっ……登録できるのって、モンスターだけじゃないの?」


これまでの話から、蓮は召喚士とはモンスターを呼び寄せて戦わせる存在だと理解していた。


それだけに、登録できるのもモンスターだけだと思っていたのだが、目の前には自分が使っていた装備品まで並んでいる。


『REN999様。召喚対象として登録できるものはモンスターだけではございません。武器や防具など、様々なものを登録することが可能です』


「武器まで召喚してどうするんだ?」


『登録した装備品は、召喚モンスターとの【配合】に使用することが可能です』


「配合?」


聞き慣れない単語に、蓮が首を傾げる。


『はい。登録済みのモンスターと装備品を【配合】することで、召喚モンスターにその装備品を装備させることが可能となります。また、組み合わせによっては別のモンスターへと変化する場合もございます』


「別のモンスター?」


『例えば、登録済みの【ゴブリン】に登録済みの【鉄の斧】を配合した場合、【ゴブリンウォーリアー】へと変化いたします』


「ゴブリンウォーリアー!?」


聞き覚えどころか、忘れるはずもない名前だった。


ゴブリンの巣で初めて遭遇し、ロアを後方から攻撃してきたあのモンスター。


まさか召喚士なら、自分で作り出すことができるとは思ってもいなかった。


『ただし、召喚モンスターが装備できる装備品の数は、そのモンスターのランクと同数までとなります。また、モンスター自身のランクを超える装備品を装備することはできません』


「えっと……つまり?」


『ランクⅠのモンスターであれば、装備品は一つまで。装備できるものもランクⅠまでとなります』


「ああ、なるほど」


『また、一度【配合】した装備品を外す場合、通常の装備変更で取り外すことはできません。サロンで【分解】を行う必要がございます』


「装備を外すだけでも?」


『はい。【配合】によってモンスターと装備品が一つの召喚対象として構成されるため、元の状態へ戻すには【分解】が必要となります』


「うわぁ……ちょっと面倒くさいな」


そこまで聞いて、蓮は以前モルスから聞いた言葉を思い出した。


《召喚士の方は、なんかよく分かんねぇ方法でやるんじゃなかったかな……かなり厳しい条件があったはずだぞ》


(モルスが言ってたのって……こういうことか)


一つ一つ聞けば理解できないほど難しいわけではない。


だが、モンスターを召喚して戦わせるだけの職業だと思っていた蓮からすれば、想像していたよりも随分とややこしい。


ましてや召喚士でもないであろうモルスにとっては、よく分かんねぇ方法という判断になるのも納得できる。


『そしてもう一点、召喚対象を召喚している間は、その対象のランクに応じて最大SPに制限がかかります』


「最大SPに?」


『はい。ランクⅠの召喚対象であれば20SP分、ランクⅡであれば40SP分となります』


「じゃあ、俺がランクⅠのゴブリンを召喚したら……」


『20SP分の制限がかかりますので、現在のREN999様であれば最大SP120から、使用可能なSPの上限が100となります』


「なるほど……」


『また、装備品も召喚対象として扱われます。そのため、先ほどの例に挙げたランクⅠの【ゴブリン】とランクⅠの【鉄の斧】を配合した【ゴブリンウォーリアー】を召喚した場合、それぞれに20SP分の制限が発生いたします』


「20と20だから……40?」


『はい。その場合、【ゴブリンウォーリアー】を召喚している間、REN999様が使用できるSPの上限は80となります』


「結構減るな……」


召喚するだけなら何体でも呼び出せるのかと思っていたが、どうやらそう簡単な話ではないらしい。


強い装備を持たせれば、その分だけ召喚に必要なSPの枠も大きくなる。


(登録するものも、装備させるものも、ちゃんと考えないとダメってことか……)


召喚士という職業の面倒臭さが、少しずつ見えてきた気がする。


『なお、現在のREN999様はランクⅡですので、召喚対象を20枠まで登録することが可能です』


「20枠……」


モンスターだけでなく装備品まで登録するとなれば、20枠という数字も決して多いとは言えない。


『ですが、まずは基本的な召喚方法を覚えていただきます。今回は【フリーウルフの心:ロア】を選択してくださいませ』


「あっ、はい。じゃあ、ロアで」


「かしこまりました。【フリーウルフの心:ロア】でお間違いないですね?」


━━━━━━━━━━━━━


フリーウルフの心


【ロア】を選択しますか?


【YES NO】


━━━━━━━━━━━━━


蓮が【YES】を選んだ次の瞬間、隣にいたロアの身体が光に包まれていく。


「えっ? ロア!?」


「ワウ?」


ロア自身も何が起きているのか分かっていないのか、不思議そうに蓮を見上げる。


やがてその身体は丸い球状の光となり、ゆっくりと宙へ浮かび上がった。


そして、その光は蓮の身体へと吸い込まれていく。


━━━━━━━━━━━━━


【ロア】が召喚モンスターとして登録されました。


━━━━━━━━━━━━━


「おお!! マジか!!」


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