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Case:5 (元)婚約者の本性はとんでもなかった!?

主要人物

・ミモザ・クレール=サンフェルド ・・・ 侯爵令嬢。人と感覚がズレている。

・ツヴァイ・ブリュッセル=コールド ・・・ 侯爵令息。おマヌケさん。

・アリアナ・ムートン=クライトス ・・・ 伯爵令嬢。可哀想な子。

私はミモザ・クレール=サンフェルド。

サンフェルド侯爵家の娘である。

栗色の髪に深緑の眼。小柄で愛嬌のある外見で、よく家族からは子栗鼠に例えられる。あくまで見た目だけだが、それは今は置いておく。


意識はあるが、どこか頭にモヤがかかった状態が続いていたけれど、婚約者であるツヴァイ・ブリュッセル=コールド侯爵子息に婚約破棄宣言された途端に、霧が晴れるかのごとくスッキリとした。


そう今日は卒業パーティーである。


婚約者の髪と眼の色のドレスに装飾品を纏って出席したところ、開始早々に婚約破棄されました。


「ミモザ、いくら君が私のことを好いていようと、やっていい事と悪い事がある。我が友人のひとりであるアリアナ伯爵令嬢を階段から突き落としたり、暴漢に襲わせるなんて! これはれっきとした殺人未遂で犯罪行為だ!」


ツヴァイ様はアリアナという伯爵令嬢の腰に手を回している。友人にしては距離近くないですか?と思わなくもない。

ちなみに嫉妬ではない。

ただ、ちょっと思うところはある。ので、ちゃんとハッキリさせよう!


「ツヴァイ様、もといコールド侯爵令息。婚約破棄は承知いたしました。けれど、殺人未遂だなんて冤罪を被せるなんて酷いですわ」

「酷いのはそっちだろう! 嫉妬でか弱い令嬢を殺そうなどと!」

「まぁ、なんて侮辱なのかしら・・・!」


私はつい怒ってしまった。何たる侮辱か、と。


「まさか、私が()()1()()()()()()()()()だと仰りたいのですか? 喧嘩売ってます? 買いますよ?」


(怒るところソコ?)とその場に参加していた全員が思った事だろう。だが、とても大事な事だ。


「階段から突き落としたり、暴漢に襲わせるですか? そんな事しなくても殺せますよ? 試してみます?」

「試すって何だ!? そもそも、怒るポイント違くないか?!」

「階段から突き落としたと言う事柄から検証しましょう」


そう言って、魔術で階段を作る。


「さぁ、アリアナ嬢。階段の上に立ってくださいませ」

「え?」

「早く上がりなさい」


言霊を使って最上段まで登らせる。まぁ、大体15段くらいだから大した事ないだろう。


「では、コールド侯爵令息。どのような場面で落ちましたか?」


ツヴァイ様は眉間に皺を寄せながら答えてくれる。


「階段の最上段から突き飛ばされて、足を怪我したと聞いている。私が彼女(アリアナ)の悲鳴で駆けつけた時には踊り場に倒れていた」

「では、落ちてください」


私がアッサリそう言うと、見えない何かに突き飛ばされて転がり落ちるアリアナ嬢。ゴロゴロと転げ落ちて床に着くと痛みに呻いている。悲鳴ひとつ上げる暇も無かったようだ。


「見た感じ足は骨折しているみたいですね。もしかしたら肋骨も何本かヒビが入ってるかもですね。いつ頃の事かは知りませんが、普通は先程までの様に元気に立ってられないのでは? 悲鳴も上げていませんでしたし、本当に突き落とされたのでしょうか?」

「そ、それは・・・でも、確かにあの時悲鳴を聞いて、階段下で倒れてるのを見たんだ」

「でもそれって落ちてくるところを見た訳では無いですよね?」

「言われると、そうなんだが・・・。態々突き落とされたフリをする必要はないだろう!」


この人馬鹿なんじゃないかな?


