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アセット・フロンティア・オンライン  作者: 床間信生


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第20話-モノの価値

「今ね、オークションで【守りの盾】って調べてみたの。」


 ポロンは蓮に画面を見せながら続ける。


「そしたら相場、大体5000Gくらいだった。」


「5000G……。」


「それだけじゃないよ。契約条件、【ゴブリンの巣】をクリアするまでだったよね?」


「はい。」


「RENさん、ゴブリンの巣をクリアしたらギルドからいくらもらえるか知ってる?」


「いえ……。」


「100000Gだよ! 十万G!」


「えっ……。」


(四割ってことは……それだけで40000G?)


 相場5000Gの盾に対して、ゴブリンの巣をクリアした時の報酬だけで40000G。


 それだけでも八倍。


 さらに、そこへ至るまでに受け取る討伐報酬まで含まれる。


(下手したら……十倍以上?)


 先ほどまで前向きだった蓮の気持ちが、一気に揺らいだ。


「モルスさん……本当ですか?」


「あー……まあ、そんくらいだったかな……。」


 モルスは頬を掻きながら、わざとらしく上の方へ視線を向ける。


 蓮とは目を合わせようとしない。


「ほら!」


 ポロンが勝ち誇ったように声を上げた。


「それくらいの金額だったら全然大丈夫。ポロンお姉さんが立て替えてあげます! だからオークション行こ!」


「えっ、いや……。」


「ほらほら。」


 どうやらポロンの中では、すでにこの店は完全にボッタクリ認定されたらしい。


 半ば強引に蓮の手を引き、店を出ようとする。


「おいおい、ちょっと待てよ。」


 そこへモルスの声が飛んできた。


「お前らの目的は、その盾を手に入れることじゃねぇだろ?」


「…………。」


「フリーウルフの育成なんだろうが。」


 その一言に、蓮の足が止まった。


「……確かに。」


「RENさん……。」


「まー、そこの……ポロンって言ったっけ?」


「はい。」


「ポロンが言ってることも、事実っちゃ事実だ。」


 モルスがカウンターから若干身を乗り出す。


「でもよ。お前、そもそもフリーウルフの育成って、何のためにやるのか知ってんのか?」


「えっ……。」


「【フリーウルフの心】を使ったって、別にイベント画面とか出てこなかっただろ?」


「「…………。」」


 蓮とポロンが揃って黙り込む。


(あー……この人、間違いなく何か知ってるな。)


「普通はな、まず職業ランクⅠのMAX――レベル10まで上げる。」


 モルスが指を一本立てる。


「次に【ゴブリンの巣】をクリアして、転職できるようにする。」


 二本目。


「そっから、特定の職業を出すための条件としてフリーウルフを育て始めるんだ。」


「特定の職業……?」


「そういうこった。」


 モルスは今度は蓮の足元にいるロアへ目を向けた。


「なのにこいつは、そんなの全部すっ飛ばして、ゲーム始めてすぐに育て始めちまった。」


「…………。」


「で、今さら育てる順番を間違えたからって、このフリーウルフを諦める気もねぇ。」


「……はい。」


「課金で装備揃えて無理やり突破する気もねぇんだろ?」


「それは……まあ。」


「だったら――」


 モルスがニヤリと笑う。


「その無茶苦茶な順番のまま、こいつを死なせず【ゴブリンの巣】まで突破できるようにしてくれって話だろ?」


「…………。」


 何も言い返せなかった。


「特定の職業を出すための条件って……あの、ポロンさんのやつ?」


「あっ……RENさん、それは……。」


「ん? そっちのお姉ちゃんは何の職業なんだ?」


(別に姉弟じゃないんだけどな……。)


 一瞬そう言いかけた蓮だったが、口に出すのをやめた。


 隣にいるポロンが、明らかに困ったような顔をしていたからだ。


「そのー……ごにょごにょし~です……。」


「あー? 聞こえねぇぞ。」


「ご……う……せ……い……し……。」


 すぐ隣にいる蓮でさえ、何を言っているのか分からないほどの小声だった。


「何だって?」


「……合成師です。」


「おい! お前、合成師っつったか!?」


「…………はい。」


「あの条件クリアできたのかよ!」


 どんどん小さくなっていくポロンとは対照的に、モルスのテンションが一気に上がる。


「そういや、最近までギルドに妙な匿名依頼が出てたよな?」


「…………。」


「あれ、お前さんが出してたのか?」


「…………はい。」


(ああ……やっぱり、あの依頼ってそんな特殊なやつだったんだ。)


「もしもよ。お前さんが合成師の突破条件を教えてくれるっていうんなら、こっちも勉強させてもらうってもんよ。」


(あっ……そういうことか。)


 蓮はここへ来る前、ポロンが言っていた言葉を思い出した。


『そりゃ隠すでしょ~。誰も知らない攻略法を見つけたなら、それだけで価値あるからね。』


 つまりモルスにとっては、ポロンが持っている《合成師》の攻略情報そのものに価値があるのだ。


「……ごめんなさい。」


「……ん? いいよ、別に……。」


「あー……まあ、気にすんなって。無理に聞き出して言いふらしたりする気もねぇからよ。」


 なんとなく気まずそうなポロンと、それを気遣っているらしいモルス。


 しばらく微妙な空気が流れたところで、モルスが再び口を開いた。


「でよ。条件の開示が無理だとしても……まあ、別の話なんだけどな。」


「はい?」


「ポロンさんが今後、俺から何か依頼した時に引き受けてくれるってんなら――」


 モルスがニヤリと笑う。


「こっちも大いに勉強させてもらいてぇんだけど、どうだろう?」


(『さん』が付いたぞ……。)


 明らかに先ほどまでとは違うモルスの態度に、蓮は若干の不満を覚えた。


(それだけ、合成師っていう職業には価値があるってことなのか……。)



 それから始まったのは、ポロンとモルスによる値切り交渉だった。


「いやいや、四割はないでしょ。」


「こっちだってタダでやるわけにゃいかねぇだろ。」


「だったら――」


「そいつは――」


 話が進むにつれて、初心者の蓮には何を基準に交渉しているのか、だんだん分からなくなっていった。


 ただ――。


 最終的にギルド報酬の四割が一割になったこと。


 【守りの盾】だけでなく、鞭などの装備まで付けてもらえること。


 そしてポロンは、今後モルスからの依頼を引き受ける代わりに、《合成師》の発生条件については話さなくていいこと。


 その三つだけは理解できた。


(……ポロンさん連れてきて、本当によかった。)


 蓮は心の底からそう思った。

ようやくロア育成の準備が整いつつあります。

なお、蓮一人だったら40%で契約していたと思います。

ポロンを連れてきて本当によかったですね。

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