第13話-クラン《秘密の花園》
「それでなんだけど……RENさんがよかったら、うちのクランに入らない?」
「えっ……。」
【フリーウルフの心】をどうするべきか考えていた蓮に、ポロンが唐突にそんな話を切り出した。
「いや~、RENさんって昨日アカウント作ったばっかりって言ってましたよね?」
「はい。」
「それで、薄々感じてるとは思うんだけど……。」
ポロンが少しだけ身を乗り出す。
「このゲーム、一人で進めていくのって結構きついと思わない?」
「あー……まあ、確かにそんな感じはしますよね。」
ゲームを始めてまだ二日目。
それでも蓮には、なんとなく分かる気がした。
最初に受けた素行調査からして、単純に指示されたことだけをやればいい依頼ではなかった。
今回の昇格試練にしても、ポロン一人では挑戦することすらできない。
「それにね。うちのクラン、ちょっと前まではもっとプレイヤーがいたんだけど……今は訳あって、私を含めて三人しかいないんだよね。」
「三人?」
蓮は少し考えてから、ここまで一緒にいた二人を思い浮かべた。
「残りの二人って、もしかして大根さんとオクさんですか?」
「そっ。大正解。」
「…………。」
蓮は何となく窓の外へ目を向けた。
先ほど見た、二十棟近くの建物。
「……あれだけ建物があるのに?」
「昔はもっといたからね~。」
「なるほど……。」
その言い方が少し気になったものの、ポロンは特に説明する様子もなく話を続ける。
「それで、ここから先の攻略を進めようと思ったら、どうしても人数が必要になってくるの。」
「人数……。」
「うん。今回の昇格試練みたいに、一定人数いないと挑戦すらできないものもあるしね。」
正直、昨日から始めたばかりの蓮にとって、クランという集まりに入れてもらえるのはありがたい誘いに思えた。
だが、それ以上に不安もある。
知識はほとんどない。それどころか、レベルだってまだ一つも上がっていない。
そんな自分が入ったところで、果たして何か役に立てるのだろうか。
「…………。」
「例えばなんだけどさ。」
黙り込んだ蓮を見ながら、ポロンが話を続ける。
「RENさんがフィールドに出て、モンスターと戦うとするよね?」
「はい……。」
「それで戦闘に勝って、ギルドに戻って討伐報酬をもらいました。」
「はい。」
蓮は少しだけポロンへ視線を向けた。
実際、ここを出た後はギルドへ向かい、ゴブリンの討伐依頼でも受けてみようと思っていたところだ。
「じゃあ、その戦闘で減ったHPとかSPはどうするの?」
「えっ?」
「毎回宿屋に泊まって回復する? それじゃGなんてすぐなくなっちゃうよ。」
「あ……。」
「かといって、RENさんはまだ自然回復系のスキルなんて持ってないでしょ?スキルなしの自然回復なんて…」
「はい。」
「じゃあ日付が変わったときの無料回復まで待つ?」
「…………。」
「それじゃ、全然攻略進まないよね。」
「確かに……。」
蓮は宿屋の値段こそ確認していなかったが、ギルドで聞いたポーションの値段を思い出した。
一つ100G。
戦うたびにそんなものを使っていたら、今の蓮の所持金ではあっという間になくなってしまう。
「でも、クランに入れば話は別。」
「別?」
「うん。今使ってない建物をRENさんの拠点にすればいいの。」
「俺の拠点?」
「そ。クランに戻って自分の拠点に入れば、HPとSPは自動で回復するよ。」
「……マジですか?」
ポロンの言っていることが本当なら、蓮にはそれがかなり大きなメリットに思えた。
少なくとも、戦闘のたびにポーションを買ったり、宿屋へ行ったりする必要はなくなる。
「でも……俺が入っても、今のところ何もできないですよ?」
「別にいいよ。」
「え?」
「今できないなら、これからできるようになればいいじゃん。」
「…………。」
「それに、一回入ってみてさ。やっぱり合わないから抜けますってなっても、それは仕方ないと思ってるし。」
「そんな感じでいいんですか?」
「ゲームなんだから、合わないのに無理して一緒にやってもしょうがないでしょ?」
「まあ……それもそうですね。」
入るのも自由なら、出るのも自由。
そう言われてしまえば、蓮としてもそこまで深く考える必要はないように思えた。
何より、昨日ゲームを始めたばかりの自分にとって、分からないことを聞ける相手がいるというのはありがたい。
「じゃあ……お願いします。」
「おっ?」
「とりあえず、入ってみようかなと思います。」
「りょーかい! それじゃ招待送るね~。」
ほどなくして、蓮の目の前に新たなウィンドウが表示された。
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【ポロン5963様よりクラン《秘密の花園》への加入申請が届いています】
【加入しますか?】
YES NO
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「…………。」
蓮は迷うことなく【YES】を選択した。




