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终末蘇生シリーズ外伝~ハースキリの物語  作者: 君侄


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ハースキリの物語1.2

長い年月が流れ……

「わっ、何だよお前ら!そんな怪しげなことして?」

「ほら~少将様、あとで分かるからっ!」

「そうそう!こっちに来て~」

この時、ダラは数人の兵士に「連行」されていた。

彼も何のためか分からずにいた。

面白いものを見せてやる、と言われたからだ。

若者たちの気持ちを踏みにじるわけにもいかず、

折も折暇だったので、一緒に遊んでやることにした。

ゆっくりと……

ドアをくぐったと感じた瞬間。

「パッ… パッ!」

クラッカーの破裂音が鳴り、照明が一斉に点灯した。

ダラは部屋中が人で埋まっているのに気づいた。

みな、自分の部下たちだった。

「少将様!百歳のお誕生日、おめでとうございます!」

ダラは一瞬硬ばり、そして苦笑した。

「お前ら…… これは世間体か、それとも本心の祝いか?」

「もちろん本心ですよ!百歳ですよ!一世紀ですよ!盛大に祝わなきゃ!」

「ははは……」

ダラには分かっていた。

この誕生日パーティーのために、真心を込めてくれる者もいれば、

目をつけて関係を取り繕おうとする者もいる。

そうすれば後々得になる、と計算しているやつも。

だがダラはもう、こうした相互利用には慣れっこだ。

軍部だって、立場のある場所だ。

俺がお前に役立ち、お前が俺に役立つ。

それに、たまには遊んで息抜きするのも悪くない。

ただ…… 俺のためのパーティーで何かあろうものなら、全部俺が尻拭いすることになるんだよな……

大きく笑ったあと、彼は若者たちにすっかり振り回され、

いろんなゲームや交流に巻き込まれた。

…… まあ、みんな楽しそうならそれでいい。

やがてダラは疲れ、脇のソファーに座って彼らを眺めていた。

若くて勢いがある。いいものだ……

その時、スタイルが良く華やかな顔立ちの女がダラのもとへ歩いてきた。

最初、ダラは気づかなかった。

「少将様?どうして一緒に遊ばないんですか?」

女は少し寄り添うように笑い、ダラの隣に座った。

「ん?」

ダラは振り返り、頭を振って自嘲した。

「ああ…… 年を取ったな。お前ら若者のような活力はもう無いよ」

彼はソファーに身を沈め、天井を見上げた。

「ぷっ…… お上手な冗談ですね。今の少将様は、私よりずっと若く見えますよ」

確かに、ダラは今百歳だが、体内の始法力が高まったことで、永遠に若さを保てるようになった。

「ははは……」

ダラは声を上げて笑った。

お世辞が的を射ていた。

永遠に若さなんて、誰だって願うものだ。

「そういえば、君は何という?どこの部門の者だ?」

次第に話が弾み、ダラは姿勢を正した。

「えっ……!?」

ダラの言葉に、女は驚き、そして急に委屈した表情になった。

「少将様…… ひどいです。

毎回、書類を届けているのは私なのに……

少将様の通信係なんですよ……」

「あ??」

ダラは気まずく咳払いをした。普段から忙しく、関わる者は多いが、いずれも顔見知りばかりで、見知らぬ顔などあるはずがない。実際、ほとんど面識のない者などいなかった。なのに、すぐそばにいて、軍部で一番自分を助けてくれた者を忘れてしまったのだ。これはあまりにも申し訳ないことだった。

