第5話 光る花
教会に繋がる大通りですが、パレードはまだ教会には到着していなかったようです。
「下ろしていただけますか?」
ラフェシエンは私を石畳の上に下ろしてくれました。
「ラフェシエン様は目立つのでここにいてください」
「それは困ります」
「私は楽しみたいのです」
私はそう言い切って、湧き立つ人々の中に入っていきます。
人の隙間を縫って、警備の衛兵が並び立っているところまで前に出てきました。
衛兵は市民から徴兵された方々ですので、こういうお祭りのときは警備を行っているのです。
そして私はドキドキしながら、神輿がくるのを待ちます。
先頭の聖騎士たちが騎獣に乗ってやってきました。
その後方に大型の騎獣に引かれている神輿の姿が見えます。
その上には色とりどりの花が入った籠を持った聖女たちがいました。
白い聖女の衣服をまとい、キラキラした笑顔を浮かべ、花を空中に舞わせているのです。
その姿が眩しいと目を細めました。
目の前を通る神輿の上にいる一人の聖女と目が合ってしまいました。
すると、後ろを向いてしゃがみ込んで、新しい花が入った籠を持ち上げています。
そして、こちらを向いたかと思うと手を前に出してそのまま籠を逆さにしました。
え? 何ですか?
そんなことをすれば……
私の上にドサリと花が落ちてきました。
花には祝福の加護をまとわせたので、私の神の加護と共鳴して光ってしまうと言ったではないですか!
「女神イーリア様の祝福をフィエーラ様」
ふぉぉぉぉ! こんなところで名前を呼ばないでください!
今の私は光っている花をまとっている怪しい人ではないですか! そんな私をさけるように空間が……。
あ、衛兵の人が青い顔色をして私を見ています。
私が固まってしまっていますと、身体が浮き上がり、攫われてしまいました。
「聖騎士ラフェシエン様が!」
「え? 本当に?」
「それでは本物の神聖女様がここに」
ざわめきが湧き立っているのを路地の通路の中から聞いている私は、ラフェシエンに攫われていました。
「それで何がしたかったのですか?」
光る花を外套にくっつけた私にラフェシエンが聞いてきました。
このような騒ぎにするつもりはありませんでした。
「私、お祭りを下から見たことがなかったのです」
私は十歳から教会にいました。それまでは辺鄙な田舎に住んでおり、時々村の浄化石を浄化しにくる聖女様を見かけるぐらいでした。
「興味があったのですよ。上から見下ろす世界ではなく、下から見上げる世界に」
十年も教会にいますが、この神禮祭がどのようなものか、知らずにいたのです。
もちろん、教会側として参加していましたので、知っています。
ただ、あの広場のように屋台が並び大道芸人が芸を披露し、歴史で有名な聖女の演劇が行われている。そのような話を聞くだけで、実際にその場に行ったことがなかったのです。
そして、私はこれからも神聖女として居続けるのです。
他の聖女たちは適齢期になれば教会を去り結婚をして、新たな聖女が教会にやってきます。
ですが、私は神聖女として居続けるのです。
だから、人々が見る光景を見たかったのです。
「とてもキラキラしていました。聖女の子たちがこの花を人々に捧げて、人々が手を伸ばして受け取る。ああ、これが神の祝福だと」
私は外套についた光る花を手にとって掲げます。
世界は混沌に満ちています。人々は魔物の恐怖に怯え暮らしていかなければなりません。
唯一の光は神の加護を持つ者の存在です。
「ただ、私の光が強すぎるのです。それで騒ぎになってしまいましたね。教会に戻ります。今日はこの花を受け取ったので満足です」
祭りは夜遅くまで続きますが、人々と同じように下からキラキラした聖女たちを見られただけで満足です。
そして、人々の幸せを奪う厄災を退けられた。それでいいのです。
「まだ、日が暮れるまで時間があります」
ん? 日が暮れるまで?
確かにまだ昼過ぎなので、暗くなるまで時間はあります。
そして教会に向ってスタスタと進んでいくラフェシエン。ただ、路地の中なので少しズレていますね。
何故か、その路地の建物の一つに入って行き、建物内を移動していくと、いつの間にか教会の建物の造りになっていました。
「転移で移動したのですか?」
教会の敷地にある建物は、何かと浄化石が使われているのですぐにわかるのです。
それから、ここから聖女たちが住まう建物がみえることから、この建物は聖騎士が住まうところでしょうか?
はい、教会の敷地は広大で、神に祈りを捧げる神殿と言うべき建物を中心に、王都に住まう聖女と聖騎士が住まう建物があります。
ただ、掲げる神が違うため、中庭を挟んでいるので、離れているのです。
「そうですね。ここで少々お待ちください」
廊下の一角にあるくつろぎスペースでしょうか? そこのソファーに座らされました。
そしてラフェシエンはどこかに行ってしまいました。




