第33話-契約装備
ギルドで一通りの説明を受けた蓮は、次の職業についての答えを一旦保留することにした。
何しろ、選択肢だけ提示されて肝心の詳細が分からない。
幸いにも選択するまでの期限はないとのことだったので、情報を集める時間はいくらでもある。
(どうしようかなぁ~……)
本来なら、このままクランへ向かってポロンに結果を報告するべきなのだろう。
ただ、以前【フリーウルフの心】について聞いた時、ポロンにも分からないことがあった。
そう考えると、情報収集という点ではあまり期待できないというのが蓮の本音だった。
(やっぱり、モルスかな……)
今の蓮には、モルスの店へ向かう理由が二つある。
一つは、ゴブリンの巣を攻略したことで役目を終えた【守りの盾】の契約装備解除。
そしてもう一つ。
【フリーウルフの心】について、何か知っている様子を見せていたモルスから情報を聞くためだ。
少し考えた末、蓮はクランへ戻る前にモルスの店へ立ち寄ることにした。
「おう、いらっしゃい! そろそろ来る頃だと思ってたぜ。で、何にする?」
「ん? 何にするって……?」
すっかり馴染みになったかのような軽い挨拶。
そこまではいい。
だが、その直後に投げかけられた質問は、蓮にとって少々予想外のものだった。
(そろそろ来る頃っていうのは分かるけど……何にする?)
おそらくモルスは、蓮がそろそろLv.10になってゴブリンの巣へ挑む頃だと予想していたのだろう。
そこまでは理解できる。
だとすると、余計に「何にする?」の意味が分からなかった。
「なんだよ。お前、びっくりした顔しやがって。レベル上げも終わったし、これから本番だろ? 金もあるし、いっちょ装備でも強くすっか~って感じなんじゃねぇの?」
「…………」
(この人、何言ってんだろ……)
今度は蓮の方がモルスを不思議そうに見つめる。
「えっ……いや、ゴブリンの巣ならもうクリアしましたけど……」
「あん?」
モルスの表情が変わった。
「お前、もう行ったの?」
「はい」
「なんで?」
「なんでって……」
どうにも話が噛み合わない。
「いや、レベル上げ終わって、ポーションとか補充して、それで準備万端だから行ったんですけど……」
「…………」
今度はモルスが蓮の装備を上から下まで眺める。
「じゃあ何か? お前、その装備で行ったのか?」
「はい……?」
「そりゃ苦労するだろ~……」
「へっ……?」
蓮は首を傾げた。
「いや、だって……装備って契約装備だから変更できないんですよね?」
「…………は?」
モルスが一瞬固まった。
そして、何かを察したように大きく息を吐く。
「お前……それはあくまでも盾の話じゃねぇか」
「…………」
蓮の動きが止まる。
「…………ウソ」
「ウソじゃねぇよ」
「…………」
蓮はゆっくりと自分の装備を見る。
鞭。
帽子。
ローブ。
サンダル。
ペンダント。
そして――【守りの盾】。
「えっ……じゃあ、盾以外は……?」
「普通に替えられるぞ」
「…………」
蓮の頭の中に、ゴブリンの巣での戦いが次々と蘇っていく。
ゴブリンウォーリアー。
ゴブリンメイジ。
そして、延々とゴブリンを呼び続けたターレス。
大量に消えていったポーション。
何度も何度も削られたHP。
「…………マジで?」
「マジだ」
「…………」
どうやら蓮は――。
踏まなくてもいい茨の道へ、自分から全力で踏み込んでいたらしい。
「お前、とことん要領悪いよな……」
「…………」
「まあ、それでも横にそいつがいてクリアしたってことは、今日は盾の契約解除に来たんだろ?」
「あっ……はい……」
「やってやるから、ほら。こっち来いよ」
「…………はい」
蓮は顔を真っ赤にしながらモルスのもとへ向かい、【守りの盾】の契約装備解除をしてもらうのだった。




