第27話-前衛
このゲームは、分からないことが多すぎる。
そう考えた蓮は、現段階の知識でいくら悩んだところで、自分が納得できる答えにはたどり着けないと悟った。
(もういい! 今は戦闘に集中しよう!)
半ば開き直るように思考を切り替え、目の前の敵との戦闘に集中する。
それからしばらく攻防を繰り返し――ようやくゴブリンウォーリアーとの戦闘が終了した。
「ふぅ……思ったより削られたな」
戦闘を終えた蓮は、自分のHPを確認する。
残りHPは百を少し超えた程度。
最大で280ほどあったことを考えれば、かなり削られてしまった。
(これは回復させた方がいいよな)
そこで蓮は、ゴブリンの巣へ向かう前にポロンから渡されたポーション(中)の存在を思い出した。
早速一つ使用してみる。
すると――。
「おお、凄い。一気に回復した……」
減っていたHPがみるみるうちに回復し、そのまま満タンになった。
確か普通のポーションの回復量は100だったはずだ。
今回は明らかに100以上のHPが減っていたにもかかわらず、それが一気に全快している。
「これがポーション(中)か……」
改めてその回復量に驚きながら、蓮はポロンのことを思い出す。
ポロンは現在RankⅢのプレイヤーだ。
それなら、今回のゴブリンの巣も以前に攻略している可能性が高い。
「ああ……こういうことか」
だからこそ、この先で回復薬が必要になることを知っていた。
そのため、蓮には多すぎると思えるほどの回復薬を持たせてくれたのだろう。
そう考え、一人納得する。
しかし――。
(でも待てよ……)
蓮は自分のアイテムを確認する。
ポロンから渡されたのは、ポーション(中)と普通のポーションがそれぞれ十個ずつ。
巣へ入る前に普通のポーションを一つ。
そして今、ポーション(中)を一つ。
まだ、それだけしか使っていない。
「…………」
蓮はゆっくりと顔を上げた。
先ほどまでゴブリンウォーリアーが控えていた場所。
そのさらに奥には、これまでよく見えなかった通路が続いている。
「あー……なるほど……まだまだ序盤戦ってことですか……」
誰に聞かせるでもなく、一人つぶやく。
どうやら、ここで安心するにはまだ早そうだった。
「はぁ……」
小さく息を吐きながらも、蓮はすぐには先へ進まなかった。
もう一つ、確認しておきたいことがあったからだ。
ゴブリンウォーリアーとの戦闘中に気づいた、隊列という考え方。
もしあの考えが正しいのであれば、自分の後ろにいるロアを前へ出せば、ロアも攻撃できるようになるはずだ。
(でも、だからってなぁ……)
蓮はロアのステータスを確認する。
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【ロア】
Lv:10
HP:100
SP:50
攻撃:10
防御:10
命中:10
抵抗:10
STR:10
VIT:10
AGI:10
INT:10
DEX:10
LUK:10
CHA:10
スキル:【サーブ】
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「攻撃10か……」
今の蓮の攻撃力は35。
それに対して、ロアはたったの10しかない。
これでは前へ出したところで、戦力として期待するのは厳しいだろう。
「せめてポーションを持たせることができればなぁ……」
攻撃が役に立たなくても、後方から回復薬を使って支援してくれるだけで大きく違う。
しかし、どうやらロアにアイテムを持たせることはできないようだ。
「うーん……」
どうしたものかと考えていると、ふとモルスから【守りの盾】を受け取った時のことを思い出す。
装備スキルである【かばう】は、自動で発動する。
確か、モルスはそんなことを言っていた。
実際、これまでロアに向けられた攻撃は【かばう】によって蓮が受けている。
(だったら……前に出しても大丈夫なのか?)
ロアを前方に配置する。
そうすれば、ロアも攻撃に参加できるかもしれない。
そしてロアが攻撃対象になったとしても、【かばう】が発動すれば蓮が代わりに攻撃を受ける。
「……よし」
いつまたゴブリンが襲ってくるか分からない。
ここでいつまでも悠長に考えているわけにもいかない。
蓮はモルスの助言を信じ、ロアを自分と同じ前方へ配置することにした。
「よし、配置はこれで完了」
ロアの配置を終えると、気分を切り替えて奥の通路へと向き直る。
「じゃー、行きますか! ロア!」
「ワン!」
元気のいいロアの鳴き声が、ゴブリンの巣の中に響き渡る。
そして――。
案の定、その声に反応したゴブリンたちと戦闘になった。
「やっぱり来るよな!」
幸いにも襲ってきたのは複数の普通のゴブリンだけ。
今の蓮にとって苦戦するような相手ではなく、そのまま何事もなく戦闘に勝利した。
だが――。
戦闘が終わったあと。
「…………」
蓮は何とも困った様子で、隣にいるロアを見つめていた。