「そうだわ! コールド侯爵令息も体験していただきましょう!」


そう言うと、ツヴァイ様を階段上に移動させる。


「何だ? 身体が勝手に・・・!?」


自分の意思とは別に動く身体に戸惑っている様だ。


「では、先程より強めに飛ばしますね? 行ってらっしゃいまし〜」


ドンッという音と共に宙を舞うツヴァイ様。そしてグシャっと音がしたかと思うと、首がちょっと変な方に折れていた。

あらら、ちょっと強すぎたかしら。


「うぅ・・・痛い。死んじゃう・・・」


あ、忘れていました。アリアナ嬢の事。

パチンと指を鳴らすと、アリアナ嬢は痛みが無くなったのか目を見張りながら立ち上がった。

ツヴァイ様もハッと立ち上がった。


「お二人ともどこか悪い所はありませんか? 幻覚を解いたので痛みや怪我は無いかと思うのですが・・・」

「幻覚? アレが?」


驚かれている様子の周囲に私の方が驚いた。

頭がハッキリしてる今ならどんな魔術でも使えるだろう。以前は靄がかっていたせいでまともな術式が組めなかった。でも今は違う。やりたい放題出来る!


「あと暴漢に襲わせるとありましたが、他人に殺らせるより自分で動く派ですので、私は関係ないですわ。私なら確実に人知れず殺れます!」

「胸を張って言うことじゃない!!」


ツヴァイ様、ツッコミが出来たのですね。流されボーイかと思っておりました。


「では、私がアリアナ嬢を殺せるのかの検証に入りますね」


笑顔で次へ進む。


『解け 紡ぎ 離れて 堕ちる』


呪文のようなものを口にする。

すると、瞬く間に見えない糸のようなものが彼女(アリアナ)の首を落とした。


「へ?」


アリアナ嬢が残した最後の言葉だった。


「アリアナ嬢!?」


コロリと転がる頭。パタリと倒れる身体。

一瞬の沈黙。

その後は悲鳴が上がる。


その騒ぎの中で、またもパチンと指を鳴らすと、アリアナ嬢の首は繋がったまま立っていた。


「首、私の首・・・繋がってる? 本当に?」


顔色が真っ青なアリアナ嬢。


「今のも幻覚か?」


震える声で質問するのはツヴァイ様。


「いえ、今のは幻術ですね」

「幻術? 幻覚とどう違う?」


呆然と尋ねる。先程のショックが抜けてないのだろう。


「幻覚は一時的な脳の錯覚です。幻術は世界を騙す行為です。これ授業内容にありましたよね? お忘れですか?」

「わ、忘れるわけ無いだろ! ちょっと頭から抜けてただけだ!」


叫ばないで欲しい。煩いから。


「そんな事より、次は火攻めで行きましょうか? それとも水責めがお好み?」


私がそう言うと、もっと顔色が悪くなる彼ら。


「私がアリアナ嬢を殺せなかった。これを検証するために何パターンか繰り返させてもらいますよ? もちろん幻術なので本当に死にはしないので安心してくださいな!」


真っ青を通り越して真っ白な顔色のアリアナ嬢とツヴァイ様に微笑んでみせる。もちろん検証の為なので私怨ではない。

ちょっと愉しんでいるけれど・・・。


「では、お覚悟宜しくて?」


それから火攻め、水責め、真空空間に放り込んでの窒息死、数本の槍や剣での刺殺、毒蛇を召喚して噛ませ毒殺、鈍器で殴りつけての撲殺、浮かせて落とす墜落死、等々様々な方法で殺した。


