第43話-万事塞翁が蓮
オリバとの話し合いは、大根、オク、ポロンの三人が彼の条件を承諾したことで、ほどなく終了となった。
オクによると、クランには闘技場にうってつけの施設があるらしく、あとは運営に申請するだけだという。
許可も一週間以内には下りるらしい。
そのため、具体的な条件を詰めていくのは、申請が認められてからということになった。
そして、その間に蓮がやるべきことが二つある。
一つは、ランクアップを行い【召喚士】を選択すること。
もう一つは――できる限りGを稼ぐこと。
この二つが、オリバから蓮に出された課題だった。
そして話し合いの最後、オリバは蓮にこんなことを言った。
「RENさん。恐らく、私の話の内容には納得できないところがたくさんあると思います」
「まあ……はい」
「ですが、このゲームで大切なのは、道理を探して進むことではありません」
「……?」
「やりたいことが無理であったとしても、それを通すことです」
オリバはいつもの笑顔のまま続ける。
「そして――通した事柄を、皆さん『道理』と呼びます」
「…………」
(いや、横暴すぎるだろ……)
蓮にはそうとしか思えなかった。
無理なものでも、自分がやりたいなら無理やり通す。
そして通ってしまえば、それが道理になる。
あまりにも強引な理屈である。
さすがにこれは、自分の感覚の方が普通だろう。
そう思って周囲を見回したのだが――。
誰も否定する様子がない。
(えっ……?)
それどころか、大根が蓮のそばまでやって来た。
「REN君」
「はい?」
「彼の言っていることは正しい」
「…………」
蓮は非常にショックだった。
(大根さんまで……?)
どうやら、このゲームについて自分が理解できていないことは、まだまだ山ほどあるらしい。
その後、オリバとの話し合いを終えた蓮たちは《秘密の花園》へと戻った。
翌日には仕事もある。
蓮は大根、オク、ポロンの三人に何度も礼を言い、その日はログアウトすることにした。
そして翌日――。
仕事を終えた蓮は、再びアセット・フロンティア・オンラインへログインしていた。
現在いるのはギルド。
目的はもちろん決まっている。
長々と悩み、様々な人から話を聞いた。
その結果、ようやく蓮も決断したのだ。
ランクⅠからランクⅡへ。
そして――。
【召喚士】になるために。
「いらっしゃいませ。REN999様でございますね。お待ちしておりました」
ギルドへ行くと、受付には先日対応してくれた受付嬢がいた。
「どうも。先日はありがとうございました。職業が決まりましたので、よろしくお願いします」
「かしこまりました。それでは手続きを続けさせていただきますので、前回同様、別室の方へどうぞ」
別室へ通される流れも前回と同じだった。
椅子に座り、蓮は【召喚士】になりたいと告げる。
「かしこまりました。【召喚士】でお間違いございませんね?」
━━━━━━━━━━━━━
【召喚士】を選択しますか?
【YES NO】
━━━━━━━━━━━━━
前回、ランクアップ後に職業を変更する場合にはデメリットがあると説明されたからだろうか。
最後の確認は慎重だった。
だが、蓮に迷いはない。
これまで自分なりに色々なPLAYERから話を聞いた。
モルス。
大根、オク、ポロン。
そして、現役の召喚士であるオリバ。
その話を聞いたうえで、自分なりに考えて決めたことだ。
もはや後悔なんてものは一切ない。
蓮は迷わず【YES】を選んだ。
すると、少しの間だけ華やかな音楽が流れる。
そして――。
「おめでとうございます。REN999様は、ただいまランクⅡへ昇格いたしました。今後は【召喚士】として活動することができます」
「…………」
(えっ……これだけか?)
散々悩んだ。
色々な人から話を聞いた。
その結果、三千万Gなんて話にまで発展した。
それなのに――。
【YES】を一回押しただけで、蓮はあっさりとランクⅡ【召喚士】になってしまった。
(俺があんだけ悩んだのは何だったんだ……)




