第29話-ターレス
先ほどのゴブリンウォーリアーとの戦いで、ある程度の知識を得た蓮は、ゴブリンメイジとの戦闘では実に落ち着いていた。
まずは前衛にいる三匹のゴブリンを冷静に倒し、それから攻撃対象をゴブリンメイジへと移す。
鞭による攻撃を繰り返し、四回目でゴブリンメイジAを、続く五回目の攻撃でゴブリンメイジBを倒した。
「ふーっ……倒したか」
一回あたりに受けるダメージこそ、ゴブリンウォーリアーの時より大きかった。
しかし、最大HPに関してはゴブリンウォーリアーの方が多かったためか、戦闘そのものには随分と余裕を感じていた。
とはいえ、蓮のHPはゴブリンウォーリアー戦の時と同じくらいまで減っている。
「回復しとくか……」
蓮はすぐさまポロンからもらったポーション(中)を使用して、HPの回復を図る。
ゴブリンの巣に入ってからというもの、何かと変則的な戦闘が多い。
そのため蓮は回復を待つ間も、周囲への警戒を怠らなかった。
(さて……)
先ほどの分岐は二手に分かれていた。
そのうち片方は、今しがた探索を終えたばかりである。
ということは――。
(ゴブリンの殲滅に繋がる道があるとしたら、残ってる方だよな)
蓮は先ほどの分岐まで戻ると、今度は右側の道へと足を進める。
こちらが本命。
そう考えると、自然と緊張も高まっていった。
そして、右側の通路を少し進んだところで――。
「っ!」
突然、画面が切り替わる。
一瞬、また戦闘が始まったのかと思った蓮だったが、どうやら違うらしい。
しかし、切り替わった先の光景を見た瞬間。
蓮の緊張は、さらに高まっていった。
そこは、これまでにも見てきたものと大して変わらない広間だった。
違うのは――そこに待ち構えている存在。
広間の前方には、無数の黒い影。
そして、そのさらに奥。
他のゴブリンよりも二回りほど大きな影が、ふんぞり返るようにして待ち構えていた。
(あー……明らかにボスだな……)
蓮は何の疑いもなく、一番奥にいる巨大な影へと目を向ける。
「あー……でも、ゴブリンの巣の殲滅とはよく言ったものだなぁ……」
今度は、その前方に広がる無数の黒い影へと視線を移した。
蓮としては、この先もあと何度か戦闘を繰り返すものだと思っていた。
だが、どうやら違ったらしい。
この広間にいる連中を倒せば――おそらく終わる。
「…………」
蓮はチラリと相棒のロアを見る。
そして次の瞬間――。
覚悟を決めるように、黒い影の群れへ向かって勢いよく走り出した。
(ここまで来たら、開き直ってやるよ!)
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ゴブリン×10が現れた。
ターレスが現れた。
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「えっ……なにこれ……」
いよいよボス戦だ。
そう思って気合いを入れて臨んだ蓮だったが、敵の姿がハッキリと見えた瞬間、思わず戸惑いを隠せなかった。
前方に並ぶ、十匹ものゴブリン。
そして、その後方。
他のゴブリンとは比べものにならないほど大きな体を持ち、その手には弓を携えた巨大なゴブリン――ターレス。
ここまでの戦闘で、蓮も隊列についてある程度は理解している。
だからこそ、まず試した。
(ボスから……!)
ターレスへ攻撃対象を合わせようとする。
しかし――。
(やっぱ、無理かぁ……)
ターゲットできない。
前方に並ぶ十匹のゴブリンが邪魔をしているのだろう。
(だったら、先にこいつらを――)
そう判断した、その直後だった。
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ターレスの攻撃!
REN999に33のダメージ!
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「えっ……嘘だろ……」
蓮は思わず目を見開く。
驚いたのは、33というダメージだけではない。
これまでの戦闘では、不意打ちなどの特殊な状況を除けば、先に行動していたのは全て蓮だった。
だが今回は違う。
何の特殊な条件もないにもかかわらず、ターレスが蓮よりも先に攻撃してきたのだ。
「ん~……格上ってことかよ」
それでも、立ち止まっている暇はない。
蓮はすぐに思考を切り替える。
(まずは前のゴブリンから!)
十匹のゴブリンへ向けて、鞭を振るう。
Lv.10まで上がった蓮の攻撃力。
そして、複数の敵をまとめて攻撃できる鞭。
その組み合わせを前に、通常のゴブリンでは耐えられない。
一度の攻撃で、前方に並んでいた十匹のゴブリンが一掃された。
「よし!」
これでターレスまで攻撃が届く。
そう思った直後――。
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ロアの攻撃!
ターレスに1のダメージ!
ターレスはロアを睨みつけた。
ロアは怯えている。
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「えっ……?」
今までに見たことのない表示が流れた。
(ちょっと……なんかこれヤバくね?)
ロアの様子が気になった蓮だったが、そんなことなどお構いなしにターレスの次の行動が始まる。
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ターレスの攻撃!
ターレスの【二本撃ち】!
ターレスはロアを狙った!
【守りの盾――かばう】
REN999に35のダメージ!
REN999に33のダメージ!
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(あー……良かった。ロアは無事だったか……)
ロアに攻撃が当たらなかったことに、ひとまず安堵する。
しかし――。
「いや……だとしても痛すぎだろ、これ……」
一度の攻撃で、合計68ダメージ。
これまでの敵とは明らかに違う。
蓮は思いのほか大きなダメージに焦りながらも、ようやく攻撃できるようになったターレスへと鞭を振るった。
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REN999の攻撃!
ターレスに20のダメージ!
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「よし……!」
ダメージは通る。
だったら、あとは攻撃を続ければ――。
そう考えた矢先。
ターレスが不意に動きを止めた。
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ターレスは口笛を吹いた。
ゴブリン×10が現れた。
ゴブリン達がREN999達の前に立ちはだかった。
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「…………」
再びターレスの前を塞ぐ、十匹のゴブリン。
蓮はもう一度ターレスを狙おうとする。
当然――ターゲットできない。
「なんだよこれ……」
十匹倒して、ようやく攻撃できたと思ったら。
たった一度攻撃しただけで、また十匹。
「クソ仕様にも程があんだろ……」