もうパーティー所では無いが仕方がない。

惨劇を見せられる卒業生達には申し訳なく思うが、これは自分の名誉に関わることだ(と、ミモザは思っている)。


「次は━━━」

「もう辞めてくれ! このままでは本当にアリアナ嬢が死んでしまう!」


ツヴァイ様は私を止めようと叫ぶ。煩い。


「でも、貴方達が先に言ったのでしょう? 私がアリアナ嬢を殺そうとして殺し損ねたって」


私の家はどちらかと言うと武家だ。喧嘩を売られて買わない訳には行かない。何より、常に魔獣戦線に出ている私含めた家を馬鹿にするにも程があると言うもの。


「ご、ごめんなさい。もう許して・・・。全部嘘なんです! ツヴァイ様の気を引くために嘘をつきました!」


おっと、ここでカミングアウト来ました。


「暴漢も自分で雇いました。階段からは数段飛び降りただけです。ごめんなさい。もう殺さないで!」

「アリアナ嬢、全部嘘だったのか?」

「そうです。申し訳ございません。ごめんなさい。ごめんなさい」


あ、コレはやりすぎたかな? トラウマになってそう。


「では次はコールド侯爵令息の番ですね!」

「━━━━は?」


素っ頓狂な顔で瞬きを繰り返すツヴァイ様。

私を公の場で貶した罪を償ってもらおうか。


「同じ内容ではつまらないので、コールド侯爵令息には少し頭を弄らせていただきますね」


『貴方が一番怖いもの 貴方が一番苦しいもの それは一体何かしら?』


私の呪文はテキトーだ。その時の気分による所がある。


おそらく、頭に靄がかかっていたのはコールド侯爵家が婚約関係で何か洗脳のようなものをしたのだろう。

逆らわない様にするため、とかね。


「うわああああああぁぁ!」


今のツヴァイ様は自分が最も嫌悪し恐怖する対象に群がられている幻覚をみている。一種の拷問用の魔術でもある。


とは言え、発狂されて廃人になっては困るので安全処置(セーフティー)はしているので安心して欲しい。


「皆様、ご安心くださいませ。1分程度の苦痛ですから」


柔らかな微笑みを浮かべて言う私に、周りは更に青ざめ、引いているようだ。何故そうなる?


「あ、そろそろ1分ですね。コールド侯爵令息」

「ヒッ・・・はい、何でしょうか?!」


怯えた視線が向けられる。そこまで酷いことしてないのに・・・。


「お二人に対する罰はこの程度で済ませて差し上げる。ですが別途、婚約破棄の慰謝料請求は後日させていただきます。コールド侯爵には貴方様からお伝えくださいまし」


晴れやかな笑顔(それを見たその場の全員が恐怖しているのにも気が付かない)。


「━━分かった。ちゃんと父に伝え、慰謝料も支払う」

「ありがとうございます。さて、アリアナ嬢」

「━━━ヒッ」


化け物を見るような目を向けないで欲しいのですけど・・・。

実際に殺した訳でも拷問した訳でもありませんのに・・・。

ちょっと傷つくミモザだった。


「アリアナ嬢はコールド侯爵令息と婚約してくださいませ。これは私からのお願いです」


ぽかんと口を開けるツヴァイ様にアリアナ嬢。

お行儀が悪くてよ!


「アリアナ嬢は嘘をついて、侯爵家(わたし)に冤罪をかけるくらいコールド侯爵令息の事がお好きなのでしょう? ならその想いは相当なもののはず。だって格上の家に喧嘩を売ったのですから」


そこまで言われてようやく気づいたらしい。


「なので、その想いを遂げて下さいませ。物語はハッピーエンドが一番でしょう?」


微笑みを浮かべ、コテンと首を傾げると、周囲もさっきまでの惨劇を一瞬忘れてほのぼのした気持ちになった。


「お二人がご結婚出来なければ、私が直接コールド侯爵閣下にお願いいたしましょう(物理で)」


コールド侯爵に対する書状に、ついでに別れる事(離婚)も許さないと明記しておこう。その方が面白そう。


「ずっと仲良くしてください。でないと私が何するか・・・ねぇ?」


二人は本日何度目か青ざめた顔をしていた。


「お二人の新たな婚約に祝福を。どうか末永くお幸せに!」


私はそう言って会場を後にした。


その後、私は無事に婚約破棄の上慰謝料も頂き、二人は新たな婚約を結んだそうだ。

二人の婚約契約書に何があっても離婚しない。浮気しない。と明記されていたらしい。しかも、魔術契約書を使っての婚約だったそうだ。これで未来は確定したも同然。良かった良かった。


私は何故か社交界において、[血みどろ令嬢][サイコパス令嬢」などと呼ばれるようになった。解せぬ。


新たな婚約はまだ結ばれていない。怖がられている様だ。


理想は、自分より強い男性だ。

なので、のんびり待つことにする。自分を怖がらず、自分と同等かそれ以上の実力を持ってる男性(ひと)が現れることを。




‡ ‡ ‡


[ 蛇足 ]


「アリアナ嬢、これから宜しく頼む」

「はい、よろしくお願いします」


━━━━沈黙。


((なんでこの人が良かったんだろう? こんなハズじゃなかったのに!))


二人は仲良く?(少なくとも表向きは仲良く)過ごしたらしい。



━ 終 ━

読んでいただきありがとうございます。


見た目守ってあげたくなるカワイイ系の主人公(中身サイコパス)。

本当はもっと詳細に拷問とも言える、怒涛の殺し生き返っての繰り返しを書きたかったのですが、自分には想像できても文章に起こす能力がなかったのでサラッと終わらせました。


幻覚(脳の錯覚)とは言え、廃人化するのを許さないその技量は何なんだとは思っています。


また良ければ、暇つぶしにでも読んでいただければ幸いです。

ありがとうございました。

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