第19話:完成、そしてアカネのお願い
ここで雪人の作った物体の形状をおさらいしておこう。
<試作>
◎ ◎
左右が独立した卵型の物体。小さすぎてカップがつぶれないようにしただけだったため、次の型へ発展する元となった。ぬいぐるみタイプと、低反発ウレタンタイプの二種類が存在。
<初期型>
◎=◎
左右の円錐型を接続した型。デコルテの盛り上がりが不足していたが、『夜用』として使用。
<水滴型>
^ ^
◎=◎
左右の円錐形の上部に膨らみを持たせて、デコルテのラインにこだわった形。円錐を接続していたため、左右のズレはなくなったが、左右の動きが制限され、違和感あり。
<最新型>
^=^
◎ ◎
左右の円錐形の上部の膨らみで左右を接続。円錐はそれぞれ独立した形にしてより自然な動きを再現。
さらに内側も立体的にして装着する身体側のフィット感を高めている。
どのバージョンもプラモデル用のラッカー系のスプレー塗料で着色しているため、手触りはアカネいわく、『サメ肌』状態に。
そしてその着色の問題に関して、思わぬところからあたらしい発想が導き出された。
誤って無糖のミルクコーヒーをこぼしてしまい、素材がコーヒー色に染まってしまったが。
偶然にも、スプレー塗料で着色した色と酷似。
乾かしてみて、色の付き具合の他に、匂い等を確認してみたところ。
「うん……匂いはほとんどないね」
鼻を近付けて直接着色された物体の匂いを嗅ぐ。
「そうだね、もっとコーヒーの香りが残るかと思ったけど、意外と無臭……」
「あとは、もう少し時間を置いたあとに、カビとか生えてこないか、だなぁ……」
「天日で充分乾かしたから大丈夫じゃない?」
「いや、ちょっと怖いから……ミルクコーヒーだったから腐敗臭とか出ないか、もう少し様子見るよ……」
慎重派の、雪人。
とりあえず、最新版は従来通りのスプレー塗料三色で着色して完成。
早速、装着。
物体を身体にあてて、その上からワイヤータイプの四分の三ブラを着けてカップの中に収めてみると。
「あ……」
雪人が、意外な効果に気付く。
「下の方にスペースが出来たから、ブラの中央が浮かずにしっかり身体にフィットしてる……」
過去のバージョンでは、左右の円錐を接続していたため、どうしてもブラのカップの間、中央部分が浮き上がってしまっていたが。
「ふむふむ……なるほど、そうか」
アカネもスエットを脱いで雪人に並んでその部分を見比べて確認。
「よりリアルになって来た感じだねぇ」
「うん。これで上を着たら……」
ブラの上にキャミソールを着た状態では、まだ物体が露出して、人工物な違和感はぬぐえない。
その上からアウター代わりのスエットを着てみれば。
「うん、いい感じかな」
「うんうん」
「とりあえず、これで完成?」
「そうだね……あとはコーヒー着色が導入できるかどうか?」
「だね……あ」
アカネが、また何かに気付く。
「そしたら、さぁ、ちょっとお願いがあるんだけどぉ……」
「ん? 何?」
「今のって、雪人くんの身体にフィットするように作ったじゃない?」
「うん、そうだね」
「えっとね……」
少し言い難そうに、アカネがもじもじと、でも、意を決してか、はっきりと告げる。
「わたし用に二サイズ、三サイズ上の物体、作れないかな?」
「え!?」
何やら、意外な方向へと。
つづく模様。




