第38話-待ち人来たり
蓮がクランメンバーに相談してから一日が経った夜。
オクの話がどこまで現実的なのかは分からない。
だが、本人なりに本気なのだけは伝わってきた。
育成士と召喚士。
どちらを選ぶにしても、もう少し詳しい情報が欲しい。
そう考えた蓮は、クランでの話し合いを終えた後、モルスに連絡を取ることにした。
何気なく結んだフレンド登録が、早速役に立ったのである。
その日のうちにモルスから返信があり、クランであったことを説明すると、翌日の夜に知り合いの召喚士を一人紹介してもらえることになった。
ただし――条件付きで。
その条件というのが、相談に参加する人数、一人につき100,000G。
というものだった。
「えっ……話を聞くだけですよね?」
思わず聞き返した蓮だったが、モルスから返ってきた答えは変わらなかった。
召喚士側から提示された条件であり、その場で話を聞く人間一人につき100,000G。
さらに、紹介者であるモルス自身も同席するため、しっかり一人として数えられるらしい。
(いやいやいや……高すぎるだろ……)
蓮自身は、話を聞くだけで100,000Gというのは法外な金額に思えた。
何しろ、ゴブリンの巣を殲滅して得た報酬が100,000G。
そこからモルスとの契約分を引かれ、実際に蓮が受け取ったのは90,000Gである。
命懸け――ゲームなので実際に命を懸けているわけではないが、それでも苦労してゴブリンの巣を攻略して手に入れた金額よりも高い。
それを、話を聞くだけで要求されるのだ。
当然、蓮は断るものだと思っていた。
だが――。
「まあ……召喚士から詳しい話を聞けるなら、そのくらいは仕方ないんじゃないかな?」
「そうですね。条件次第ではありますけど、専門的な情報なら十分あり得る金額だと思いますよ」
「せやな」
クランメンバーに話してみると、返ってきた反応は蓮の予想とはまるで違った。
(えっ……この人たち、金銭感覚どうなってんの……?)
つい昨日まで10,000,000Gという金額を現実味のない数字だと思っていた蓮と、すでにその金額が飛び交う世界で活動している三人。
どうやら、その間には蓮が思っている以上に大きな金銭感覚の差があるらしい。
その後、改めて話し合った結果、蓮、ポロン、大根、オクのクランメンバー四人に加え、紹介者であるモルスも同席することになった。
合計五人。
つまり必要になる相談料は――
500,000G。
「ご、500,000G……」
金額を改めて口にした蓮の頬が引きつる。
そんな蓮を見て、オクが何でもないことのように口を開いた。
「そこはウチが出すで」
「えっ?」
「元々、REN君に召喚士になってほしい言うてんのはウチやからな。そんくらいはウチが持つわ」
「いや、でも500,000Gですよ?」
「せやから500,000Gやろ?」
「…………」
まるで500Gの話でもしているかのようなオクの態度に、蓮は何も言えなくなった。
こうして翌日の夜。
500,000Gという、蓮にとっては未だ現実味のない大金を相談料として支払い、現役の召喚士から直接話を聞くことになったのである。
クラン《秘密の花園》の入り口にある喫茶店で待つ四人。
「そろそろ時間かな……」
蓮が時刻を確認した、その時だった。
ピコンッ――。
不意に音が鳴る。
何だろうとコマンド画面を開いてみると、そこには【チャット招待のお知らせ】と表示されていた。
四人は顔を見合わせると、揃って頷く。
蓮が参加を選択した瞬間、周囲の景色が切り替わった。
そこは以前、ポロンと初めて話をした時にも使ったチャット専用の空間だった。
そして、その中にはすでにモルスがいる。
その隣には、もう一人。
長い耳を持つ、蓮が初めて見る男性PLAYERが立っていた。
(エルフ……かな?)
初めて見るエルフを前に、まずは挨拶かなと蓮が考えていると、続けてポロン、大根、オクも姿を見せる。
そして五人全員が揃ったところで、モルスが蓮たちを見回した。
「おう、揃ったか」
そして、隣に立つエルフの男を示す。
「紹介するぜ。こいつが昨日話した召喚士だ」
「初めまして」
エルフの男が軽く頭を下げる。
「オリバです。職業は【召喚士】です」




