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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生
第1章【砂に黄金、泥に蓮】

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第36話-蓮、霹靂を知る

時刻は日曜の夕方6時過ぎ。


モルスとの話を終えた蓮は一度ログアウトし、食事や洗濯、掃除など、現実で最低限やっておかなければならないことを済ませてからゲームを再開した。


「あっ、みんないる」


クランの画面を開くと、3人ともログインしている。


それを確認した蓮は、ゴブリンの巣を殲滅できたことを報告するため、みんなのところへ向かうことにした。


「おー、REN君。ゴブリンのイベント行ったんだって? それで、どうだったんですか?」


午前中、蓮がゴブリンの巣へ向かう際、大根はいなかった。


(ポロンさんにでも聞いたのかな?)


「はい。おかげさまで、無事クリアできました」


「おお、ホントですか。それはおめでとうございます」


普段から農民という職業を意識した装備を好む大根だからだろうか。


優しそうな見た目の大根が自分のことのように喜んでくれる姿に、蓮は妙な癒やしを覚えていた。


(なんか、良いな~)


「あー、RENさん。ゴブリンはどうだったのかな?」


「んー? なんやなんや、よう分からんけど、ええ話しとる?」


蓮と大根の間に漂うふわっとした雰囲気を感じ取ってか、そこへポロンとオクも寄ってきた。


(ちょうどいいな)


元々、クランメンバーに職業のことを相談しようと思っていた蓮は、二人にもゴブリンのイベントを無事クリアしたことを報告した。


二人から祝福を受けたところで、そのままランクⅡへの職業変更について相談を持ちかける。


「なるほど。では今の段階としては、育成士か召喚士で悩んでいるということですね」


「でも、その二つって確かに違いが分かりにくいよね……」


大根が蓮の話を整理し、ポロンも蓮の悩みどころに同意する。


「そうなんですよね……。どちらかにしようというのは決まってるんですけど、その決定打が見当たらなくて……」


「…………」


蓮が困ったような表情を浮かべる横で、オクは無言のまま蓮を厳しい目で見ていた。


だが、その様子には誰も気づいていない。


「自分の意見というか、希望を言わせてもらうなら、REN君には育成士になってもらいたいですね」


「あっ……そうなんですか? それって何かあるんですか?」


大根の意見が気になり、蓮は聞き返した。


「はい。自分の場合、【害虫駆除】というイベントが不定期であるんですけど、これがレイドイベントみたいなやつでして。大人数で害虫モンスターと戦うんです」


「レイド……」


「もし育成士が大人数での戦闘に向いてるなら、REN君の力があれば心強いかなと」


「なるほど……」


モルスから話を聞いたばかりのレイドイベント。


自分にはまだまだ先の話だと思っていたが、実は身近に対象者がいるというのなら話は別だ。


蓮も自然と興味が湧いてくる。


「大根さん。できれば、もう少し詳しく教えてもらえませんか?」


「いいですよ。【害虫駆除】というのは、育てている農作物に害虫モンスターがやってくる討伐イベントなんですけど……これがですね、物凄い数か、物凄く強いか、どちらかの敵が現れるんです」


「へぇ……」


「次は恐らく、物凄く強い方だと思うんですけど。その際にダメージノルマというものがありまして」


「ダメージノルマ?」


「はい。一定以上のダメージを与えると、報酬が段違いに良くなるんですよ。それで、その……自分の場合はランクアップにも関係してまして……」


大根は少し言いにくそうに言葉を濁した。


「なので……できるだけ有利な条件で挑めればと……はい」


「前回はダメージ届かなかったもんね~」


ポロンが横から口を挟む。


「届いてたら、経験値10,000,000か10,000,000G、どっちか選べたはずだよ」


「はあぁ~!!! 10,000,000!? 嘘でしょ!?」


あまりにも今までと桁の違う数字が飛び出し、蓮は思わず大声を上げた。


ゴブリンの巣を殲滅して得た報酬が100,000G。


その百倍である。


ポロンの言葉がよほど信じられなかったのか、蓮は大根の方を見る。


「ホントだよ~。ちなみに大根さん、それが原因で数か月ランクⅣに上がれなくて、ランクⅢで停滞してるからね」


「いや~……お恥ずかしい……」


(えっ……マジか……)


10,000,000という数字だけなら、何かの冗談だと思って一笑に付していたかもしれない。


だが、その後に続いたランクアップ失敗の話を否定しない大根の様子を見て、蓮はこれまでに知ったことを頭の中で整理する。


ポロンのランクアップ試験は、当たりを探すという名目でありながら、その当たり自体が存在しなかった。


モルスは古参プレイヤーでありながら、未だランクⅣでくすぶっている。


そして大根はランクアップに失敗し、数か月もの間ランクⅢで停滞している。


(もしかして……)


これまで自分が見てきたのは、まだこのゲームの入口に過ぎなかったのではないか。


そんな考えが、蓮の頭をよぎる。


(このゲームって……ヤバくね……)


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