第14話-ロア
ポロンとの話し合いを終え、会議室という名の喫茶店を出た蓮は、そのまま彼女にクラン内を案内してもらった。
その途中で大根とオクにも会い、ポロンから蓮がクランに加入したことを伝えられると、二人から改めて「よろしく」と声をかけられた。
さらに、せっかくだからということで、その場で三人と【フレンド登録】というものも行った。
どうやらフレンドになっておけば、パーティーを組んでいない時でも相手がログインしているか確認したり、直接メッセージを送ったり1日1回戦闘に参加してもらったりできるらしい。
(始めたばかりだし使える物は多いほどいいよね。)
ゲームを始めてまだ二日目だというのに、一気に三人も知り合いが増えたことに、蓮は少しだけ不思議な気分になった。
その後、現在誰も使っていないといういくつかの建物を見て回り、その中からごく普通の一軒家を自分の拠点として選んだ。
試しに中へ入ってみる。
すると、先ほど【開拓士の目】を使ったことで減っていたMPが回復していくのを確認できた。
(おお……本当に回復するんだ。)
これなら、少なくとも毎回ポーションや宿屋に頼る必要はなさそうだ。
こうしてクランでの用事を一通り済ませた蓮は、一度街へ戻った。
向かった先はギルドと預り所。
ギルドでゴブリン討伐の依頼を受け、預り所にはニールから教えられたことを思い出して、今の戦闘には必要のないGやアイテムを預けておく。
そして、それらの用事も済ませた現在――。
「さて……。」
蓮は街の外へと続く道を歩いていた。
目的は一つ。
ゴブリン討伐である。
「……あと、もう一つ。」
そう呟くと、蓮はコマンド画面を呼び出した。
選んだのは――【フリーウルフの心】。
ポロンからは、まだどうするか決めていないのなら、とりあえず預り所に入れておいた方がいいと言われていた。
二万Gほどで売れる。
専門職に頼めば、素早さを上げる装備品などに加工できるらしい。
そして、戦って倒せばレベルが一気に10上がり、一万Gまで手に入る。
どれも、ゲームを始めたばかりの蓮にとっては魅力的だった。
それでも――。
『それなら、俺が育てるよ』
(……言ったからな。)
結局、蓮は自分で使うことを選んだ。
【使用】を選択する。
すると目の前に白い光の粒が現れ、それらがゆっくりと一ヶ所へ集まり始めた。
「おっ……。」
光は次第に四足動物のような形を作っていく。
やがて光が消えると、そこには一匹の小さな生き物が立っていた。
三本の脚で地面に立つ、小型のジャーマン・シェパードを思わせる姿。
子供たちの話では動物ではなく、これでも立派なモンスターらしいのだが――。
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【フリーウルフが現れました】
戦う
仲間にする
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「…………。」
実際に二つの選択肢を目の前にすると、蓮の指が一瞬だけ止まった。
【戦う】を選べば、レベル10と一万G。
始めたばかりの自分には、間違いなく大きな報酬だ。
「……まあ、決めたことだしな。」
蓮は【仲間にする】を選択した。
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【フリーウルフが仲間になります】
【名前を決めてください】
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「名前か……。」
蓮は目の前のフリーウルフを見る。
「普通にポチとかでいいのかな……。」
一瞬、それでいいかとも思った。
だが、すぐに考え直す。
「…………。」
これから先、長い付き合いにするつもりで【仲間にする】を選んだのだ。
(だったら、ちゃんと考えた方がいいか。)
名前を決める画面を表示したまま、数分。
「うーん……。」
いくつか候補を考えてみたものの、いまいちしっくりこない。
そんな中、蓮の頭にあの二人の顔が浮かんだ。
「……ロアでいくか。」
ロイとノア。
あの時の二人から一文字ずつ取って、【ロア】と入力する。
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名前:ロア
種別:モンスター
区分:フリーウルフ(幼体)
レベル:1
ランク:Ⅰ
HP:10
SP:5
攻撃:1
防御:1
的中:1
抵抗:1
STR(筋力):1
VIT(体力):1
AGI(敏捷):1
INT(知力):1
DEX(器用):1
LUK(運):1
CHA:1
スキル:サーブ…戦闘離脱
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「……はぁ。」
ステータス画面を見ながら、蓮は思わずため息をついた。
分かっていたことではある。
それでも、実際に数字として見ると恐ろしいほどに低い。
(本当に全部1じゃん……。)
唯一気になったのは、最後に表示されているスキルだった。
「サーブ? ああ……。」
(これ使って逃がしながら育てろってことか。)
何しろ死ねば終わりである。
このステータスで戦わせろという方が無茶な話だ。
(戦闘に入ったら、まずこいつに【サーブ】を使わせて……あとは俺一人で戦えばいいか。)
そう考えながら、蓮は足元にいるロアへ目を向けた。
「よし、ロア。とりあえず行ってみるか。」
「ワン!」
三本の脚で蓮の後を追いかけるロアとともに、蓮はゴブリンが出現するという場所へ向かった。




