第19話-守りの盾
「こいつはな、普通の鉄の大盾に、とあるドワーフが装備スキルを付け足した代物だ。」
「装備スキルですか……?」
聞き慣れない言葉が出てきて、蓮は少し顔をしかめる。
「小難しくて分からんか? まー、簡単に言やぁ、さっきの【いかずちの杖】みてぇに、自分で使って効果を発動させるのが『使用スキル』。」
「はい。」
「んで、こっちは装備してるだけで自動的に効果を発揮する。そういうのを『装備スキル』って呼んでんだ。」
「なるほど……。」
「別に正式名称ってわけじゃねぇぞ。プレイヤー連中が区別しやすいように、そう呼んでるだけだ。」
「はぁ……。なんとなく分かりました。」
(要は、装備してるだけで何か特殊な効果があるってことだよな?)
モルスの説明を、蓮は自分なりにそう理解する。
「それで、こいつにはな――」
モルスが大盾を軽く叩いた。
「装備すると【かばう】って効果が発動する。」
「かばう?」
「多分、ここまで言やぁ後は分かるよな?」
「……ロアへの攻撃を、俺が代わりに受けられる?」
「そういうこった。なんだったら、手に取って見てみろ。」
モルスから【守りの盾】を手渡される。
すると、蓮の目の前に装備情報が表示された。
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【守りの盾】
防御+50
スキル:【かばう】
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「あれ……モルスさん、これ値段が書いてないですよ。」
ここは武器屋なのだから、てっきり売り物なのだと思っていた。
だが、どこを見ても値段らしきものが表示されていない。
「あー……そいつは俺の私物だからな。」
「私物?」
「おう。それより、どうだ?」
「確かに【かばう】ってありますね。それに防御+50って……かなり凄そうですね。」
これまでまともな装備品をほとんど見ていない蓮には、それがどの程度の品なのかまでは分からない。
それでも、今まで目にしてきた数字と比べれば、防御+50が大きな数値であることくらいは分かった。
「でもRENさん、それ多分、職業ランクⅠの職人さんが作った装備だよ。」
「えっ……なんで分かるんですか?」
まるで「そんなの普通じゃん」とでも言いたげなポロンの反応に、蓮は驚く。
「だって、博士の試験でRENさんに渡した装備あったでしょ? あれが職業ランクⅡの職人が作った装備だから。」
「…………。」
言われて、蓮は研究所へ向かう前に渡された二つの装備を思い出す。
(そういや、どっちもLUK+100だったっけ……。)
それを装備していた自分の姿については、できれば思い出したくない。
だが、能力値の違いについてはなんとなく納得できた。
「まー、確かにゲーム全体で見りゃ、そこまで上等な装備ってわけでもねぇな。」
モルスはそう言って【守りの盾】を軽く叩く。
「ただよ、お前さん――こいつ欲しくないか?」
「はい……欲しいですけど。」
蓮は少し言いづらそうに続ける。
「ただ、今は持ち合わせが……。」
(これと……できれば鞭もあれば、後は何とかなりそうなんだよな……。)
「もし、お前さんが良けりゃあ、そいつ持っていってもいいぞ。条件付きだがな。」
「条件って……どんな条件ですか?」
「俺には【契約】ってスキルがある。」
「契約?」
「おう。決めた条件をシステム上の約束として結ぶことができるスキルだ。」
「約束ですか……?」
いまいちピンと来ず、蓮は首を傾げる。
「例えば今回なら、【契約装備】ってやり方が使える。」
「契約装備?」
「お前、これから討伐依頼なんかをこなしてGを稼ぐだろ? その報酬から少しずつ俺が代金を受け取る。要するに分割払いみてぇなもんだ。」
「へぇ……そんなことできるんですか?」
蓮は一気に興味を示した。
「おう。ただしデメリットもあるぞ。契約が終わるまで、その装備は外せなくなる。」
「外せない?」
「そういうこった。まあ、ゴブリンフィールド程度なら、こいつでも問題なく使えるだろ。」
(そんなスキルまであるのか……。)
ゲームのシステムとして管理される契約なら、少なくとも口約束よりは安心なのだろう。
「ちなみに、分割ってどのくらいなんですか?」
「どのくらいっつーか……そうだなぁ。」
モルスは少し考えるような仕草を見せる。
「期限は、お前が【ゴブリンの巣】をクリアするまで。」
「はい。」
「それまでに受け取ったギルド報酬の――四割。そいつでどうだ?」
「モルスさん、それって総額いくらになるの?」
「さあな。」
「さあなって……。」
「職業ランクⅠのMAXなんてレベル10だろ? そっから【ゴブリンの巣】をクリアするまでって考えても、数日ってとこじゃねぇか?」
モルスは大したことではないと言わんばかりに続ける。
「まー、これから先の長いゲーム生活を考えりゃ、そんなもん微々たるもんだろ。」
「あー……。」
そう言われると、そんな気もしてくる。
何より【守りの盾】があれば、ロアを守りながら戦える可能性が一気に高くなる。
(それで報酬の四割なら……。)
蓮がその条件に納得しかけた――その時だった。
「ストーーーーップ!!!!」
「!?」
それまで話を聞いていたポロンが、もの凄い剣幕で二人の間に割って入ってきた。




