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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生
序章【見習い開拓士】

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第31話-エピローグ

━━━━━━━━━━━━━


ターレスを倒した!


なんとREN999は【ゴブリンの心】を手に入れた。


━━━━━━━━━━━━━


 ターレスとの戦闘が終わり、画面が切り替わる。


 だが蓮は、戦いが終わった喜びに浸るよりも先に周囲を見渡していた。


 ゴブリンの巣に入ってからというもの、予想外のことがあまりにも多すぎたからだ。


 そのため、【ゴブリンの心】を手に入れたという表示についても、この時の蓮はほとんど気に留めていなかった。


「ふぅぅぅ……やっと倒した……」


 戦闘前まで広間を埋め尽くしていた無数のゴブリンの影。


 それらが綺麗さっぱり消えていることを確認して、ようやく蓮の表情にも安堵が浮かぶ。


 しかし――。


(げっ……なんだあれ……)


 その安堵も長くは続かなかった。


 ターレスがいた場所。


 そのさらに奥に、先へと続く通路がある。


「…………」


 蓮の表情が露骨に曇った。


(まだ続くのかよ……)


 ポロンからもらった回復薬は、ターレスとの戦いでほとんど使い切ってしまった。


 ポーション(中)はもうない。


 通常のポーションも、残りわずか。


 もしこの先にターレスとは別のゴブリンが待ち構えていたら、今の状態で勝てる保証はない。


(これは……一回戻った方がいいよな)


 ここまで来た以上、先へ進みたい気持ちはある。


 だが、ここで無理をして敗北する必要もない。


 一度撤退して回復薬を補充する。


 それが現実的だろう。


 蓮がそう考えた――次の瞬間だった。


「ワン!」


「ん?」


 ロアが突然、奥へと続く通路に向かって走り出した。


「あっ……ロア! ちょっと待て! お前!」


 蓮の制止など聞く様子もなく、そのままロアは通路の奥へと消えていく。


「…………」


(あー……これ、強制イベントってやつか……)


 ここまで来てしまえば、もうどうしようもない。


 だからといって、ロアを一匹で行かせるわけにもいかない。


「もう……勝手に行くなって……」


 蓮は仕方なく、ロアの後を追った。


 通路を進んだところで再び画面が切り替わる。


 そこにあったのは、小さな部屋だった。


「…………」


 蓮はまず周囲を確認する。


 だが、ゴブリンが現れる気配はない。


「ふぅ……」


 どうやら、いきなり戦闘というわけではなさそうだ。


 そう判断して一息ついた蓮は、部屋の奥へと視線を向けた。


「……えっ?」


 そこには、一人の女性がいた。


 壁際に座り込むようにして倒れ、その身体は鎖で繋がれている。


「ワン! ワン!」


 先に女性を見つけていたロアが、その場で何度も吠えていた。


(とりあえず……助けた方がいいよね)


 おそらく、ゴブリン達に囚われていたのだろう。


 蓮は女性へ近づくと、その身体を拘束している鎖を外していく。


 それからしばらくして――。


「……んっ……」


 女性がゆっくりと目を開けた。


「あっ……大丈夫ですか?」


「はっ……はい。あのっ……あ……貴方は?」


「ああ、俺は――」


「ワン!」


「…………」


 蓮が自分の名前を名乗ろうとした、その瞬間。


 ロアが精一杯の大きな鳴き声を上げた。


 まるで、自分の存在を必死にアピールしているかのように。


 女性の視線がロアへ向く。


「…………」


 そして、しばらくロアを見つめた後――。


「もしかして……この子は……」


「えっ?」


「あっ……いえ。何でもありません。私の勘違いです」


「くぅ~ん……」


「…………?」


 蓮はロアと女性を交互に見る。


 何だか妙に歯切れが悪い。


 ゴブリン達に囚われていたことが原因というわけでもなさそうだった。


 何か別のことを気にしている。


 そんなふうに蓮には感じられた。


 そして――。


「くぅ~ん……」


 ロアもまた、どこか寂しそうに女性を見つめている。


(なんだ……?)


 蓮には二人の反応の意味が分からない。


 どうしようか少し迷ったものの、まずは自分のことを話すことにした。


「俺は蓮……じゃなくて、REN999です。ゴブリンの巣の殲滅依頼を受けて、ここまで来ました」


「REN999さん……」


 女性はその名前を小さく繰り返す。


 そして、自分はアンナという名前なのだと教えてくれた。


 ゴブリン達から助け出されたこと。


 ここまで来てくれたこと。


 アンナは涙を流しながら、何度も蓮に礼を言った。


「本当に……本当に、ありがとうございました……」


「いや……無事だったなら良かったです」


「はい……」


 アンナは涙を拭う。


 そして最後に――。


 少しだけ寂しそうな表情を浮かべながら、ロアの方へと振り向いた。


「……いい相棒をお持ちですね」


「えっ?」


「この子のこと……大切にしてあげてください」


「…………」


 蓮もロアを見る。


 ロアは何も言わず、アンナを見つめていた。


 その姿を見てから、蓮は迷うことなく答えた。


「はい。大切にします」


 その瞬間――。


━━━━━━━━━━━━━


【ゴブリンの巣の殲滅】


依頼を達成しました。


━━━━━━━━━━━━━


「…………おお」


 ようやく表示された依頼達成の文字。


 何も分からないまま始めたアセット・フロンティア・オンライン。


 どうやら蓮は、ようやく最初の大きな山場を一つ乗り越えたらしい。


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