「わっ…… そ、それは、…… 悪い、本当に……」

ダラは申し訳なさそうに笑顔を引きつつ、すぐに真剣な面持ちになった。

「もう一度言ってくれ。今度は絶対に覚えるから!」

償おうとしていた。

「じゃ…… 絶対に覚えてくださいね……」

女は委屈した様子でダラを見つめ、両手の人差し指の先をちょんちょんと合わせた。

ダラ:「ああ、言ってみ」

すると女は泣き笑いになり、すぐに立ち上がってダラの前に進み出た。

「ハースキリ少将。私は早苗秋と申します。

もともと情報部に所属しており、編成替えによりこちらに配属されました。

どうぞ、よろしくお願いいたします!」

彼女は深くお辞儀をし、いきさつをすべて話した。

彼女の笑顔は穏やかで暖かく、そのスタイルに似つかわしくなかった。

体つきからは冷徹で手際のいい女に見えたのに、

笑う姿は清らかな大学生のようで、心が和む。

これまでダラはわがままな女をたくさん見てきたが、

眼前の秋にはそんなところがなく、

一緒にいてもいいだろう、という好感を覚えた。

「早苗秋…… な。

そばで仕事をするなら、これからは秋と呼ぶことにする」

ダラは手を上げ、身を起こすように合図した。

「当、当然です!」

単に呼びやすいからそう呼ぼうと思っただけで、

女の名前を呼び捨てにするのは失礼かとも思った。

だが秋は迷いもなく快諾し、ダラは少し驚いた。

目の前に立つ秋は、手をもじもじさせて地面を見つめ、

耳がほんのり赤らんでいるように見えた。

だがダラはそこまで気にとめず、隣に座るように促した。

「そういえば秋は、なぜ軍に入ろうと思った?情報部まで行ったんだな。」

「あっ!」

秋は目を輝かせた。

この質問は、まさに秋の心の奥を突いた……

家族はみんな、女身で軍に入るなんて反対だったのだ。

だが彼女は嬉しそうにソファーにぐっと腰を下ろし、今の立場を心から気に入っているのがはっきりと分かった。

「だって!スパイになりたいんです!

敵陣に潜り込んで情報を集め、

相手を惑わせながら、不意を突いて!

敵の首を 180 度にひねるん!」

秋はにっこり笑い、手で動作をまねた。

もちろん冗談で、場を和ませようとしているだけだ。

「じゃあ、今の状況に不満はないのか?

今は平和な時代なのに……」

ダラは首をかしげ、隣の秋を見た。

秋はダラの蒼く深い瞳に見つめられ、一瞬、息を詰まらせた。

慌てて前を向き直り、胸を張って右手を高く上げた。

「満、満足です!」

「なぜ?

君が望んだようなスパイ活動じゃないのに」

ダラは秋の様子に気づかず、さらに問い詰めた。

まるで尋問のスイッチが入ったかのように。

「だって…… だって……」

秋は苦しそうになり、指をくるくると回し、

先ほど消えたはずの赤みが再び耳に広がった。

それを見たダラは、訊きすぎたと気づき、笑い飛ばした。

「はは!大丈夫だよ、話したくなければ話さなくていい!」

「うぅ…… !

じゃあ、少将様!何か飲みますか?今、持ってきますね!」

秋は即座に返事を遮るように振り返り、立ち去ろうとした。

「ええと!まあいい!俺はあまりジュースは好まないん……」

ダラは手を振って手間をかけさせないようにした。

「知ってますよ!でも持ってくるのは、少将様のお好きな赤ワインで!…」

「じゃあ少しだけもらおう……」

ダラは早口で話した、秋はダラの反応を見て、思わず吹き出した。

なぜ赤ワイン好きだと知っている……

ダラは少し戸惑った。

そもそも自分はプライベートで少し飲むくらいだったのに……

……

「カン~」

二つのワイングラスが触れ合った。

「少将様のお誕生日なのに、みんな自分たちだけ楽しんで、ずるいよ!」

秋は酒気を帯びた様子で、前の連中を指してつっこんだ。

「はは!彼らには、俺の誕生日を口実に一日休ませてやる。

明日、今日の分の仕事を全部つけさせるからな」

「ははは!いいですね!」

ダラは顎を撫で、二人は意気投合して意地悪そうに笑い合った。

「私も?」

「そう」

「ぶがあああ」

……

宴会が終わり、ダラは自宅に帰った。

ベッドに寝そべり、

さっきの宴のことを思い出しては恥ずかしくて頭皮が痺れた。

頭を掻きむしった。

だが冷静になってよく考えると、確かにそういう女がいた。

毎日書類を届け、何度も進んで手伝ってくれた。

喉が渾ばれば水を持ってきてくれ、

仕事でうたた寝してしまえばコートをかけてくれた……

そう思った瞬間、ダラの瞳が驚いて縮まり、

勢いよく体を起こした。

「違う…… 何だかこの動作、よく知っているような気がする。……」

彼は顎に手を当てて考え込んだ。

こうした仕草を、昔、誰かにしてもらった気がする。

考えれば考えるほど背筋が寒くなった。

「あり得ない!あり得ねえ!

俺はもう百歳だぞ。

彼女はただ年配者を気遣う良い子に違いない。

考えすぎだ、考えすぎだ!はは……」

ダラは自分に言い聞かせた。

だがその後約一年、

ダラは気づいた。

秋はただの通信係ではなく、秘書兼衛生兵まで務めていた。

しかもこれほど兼務するには、ダラの承認が必要だった……

あ?あ?あ?

