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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生
第1章【砂に黄金、泥に蓮】

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第39話-忠言は耳に逆らう

「貴方がREN999さんですね。よろしくお願いします」


「はい。どうも。RENでいいです。こちらこそよろしくお願いします」


オリバと名乗ったエルフは数歩ほど蓮の方へ歩み寄ると、改めて挨拶をする。


「それでは早速お話といきたいのですが……その前に、申し訳ありません。よろしいでしょうか?」


そう言って、オリバが右手を前に差し出した。


「あー、はい。それはウチの役目やから」


蓮には何のことか分からなかったが、他の者には理解できたようで、オクがオリバの右手の上に手をかざす。


シャリーン――。


小さな音が鳴った。


その音を聞いて、蓮も何が行われたのか理解する。


(今ので500,000G……?)


オリバが自分の画面で500,000Gを確認しているのを見ていると、あまりにもあっさりとしたやり取りに、蓮にはなんだか現実味が感じられなかった。


「お支払いありがとうございます。それでは早速、お話させていただきます」


「「「「……」」」」


四人が無言で頷く。


「では、モルスからざっくりと聞いた話を踏まえますと……闘技場でしたっけ?」


オリバは一度、全員の顔を見回した。


「皆さんの計画通りの施設を作ることはできますよ。多少苦労するかもしれませんが、運営からの審査も普通に通ると思います」


「やった! ほなら今――」


「ちょっと待ってください。まだ話の途中です」


可能だという言葉がよほど嬉しかったのか、喜びをあらわにするオク。


しかし、オリバはそんなオクを遮るように話を続ける。


「施設を作ること自体はできます。ですが――」


そこで一度言葉を切る。


「皆さん、その闘技場を作っても、お客さんは誰も来ないですよ」


「……なんでや?」


施設は作れる。


だが、客は来ない。


そう断言するオリバに、オクが怪訝な表情で聞き返す。


「やっぱり宣伝の問題ですか?」


ポロンが尋ねる。


「それもあるでしょうが、それはもっと先の話です」


オリバはポロンの考えも否定する。


蓮が何気なくモルスを見ると、眉間にしわを寄せ、目をつぶっていた。


「だって――」


オリバが蓮を見る。


「RENさんが召喚士になったとしても、ランクⅡですよね?」


「はい……そうなりますね」


「その場合、扱うことになるのも基本的にはランクⅡ程度のモンスターです」


そして、オリバは当たり前のことを確認するかのように言った。


「ランクⅡのモンスター同士の戦いって――誰が見たいですか?」


「いや、賭けられれば強さなんて関係ないやろ?」


「それであれば、最初から賭け金を跳ね上げますか?」


「それは……」


「それが無理なら、それこそ大量に広告を打って人を集める形になります。ですが、そこまでしなければ人が来ないのであれば、そもそも闘技場に固執する必要がありません」


オリバは淡々と話を続ける。


「もっと言えば、そのためだけにRENさんが召喚士や育成士になる必要もないです」


(この人って……)


言っていることは分かる。


分かるのだが、先ほどからオクの計画を容赦なく切り捨てている。


「いや……」


蓮は少し迷ってから、口を開いた。


「オクさん、すいません」


「ん?」


「あの、オリバさんのその言い方だと……俺が召喚士になること自体、やめておけって聞こえるんですけど……」


「はい。そうですよ」


「…………」


あまりにも早い即答だった。


「私が召喚士だから、びっくりしましたか?」


「まあ……はい」


「少なくともモルスから聞いた話だけで判断するなら、今のRENさんがランクⅡで召喚士になるのは、あまりおすすめしませんね」


「その理由、聞いてもいいですか?」


500,000Gまで支払い、わざわざ現役の召喚士から話を聞いている。


それなのに、肝心の召喚士本人から「おすすめしない」と言われたのだ。


ここまでのやり取りが全て無駄だったような気がして、蓮の声には若干の感情が混じっていた。


「一番の理由は、RENさん自身に単体で戦うためのスキルがないからです」


「単体で戦うスキル……ですか?」


その言葉を聞いて、蓮は昨日モルスから言われたことを思い出す。


『両方、モンスターを従える準戦闘職とでも言えばいいのか? 本人自体はパッとしねぇけど』


「はい。それと、これは召喚士になってしばらく経たないと実感しにくいことなんですが――」


オリバは少しだけ間を置いた。


「召喚士という職業は、一度本格的にやり始めると、絶対に他の職業へ移れなくなってしまうんです」


「……移れなくなる?」


蓮の表情が変わる。


職業変更そのものができなくなる。


そう聞こえる言い方だった。


「その理由を聞いてもいいですか?」


「そこに関しては、自分の手の内を晒すだけですからね。申し訳ありませんが、遠慮させていただきます」


「でも……」


「私の言うことが嘘だと思うのであれば、実際に召喚士になってから確かめてみればいいですよ」


「…………」


そこまで言われると、逆に気になる。


だが、確認するために召喚士になるというのも本末転倒だ。


「俺も詳しくは分かんねぇけど、こいつは嘘を言うような奴じゃねぇぞ」


悩む蓮に、モルスが口を挟む。


(少なくとも、悪い人ではないんだろうな……)


ただ――。


蓮にとっては、なんとなく好きになれない人種である。


言い方が妙に淡々としているというか、こちらが聞きたくないことまで平然と言ってくるというか。


それでも、オリバの言っていること自体は真実なのだろう。


蓮にも、なんとなくそれは分かった。


「失礼しました」


オリバが軽く頭を下げる。


「今回の相談はRENさん個人の職業選択ではなく、召喚士を利用した施設運営についてでしたね。話を戻しましょう」


「いえ。アドバイス、ありがとうございます」


蓮がそう答えると、オリバは初めて少しだけ笑顔を見せた。


「もし仮に、私が闘技場を賭けの対象として経営するのであれば――」


一度、言葉を切る。


「餌場を利用しますかね?」


「「「「「餌場???」」」」」


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