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はじまり~、はじまり。

「さ~さ~、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。御用とお急ぎで無い方はチョイとをかざして、電子の海に浮かべてくだせい」


 いつもやりすぎてしまう。

 学生服に身を包んだ青年は、自分の手の平を見つめながら夕方の商店街を歩いていた。


夏海冬雪なつうみふゆゆき自撮りテク、ソースが無ければネタかツリかも、とんとわかりゃしない。

さて、お立会い。ここに取りい出したるこれは【GAMAの油】。

 GAMAとのお聞きにゲロゲロ鳴くアレを思い浮かべたそこの貴方。『は? がま? ガマガエルなんてまだいたのかよ?』と言うお方があるかもしれないが、あれはGAMAとは言わない。カエルから油が取れるわけがないよ、お立会い」


 青年と言ったが、その外見は、青年といってよいのか疑問を覚える。

 身長は百五十センチないだろう。顔は幼さを残している福与かな印象を与えた。

 別に、その身長の低さから呼び方を迷ったわけではない。

 短い手足。縦と横がほぼ均等なのではという体格。隠れた首。顎が胸に触れている風貌。

 まあつまり、一言で言えば、球体な体型をその男子学生はしてた。


「お立会いお立会い、手前のはこれGAMAはGAMAでも唯のGAMAではない。その名も【四目しもくのGAMA】。瞳が左に二つ、右に二つの合わせて四目のGAMAの油だ。

 このGAMA、何処に住むかと言うと、彼の名立たる霊峰。その地に秘められし名も無い洞窟の奥の奥。一口飲めば寿命が千日延びる霊水に身を浮かべ、そこに生えたる万病を癒す霊草を喰らって育ちます」


 自分の不器用さは今に始まった事ではないと、あきらめと言うより、ただの事実とその青年は思い歩いていた。

 テレビリモコンのボタンを押せば壊す。

 スマホの画面はすぐ割ってしまう。

 入学してすぐにでた数学の宿題の時は、筆圧が強すぎて紙を貫通してしまい、百問の出題を百冊のノートで提出した。

 以来、宿題の提出があった際は、彼だけは放課後に口頭で担当教諭へ提出する事になった。

 ちなみ、授業ではノートをとれないので、ボイスレコーダーをと言いたいが、それも壊してしまうため、全て聞き覚えで頑張っている。


「さてお立会い。このGAMAから油を取るには、人の手が触れてしまえばたちまち崩れてしまうその体。水に浮かべてお持帰りでしめしめと鼻の下を伸ばしたならば、鏡の前にそっと置き、孔雀の羽で開かずのまぶたをそ~と撫で開ける。さすれば理解できない己の姿を、とりあえず在るがままに見詰めだす」


 実は今もその宿題を提出した帰りで、部活にも入っていないのに、この時間の帰宅となったわけだ。

 まあ、他にも理由あったのだが。

 そんな事を考えながら、制服のあちらこちらに付いた土埃をパンパンと手で叩く――パンパンというよりポムポムという感じか。


「ハァハァと息を整えながら理解を超えた現実に頭を悩ませタラーリ・タラリと何かを流す。これをパンしてドンしてチューチューして、緑に光るランラン石棒で煮たきしめ、あむぶろ塩、あんおぶ田螺たにしの殻、えり草、賢い砂をオッケーしたのが、お立会い。これGAMAの油だ」


 注意深く見る者がいれば、制服の汚れが転んで付いたにしては不自然な付き方をしていると思ったかもしれない。

 残念ながら今この場にいる大衆は、別の事に興味を注いでいた。


「このGAMAの油、効能は塗って祈れば、ヒッキー、ニート、コミ障、自宅警備員の解消。まだある、炎上、バッシング、ツリに論破。枕に至れば前世にお告げ、暗黒竜にトラウマ他、切り傷一切まだある。

『モエー』と大きいお友達が七転八倒、モニター前でゴロン・ゴロンと転がるのがお立会い、これ嫁の苦しみ。

 だが、このGAMAの油をバッバッバッとポーズを決めて、ぐっと丸めて心のうつろに詰めて、静かに自分を探してみれば、熱いパトスがビュビュと出ると共に、ピタリと賢者となり止まる」


 何か手に違和感を覚えたのか、足を止めると青年は土を落とすのやめて、まじまじと手の平を見つめている。

 ガラス片が土に混じってしたのか、ともなければ何かささくれだった物が引っかかっていたのか、理由は分からないが、手の平に赤く一本の線が引かれ、それはジワリと滲み広がっている。


「お立会い。まだまだあるよ、刃物の切れ味をも止める。

 出したるは、そこのワンコインにてスゴ技で有名なあの代物である。実によく切れる。抜けばビュビュの何かの刃。

 さて、その切れ味、この紙にてご確認頂こう。

 一枚の紙が二枚、二枚が四枚、四枚が八枚、八枚が十と六枚、十六枚が三十と二枚、三十二枚が六十四枚。ほれこの通り細かくよく切れた。ふっと散らせば――と言いたいがそれでは凄さが足りない。

 紙の一片を片手に構え、エイヤッっとこの魚肉ソーセージに引いてみれば、コレこの通り、切られた紙でこれ程よく切れる。

 ただこの技物も、チョイと塗ってやれば、たちまち切れ味が止まる。

 YAAAAAAAA。サァーどうだ、たたいて切れない、押しても引いても突いても駄目だ。

 さてお立会い、お立会いの中に、『お前のそれは逆CRCなだけだろ?』と言うお方があるかも知れない。

 が、手前、フリーの販売人、広げた風呂敷は天下御免のGAMAの油、そんなつまらぬものは晒しませぬ。

 このように、きれいに拭き取れば、この通りだ! まな板だろうと真っ二つ。当然腕に触れれば剣気だけでも赤い血が、ジワリと出る。

 それでは、腕を切ってご覧に入れる。ヤバ、深い・・・・・。だが、血が出ても心配はいらない。この傷口にひと塗り、アップデートの終わる間に、傷跡まで消える妙薬とござる」

 

 青年は自分の手と、人だかりとを、数度視線を行き交わせると、頭上に電球が点灯しそうなレトロな表現を重ねたくなる表情作り、一歩踏み出した。

 

「お立会い。お立会いの中に、それ程の物なぜアップされていないのか不思議でござろう。それは簡単、凄すぎて広めてはいけないお宝だからだ。 さてお立会い。本日は、木村能登まで出張っての大安売り、男はメンズ、女はレディース、むちで鳴くのは豚の声、ガチャ10連のお布施と思って、一瓶二百ブヒのところ、半額の百ブヒではどうだ」


 どうしてそこに手が届くのか不思議だが、青年はズボンの後ろポッケに差した財布に手を伸ばす。


「どうだどうだ、遠慮は無用だ。分かったら、どしどし買ってきな。買ってきなあ、買ってきな」


 本当に、いつもやりすぎてしまう。


「はい、その若旦那。毎度あり、ありがとうございます」

 

 青年が差し出した手の平には、ビンが一つ乗っていた。

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