こんな承認、したっけ?……

どうでもいいことだと思って流してしまったのかもしれない。

だが問題はそこじゃない。

一番の問題は、秋が想像以上に……「怖い」存在だったこと。

俺が何を好んで食べ、何を飲むかまで知っている。

コーヒーの銘柄、淹れる時間、

何グラムの砂糖を入れるかまで正確に把握していた。

軍部でも秋に声をかける男は多かったが、

彼女はいつもそっけない。

同性愛者ではないかという噂さえ立つほど。

なのに秋はダラにだけは従順で、べったりとくっついてくる。

ダラは思った。

まるで、若い頃の俺のようだ……

そして、夜奈のことを思い出した。

何年経っても、未だに忘れられない。

「だめだ!この気持ちを消さねば!」

……

数日後、ダラは軍部の屋上に立っていた。

手すりに両手をつき、下の兵士たちの訓練を眺め、

時折、たばこを吸った。

やがて背後に懐かしい女の声が聞こえた。

「少将様、お呼びでしょうか?」

秋の来たのを聞き、ダラはたばこを始法力で微塵に砕き、

手すりにもたれて優しく微笑んで。

「ああ。悪いな、休み時間を潰してしまって」

「いえいえ!とんでもないです…… はは」

秋は照れくさそうに笑い、鬢の髪を触った。

特別に呼ばれたことが嬉しくてたまらない様子だった。

「…… では、本題に入ろう。

俺はもう年だし、恥など気にしない」

「ん?あ、はい!」

秋は少将が何を言うのか分からず、ただ応えた。

何か重要な用件だろう、と。

「お前…… 俺に何か思いがあるんだろう?」

その言葉を聞き、秋は一瞬硬直し、

そして顔が真っ赤になった。

だが彼女は隠さなかった。

蒸気機関車のように上気しながらも、はっきりと答えた。

チャンスは自ら掴むものだから。

「は、はい…… 少将様。

私…… 少将様のことが好きです!」

はっきりとした返事を聞き、ダラの眉はさらに固まり、ため息をついた。

「若い者…… 俺が何歳か知っているだろう…

お前の条件なら、もっと似合う相手が見つかる。

実力が俺の上になる者だっているかもしれない。

俺に時間を費やすな」

一瞬、照れ笑いしていた秋の顔色が青ざめた。

心がずるりと落ち込んだ、まさか……

「少将様…… 私、何か悪いことをしたんですか?

私…… 直せます!直せるから!」

焦った秋は不甘そうにダラに近づき、

瞳には涙が溜まっていた。

「いや…… 君はいい子だ。

細やかで、面倒見もいい。

悪いのは俺の方だ」

ダラは手を上げ、秋の接近を止めた。

「違います!少将様は私の中でただ一人なんです!

誰にも代えられません!」

秋は胸の襟を強く握りしめ、

綺麗な顔から涙が伝い落ちた。

見ていて哀れになるほどだった。

それでもダラは動じなかった。

「少将様!私、早苗秋!

一生!少将様以外には嫁ぎません!」

彼女は叫び、一か八かの思いで打ち明けた。

ダラの心を動かそうとした。

だがダラの表情はますます険悪になり、

冷たく背を向けた。

「君はそんなことはしない。

本気で俺と結婚したら、後悔するぞ。

なぜなら…… 俺は、災いを呼ぶ男だから」

そう言ってダラは稲光となり、屋上を去った。

「少将様!」

秋は飛びかかったが、もう遅かった。

屋上には秋だけが取り残され、手すりにつかまり……

激しく泣き崩れた。

ダラは去った。

この国を離れた。

そして五十年。

秋のために逃げたわけではない。

ずっと前から故郷に帰ろうと思っていたのだ。

五十年後……

故郷ルザーにいるダラのもとに、雲霓からの手紙が届いた。

手元の雲霓からの手紙を見つめ、

あの頃の雲霓での日々が押し寄せるように蘇った。

「そうだな…… ここにも長くいたし、

そろそろ雲霓に戻るか。

仕事もあるしな」

ダラは言いながら封筒を開いた。

第二の故郷には、すでに愛着があった。

だが中身を読み進めると、突然、固まった。

「秋……?

