第18話-複数攻撃
ポロンと話をしている途中、蓮はふと一人の人物を思い出した。
(そういえば……。)
ログイン初日に訪れた武器屋。
そこで出会った、ぶっきらぼうではあるものの、初心者の蓮に色々と教えてくれた店主だ。
武器を扱っているくらいなのだから、戦闘や装備について何か知っているかもしれない。
そう考えた蓮はポロンにそのことを話し、一緒に来てもらうことにした。
◇ ◇ ◇
「すいませーん。」
「お邪魔しまーす。」
二人で武器屋へ入る。
「はいよ。らっしゃい。」
店の奥から、以前と変わらないぶっきらぼうな声が返ってきた。
ほどなくして姿を現した店主は、蓮を見るなり少し眉を上げる。
「あー……お前、確か一昨日くらいに来たルーキーだよな?」
「あっ、覚えてるんですか?」
「まあな。それで? 今日はどうした?」
「実は……ちょっと聞きたいことがあって。」
そこで蓮は、店主にこれまでの経緯を説明した。
【フリーウルフの心】を手に入れたこと。
売却も加工もせず、フリーウルフを仲間にしたこと。
ロアと名付け、育てることにしたこと。
そして――。
「こいつを死なせないで育てる方法を探してるんですけど……。」
「…………。」
店主は蓮の足元にいるロアを見た。
「お前……また妙なこと始めやがったな。」
「……やっぱり、無理ですかね?」
蓮は店主の顔色を窺うように尋ねる。
「あー、まあ……手段なら結構あるぞ。」
「えっ?」
予想外の返答に、蓮は思わずポロンと顔を見合わせた。
ポロンも驚いたような表情を浮かべている。
どうやら店主は、【フリーウルフの心】について何かしらの知識を持っているらしい。
「それで! どんな手段があるんですか?」
思わぬところで突破口が見つかった。
蓮は、はやる気持ちを抑えきれないまま店主へ詰め寄る。
「まあ、そう慌てんな。」
対する店主は、そんな蓮を面倒くさそうに片手で制した。
「まず、お前さん……あー、そういや名前聞いてなかったな。俺はモルスだ。そう呼んでくれ。」
「はい。俺はRENでいいです。」
「RENな。分かった。」
モルスは一度頷くと、改めて蓮を見る。
「それで、職業はなんだ?」
「開拓士です。」
「開拓士?」
その答えを聞いた途端、モルスの表情がわずかに曇った。
「戦闘系でも魔法系でもねぇのか……。あーん……。」
「…………。」
ポロンに相談した時と同じような反応だった。
どうやら【開拓士】という職業は、今回の問題を解決するうえではあまり都合がよくないらしい。
「だとすると、魔法はあまり勧められねぇな。武器も……鞭系は厳しいか。」
「鞭?」
聞き慣れない選択肢が出てきて、蓮は首を傾げた。
「おう。鞭っていうのは、そこに置いてある武器なんだけどよ。」
モルスが店の奥に並べられている武器の一つを指差した。
「一回の攻撃で複数の相手にダメージを与えられる代物でな。一見すると今回みてぇな状況には良さそうだろ?」
「はい。」
「ただ、二体目、三体目と攻撃する相手が増えるほど、ダメージにマイナス補正がかかっちまう。」
「あー……。」
「戦士系の職業だったら、職業ランクⅠでもレベル10まで上げりゃ何とかなるらしいぞ。」
「戦士系だったら……ですか。」
期待が外れ、蓮は少し肩を落とした。
だが同時に、モルスの言った別の言葉が引っかかる。
(『何とかなるらしい』……?)
もしかするとモルスは、フリーウルフの育成に成功した者を知っているのではないだろうか。
「あとは……魔法系だよな。」
モルスは別の場所から一本の杖を取り出した。
「例えば、こいつだ。」
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【いかずちの杖】
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「戦闘中に使えば、敵全体に雷属性の魔法攻撃ができる武器だ。」
「それなら良さそうじゃないですか?」
「ところが、魔法の仕組みを知らねぇと結構使いづらいんだよな。」
「使いづらい?」
「おう。このゲームの魔法ってのはな、使ったSPの量とINTなんかで威力が変わる。」
「えっ?」
蓮は一瞬、意味が分からず首を傾げた。
「消費SPが決まってるとかじゃないんですか?」
「違うなぁ。こいつを使うとな、まず消費するSPを自分で決める画面が出てくる。」
「自分で決める?」
「おう。で、使ったSPと敵の数、それに職業によるスキル倍率。そいつにINTなんかが絡んで、最終的なダメージが決まるって仕組みだ。」
「じゃあ、敵が多いと……。」
「当然、一体あたりに与えられるダメージは落ちる。倒したきゃ、その分SPを多く突っ込む必要があるってことだな。」
「なるほど……。」
「まー、今言ったのは基本だけどな。魔法系の職業なら補正もあるから何とかなるが、そうじゃねぇ奴が敵の多いところで使うとなると、かなりキツいと思うぞ。」
「SPが足りないだけなら、SP回復薬を使うって手段もあるけど……問題は仕留めきれなかった時だよね。」
ポロンがロアの頭を撫でながら言う。
「生き残ったモンスターの矛先が、この子に向いたらねぇ……。」
「…………。」
蓮はポロンの手元にいるロアを見る。
「まー、今言ったのは基本だけどな。」
モルスはそう言うと、何かを思い出したようにカウンターの下へ手を伸ばした。
「んで、両方がダメな場合は――こいつかな?」
「?」
モルスがカウンターの下から取り出したのは、一枚の大きな盾だった。
「こいつは【守りの盾】って装備だ。」
「守りの盾……?」




