第32話-ご利用は計画的に
ゴブリンの巣を抜け、画面が切り替わる。
「……あれ?」
次の瞬間、蓮が立っていたのはギルドの中だった。
突然の強制移動に戸惑っていると、以前依頼を受けた時に対応してくれた受付嬢が蓮に声をかけてきた。
「REN999様、【ゴブリンの巣の殲滅】依頼達成、おめでとうございます!」
「あっ……はい。ありがとうございます……」
(報告してないのに、もう知ってるんだ……)
一瞬そんな疑問が浮かんだものの、この辺りはゲームなのだろうと蓮は割り切る。
「REN999様。それでは依頼達成について何点かお話がございますので、別室の方へどうぞ」
「あっ、はい」
受付嬢に案内され、蓮はギルド内にある別室へと通された。
促されるまま椅子に腰掛けると、向かいに座った受付嬢が話を切り出す。
「まずREN999様。今回の依頼において入手されたゴブリンの魔石を確認させてください」
「はい。これです」
蓮は言われるまま、これまで手に入れたゴブリンの魔石とターレスの魔石を差し出した。
受付嬢はそれらを一つずつ確認していく。
「はい。確かにお預かりいたしました。それでは今回の報酬ですが、ゴブリン及び名前付きゴブリンの討伐数、さらに冒険者一名の救助を含めまして、合計100,000Gとさせていただきます」
「はい。分かりました」
蓮の反応は思いのほか薄い。
100,000Gという金額については、以前モルスとポロンが言い合っていた時に、ポロッと漏れてしまった情報だからだ。
そのため蓮にとっては、特に驚くような金額ではなかった。
「それではREN999様の口座には、この後90,000Gが振り込まれますので、後ほどご確認をお願いいたします」
「はい……」
(やっぱり全額は無理なのね……)
どことなく受付嬢のテンションが高かっただけに、もしかしたら――という淡い期待もあった。
しかし、当然ながらモルスとの契約は有効らしい。
報酬の10%。
きっちり10,000Gが差し引かれている。
(まあ……あの装備がなかったら、そもそもクリアできてないだろうしな……)
そう考えれば仕方のない出費ではある。
そんなことを考えていると、受付嬢が改めて蓮へと向き直った。
「それではREN999様。ここからが本番となります」
「えっ……ここからが本番?」
蓮は思わず聞き返す。
(今のが本番じゃないの?)
100,000Gもの依頼報酬。
てっきり、この話をするために別室へ通されたのだと思っていた。
しかし、どうやら違うらしい。
「はい。この度REN999様は、【ゴブリンの巣の殲滅】を達成し、さらに現在のレベルが上限に達したことにより、ランクⅡへの昇格条件を満たされました」
「ランクⅡ……?」
その言葉を聞いて、蓮は以前の出来事を思い出す。
(そういえば、ポロンさんと会った時ってランクⅡからⅢに上がるところだったよな……)
あの時は自分にはまだ関係のない話だと思っていた。
だが、どうやら今度は自分の番らしい。
「簡単にご説明しますと、現在のランクⅠからランクⅡの職業へ進むことが可能になったということです。現在の職業系統を引き継ぐことも、別の職業を選択することも可能ですが、いかがなさいますか?」
「それって……見習いが取れるってことですか?」
「次の職業として【開拓士】を選択された場合は、そうなります」
「おお……」
「その場合、現在お持ちの【開拓士の目】は固定スキルとして引き継がれ、新たにランクⅡの職業スキルが付与されます」
「へー……なるほど」
ここに来て、ようやく蓮にも話が見えてきた。
「ちなみに、今の俺が選べる職業ってどれなんですか?」
「只今、REN999様に適性のある職業は以下の通りとなっております」
━━━━━━━━━━━━━
【開拓士】 選択可能
【盾使い】 選択可能
【育成士】 選択可能
【召喚士】 選択可能
━━━━━━━━━━━━━
「ん~~……なるほど……そういうことか……」
表示された四つの職業を、蓮は順番に眺めていく。
開拓士。
盾使い。
育成士。
そして――召喚士。
「それぞれの職業について、詳しく教えてもらえますか?」
選択肢があるのなら、当然それぞれの特徴を知ってから決めたい。
蓮としては当たり前の質問だったのだが――。
「申し訳ありません、REN999様。職業の詳細につきましては、ご自身で確かめていただく決まりとなっております」
「あっ……そうですか……」
(ホント、このゲームって肝心なところ教えてくれないよな……)
思わず心の中で愚痴をこぼす。
だが、受付嬢の説明はまだ終わっていなかった。
「なおREN999様。原則として職業の変更は、ランクアップ時に行うものとなっております」
「はい」
「ランクの途中でも職業を変更する方法はございますが、その場合、何らかの弊害を伴う可能性がございます。そのため、次の職業につきましては慎重にお決めください」
「…………」
蓮は再び目の前に表示された四つの職業へと目を向けた。
そして――。
(ノーヒントで慎重にって、意味わかんねぇよ……)