なぜここの住所を知っている……」

その名前は忘れるはずもなかった。

昔の笑顔がまた浮かんできた。

だが、彼女はもう重病を患っているらしい。

ダラはすぐに、古い同僚に会いに行こうと決めた。

数日後、雲霓の軍医療施設。

「すみません、早苗秋さんは…… 何号室ですか?」

「あっ!早苗部長ですね!3235 号室ですよ!」

「ありがとう……」

部長にまでなっていたのか。

立派になったものだ。

ダラは少し嬉しくなった。

自分が去ったことで秋が落ち込むかと心配したが、

案外、努力したらしい。

考えているうちに、3235 号室の前に着いた。

「トントン……」

「入っていいわ」

中から年老いて掠れた声が聞こえた。

ダラは一瞬、立ち止まり、それからドアを開けて入った。

目に飛び込んできたのは、

透明な酸素マスクをつけた、年を取った早苗秋の姿だった。

彼女はもう、とても年老いていた。

「来てくれたのね…… 少将様。

やっぱり少将様は、相変わらず…… お若いわ」

秋は微かに笑った。

ダラを見た瞬間、瞳の奥に秘めた重い想いが溶け、

軽やかな表情を浮かべた。

「秋…… 君は……」

今は重病に臥す秋を見て、ダラの胸に何とも言えない痛みが込み上げた。

あの頃の輝かしい少女が、今はこんな姿に……

ただ、部長にまで上り詰めたことを思えば、

きっと輝かしい人生を送ったのだろう。

「はは…… 生老病死は、

高位まで登り詰めていない修練者にとっては、

当たり前なことよ……?

座って、少将様。立っていないで」

だがダラは脇の椅子には座らず、

持ってきた物を置くと、秋の病室を整理し始めた。

秋は何も言わなかった。

「そういえば、息子さんや孫さん…どうしていないんだ?」

その言葉を聞き、秋は思わず吹き出して自嘲した。

「はは…… 息子も孫もいないわ。

生徒だったらたくさんいるけど。」

「どうして?息子たちは……」

ダラの言葉は途中で途切れた。

「少将様…… 私、息子も孫も、いないよ」

!!!

ダラの瞳は激しく収縮し、全身が痺れた。

部屋の整理をしていた手が、その場で固まった。

「私、まだ結婚してないもの。はは……」

その時、ダラは頭を下げ、拳を強く握りしめていた。

なぜ?誰のために?

秋がなぜ手紙をくれたのか、すべてが理解できた。

「少将様?どうしたの……?」

「悪い…… 秋、俺……」

ダラは喉を詰まらせた。

知らぬ間に、また一人の女を傷つけてしまった気がした。

あの時の決断は、間違いだったのだろうか……

「いいの……」

だが秋はゆっくり頭を振った。

「少将様にもう一度会えて……

私は、もうすごく、すごく満足だよ……

わざわざ会いに来てくれてありがとう。

情報部長まで上り詰めた甲斐もあったわ……」

秋の穏やかな言葉に、ダラは衝撃を受けた。

秋はダラの驚きに気づき、そっと続けた。

「少将様を探すために、私はこの地位まで上り詰めたの。

二十九年前の立秋の日、私はもう、あなたの居場所を見つけていたわ」

「なら…なぜ来なかったの…」

ダラは息を荒らした。

これほどの才能の女が、一生を捧げてまで自分を探すなんて。

自分にそんな価値があるとは思えなかった。

たまたま少将になり、たまたま強い力を手に入れただけなのに……

だが秋はそう言う。

「あなたの心の中にいる方の存在に、

私がどうして敵うだろう……

彼女と肩を並べるなんて、おこがましいわ。

女として、私は彼女が羨ましい……

でも、あなたに会えたことを、後悔してないわ」

「愛してる、少将様。

でも、ただそれだけでいいの」

「でも、少将様に話してほしい。

数日だけ、時間を割いて……」

「ああ……」

……

一週間後、ダラは寂しく墓前に立っていた。

手向けた花を置き、片膝をついた。

太陽が、その背中を照らしていた。

あの瑞々しい笑顔から、老い衰えるまで。

彼女は一生をかけて、告白し続けた。

ダラは涙を堪え、

最期の瞬間の秋の言葉を思い出すほど、後悔に駆られた。

「ごめん……

ここまでしてくれるとは、思わなかった……

俺はただ、君の人生の通過点に過ぎないと思っていた……

君の人生から消えれば、何も起こらないと思っていた……」

「大きく間違っていた…… ごめん」

「ごめんなさい……」


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