第20話:雪枝ママを、模してみる
「つまり、アカネ用の上げ底、作れと?」
「そうそう、雪枝ママぐらいのがいいな。そしたら雪枝ママにブラ借りれるし」
「……」
妻の意外な、斜め上の懇願に。
一瞬、思案するも。
「わかった。やってみるよ」
雪人の脳裏にはすでに制作の工程がひらめいている。
あーやって、こーやって、うん、これならば、と。
平日は、ほぼ時間が取れずに少しだけ簡単な作業の準備。
クッションのカバーを外して、中身の低反発ウレタンに切り取り線を描くなど、準備。
実際に切り取り作業をはじめるのは、また週末になり。
「あれ? 形が前のと同じだけど、それで大丈夫なの?」
雪枝ママ……雪人の実母を模して作ろうとする、その物体は、アカネのソレとは明らかに大きさが異なる。
「正面からの平面系で言えば、左右の全幅とかは基本的に似たようなものなんだよ」
「あ、そっか……アンダーはさほど変わらないもんね。違うのは……」
「うん、だから縦横の形状は前回のとほぼ同じで……問題は、表側の高さと、内側の深さ、だね」
内側は、アカネの身体にフィットするように掘り込む必要があり。
表側は、母・雪枝を模す。
雪人の身体にフィットし、アカネを模した前回とはその高さ深さが大きく異なる事になるのだが。
「内側は逆に、前回造った表側に合うようにすればいいからやりやすいかも?」
「あ、なるほど。前回のはわたしのに合わせたもんね」
と、言う訳で、おなじみの工程に突入。
先ずは外形を切り取って。
その後、内側を掘り下げてゆく。
前回の物体に合わせるように深さを確認しつつ。
そして最終的に。
「こんなもんかな? アカネ、一度合わせてみていい?」
「オーライオーライ」
言いながら、上半身をパージ。
素肌に、物体を、ぴたっと。
ぴたっと?
「んー、ちょっとまだ浮いてるかな? ほら、ここんとこ」
身体の左右の端が少し身体から浮かんでいる。
「あぁ、それくらいなら大丈夫だよ。ブラで抑え込むとぴったりになるから」
「ふむふむ、なるほど、なるほど」
そんな感じでまたいつものごとく、夫婦仲良く。
「じゃぁ、表面側を削り込んで行くけど……今までと根本的に大きさが違うから、何かガイドになるものが欲しいな……」
「おっけー、だったら、雪枝ママにブラ借りてくるっ」
絶対に『何に使う?』って聞かれるだろうな、と思いつつ、部屋を出てゆくアカネを見送る雪人。
「えぇ? 私のブラぁ? 一体ぃ、何に使うのぉ?」
案の定。
ブラを借りに行って、雪枝に問われる、アカネ。
「えーとね、うーんと、ね……」
ごまかしが効かないと言うか、ごまかせないアカネは結局。
「なるほどぉ、そういう事ねぇ。なんか面白そうじゃなぁい? いいわよぉ、待っててぇ~」
意外と、と、言うか。
すんなりと。
「借りて来たよー」
「借りれたのね……」
どーん。
母のブラ。
とは、言え。
洗濯担当もそこそこやってる雪人には。
ある意味、見慣れたモノ。
これをひな型にして。
外形を、模索して行こうと、作業を。
つづける。




