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第二章 第二話 都会派探偵(笑)の張り込みと、同業者(?)の影

スナック『蜘蛛の巣』のボックス席で、国宝級の双胸を持つ少女――沢田マキちゃんから事情を聞き出した俺は、さっそく次の工場の休日に調査(という名の張り込み)を開始した。


今日もバシッと、中華街の端のいかがわしい古着屋で買ったサイズの微妙な黒スーツ姿だ。


マキちゃんの話によると、彼女は地方(和歌山とか言っていた気がするが、俺に土地勘はまるでない)の名士のお嬢様らしい。

それが二ヶ月前、高校入学と同時に、家の古臭いしきたりのせいで、親が勝手に婚約者を決めてしまったのだという。


その相手というのが、なんと十歳以上年上のキモオタ。

それを聞いた瞬間、なぜだか俺の胸の奥が、す〜〜〜〜んごく痛んだような気がしたが……まぁ、それは気のせいだろう。ゴホン。

とにかくマキちゃんはそれに耐えかねて家を飛び出し、この場末の街へと流れ着いたのだ。




そして今、彼女の周囲をうろついているという不審なストーカーの影。


「フッ……闇に潜むドブネズミめ。俺の目を欺けると思うなよ」


ハードボイルド小説のセリフを胸に、電柱の陰からじっとマキちゃんのアパートの周辺を監視する。

心臓はバックバクだ。もし刃物を持った凶悪犯だったらどうしよう。俺、喧嘩の経験ゼロだし、なんならガムテープのカッターで指を切っただけで半泣きになる男だぞ。


すると、通りの向こうから、いかにも怪しげなトレンチコートの男がこちらに歩いてくるのが見えた。帽子を深くかぶり、マキちゃんのアパートを値踏みするように見上げている。


(……出たーーー! ガチの不審者だ!!)


逃げ出したい足を必死にやせ我慢で引き留め、俺はコートの襟を立てて男の前に立ちはだかった。声が裏返らないように、喉を思いきり鳴らす。


「……おい。そこまでにしてもらおうか。あんたがマキちゃんをつけ狙うストーカーだな?」


男は驚いたように足を止め、俺のサイズの合っていない不格好な黒スーツをじろじろと見た。そして、ため息をつきながら懐から警察手帳――ではなく、小さな手帳を取り出して提示した。


「……驚かせたなら申し訳ない。私はストーカーではない。和歌山の沢田家の旦那様に雇われた、民間の調査員だ」


「調査員……? って、本物の探偵さん!?」


俺は思わず素の情けない声を上げてしまった。

男は「そちらこそ、お嬢様の関係者か?」と怪訝な顔をしている。


話を聞けば、男は決して凶悪犯ではなく、単に「家出したお嬢様を実家に連れ戻す」という真っ当な(?)依頼を受け、実家の父親から資金を支給されて動いているプロの探偵だった。


「旦那様は頑固な方でね。お嬢様を何が何でも連れ戻せと息巻いておられる。だが……」

本物の探偵は、困ったように眉を下げた。

「実家のお母様は、旦那様のやり方にずっと大反対されていてね。お嬢様を心配して、毎日裏で泣いておられるそうだ。私も、無理やり連れ戻すのは気が引けていたところでね……」


本物の探偵から明かされた、実家の家庭の事情。

頑固で独裁的な父親と、陰で涙を流す実の母親。


(うわぁ……家庭内不和の泥沼じゃねえか。ますます俺の手に負えねえ……!)


俺は内心で頭を抱えた。

だが、その時、俺の脳裏にひとつの閃き(ハッタリ)が降ってきた。

気の弱い俺に、本物の探偵や和歌山の名士と戦う力はない。

だが、この事件には、俺なんかよりも遥かに強力な『最強の味方』がいるじゃないか――。


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