第26話-隊列
攻撃したいのはゴブリンウォーリアーなのに、どうしてもターゲットを定めることができない。
そうして蓮がまごついている間にも、ゴブリンとゴブリンウォーリアーの行動ゲージはみるみるうちに溜まっていく。
(まずい……いつまでもこうしてられない!)
理由は分からない。
それでも、このまま何もしないわけにはいかない。
蓮はゴブリンウォーリアーを狙うことを一旦諦め、再び目の前のゴブリン二体へ鞭を振るった。
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REN999の攻撃!
ゴブリン Lv.10Aに23のダメージ!
ゴブリン Lv.10Bに21のダメージ!
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案の定、二体ともLv.10だけあって、この程度では倒れてくれない。
そして今度は、ゴブリンたちの攻撃が蓮へと襲いかかる。
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ゴブリン Lv.10Aの攻撃!
REN999に1のダメージ!
ゴブリン Lv.10Bの攻撃!
REN999に1のダメージ!
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たったの1ダメージ。
今の蓮にとっては、全くもって大したことのない攻撃だ。
だが――。
問題は、その後にやってくる。
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ゴブリンウォーリアー Lv.10の攻撃!
REN999に10のダメージ!
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「くっ……やっぱり痛いな……」
まだHPには余裕がある。
とはいえ、1ダメージしか受けなかった今までのゴブリンとは明らかに違う。
しかも、ゴブリンウォーリアーと戦うのは今回が初めてだ。
どれだけHPがあるのか。
どれほど攻撃を当てれば倒せるのか。
今の蓮には、予想すらつかない。
「どうするかな……」
考えながら、蓮はチラリと後ろを見る。
そこにはロアがいる。
しかし――。
(……あれ?)
蓮はふと、妙なことに気づいた。
(ロアって……攻撃しないのか?)
考えてみれば、この戦闘でもロアは一度も攻撃していない。
それどころか――。
(いや……待てよ)
蓮は目の前のゴブリンたちへ攻撃を続けながら、【フリーウルフの心】を使ってから今までの戦闘をざっくりと思い返してみる。
最初のゴブリン戦。
二体のゴブリンに襲われた時。
そして、レベル上げのために何度となく繰り返した戦闘。
思い返せば思い返すほど、答えは一つしかなかった。
(やっぱり……ロアは攻撃してない)
ロアが戦闘中に何かしたのは、蓮が指示して【サーブ】を使った時くらいだ。
「あれ……なんでだ?」
蓮はロアを見る。
そして自分の立っている位置を見る。
さらに、目の前にいる二体のゴブリンと、その後方にいるゴブリンウォーリアーへ視線を移した。
自分の前には、ゴブリンがいる。
その後ろには、攻撃したくてもターゲットにできないゴブリンウォーリアー。
そして――自分の後ろにはロアがいる。
「えっ……もしかして……」
一つの考えが、蓮の頭の中で繋がった。
ロアが攻撃しないこと。
そして、蓮がゴブリンウォーリアーをターゲットにできないこと。
もし、この二つが同じ理由なのだとしたら――。
(戦闘の隊列によって……攻撃できる相手が決まってる?)
前に敵がいる限り、その後ろにいる敵には近接攻撃が届かない。
そしてロアもまた、蓮の後ろにいるから攻撃できない。
そう考えれば、今までの状況にも説明がつく。
「マジか~……」
ここに来て初めて知った戦闘システムに、蓮は思わず声を漏らした。
「ロア、攻撃してみろ!」
「ワン!」
蓮の大きな声に負けじと、ロアも大きな鳴き声で返す。
しかし――。
一向に敵へ向かって攻撃する気配がない。
「…………」
蓮の当たってほしくなかった予感が、見事に的中した瞬間だった。
(もー……このゲームなんなんだよ……)
そんなことを考えている間にも、戦闘は続いている。
そして次の瞬間――。
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ゴブリンウォーリアー Lv.10の攻撃!
REN999に10のダメージ!
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「……ん?」
再び大斧による攻撃を受けた蓮だったが、今度はダメージとは別のところに引っかかった。
(あれ……?)
蓮は目の前にいる二体のゴブリンを見る。
その後ろには、ゴブリンウォーリアー。
そしてもう一度、自分たちの位置を確認する。
(ちょっと待てよ……)
ロアが攻撃できないのは、自分の後ろにいるから。
自分がゴブリンウォーリアーを攻撃できないのは、手前にゴブリンがいるから。
そこまでは分かる。
だが――。
(だったら、なんでこいつは俺を攻撃できるんだ?)
ゴブリンウォーリアーが持っているのは、大きな斧。
どう見ても遠距離武器ではない。
「近接攻撃だよな……?」
分かったと思った途端、また分からなくなる。
蓮の頭の中に、新たな疑問が浮かんでいた。




