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悪意のあるユーザー

「僕の名前は三剣尚矢。LVは20だ」


男は聞いてもいないのに自己紹介を始めた。


「派生世界では経営者をしている。NDAを結んでいるから名前こそ出せないが、某大手ASPとがっちりタッグを組んで複数のメディアを立ち上げた実績がある。現在の総PVはデイリーで1億。つまり、君たち全員が毎日1度くらいは僕が立ち上げたメディアを訪れている計算になるね」


隣りで安峰さんが「へえ、すごいじゃん」なんて感想を述べているけれど、どう考えても胡散臭い。


ASPってアフィリエイト・サービス・プロバイダーの略でしょ。

そことタッグを組んで複数のメディアを立ち上げたって、要はいかがでしたか系ブログを大量生産している業者じゃないか。

検索してもろくなページが出てこないの、お前のせいかよ。

名前を出せないのって秘密保持とかじゃなくて後ろ暗いからでしょ。


そもそも、基底世界に転移できてるってことは、いなくなっても社会的な影響が小さいやつなんだよ。

自分で言ってて悲しくなるけど。


「まあ、派生世界の話は置いておこうか。ノードE18のネストには少し気になることがあってね。僕の要求に応じてくれたこと、君たちには感謝しているよ」


ケット・Dからはさっき聞かされたから、応じるも応じないもなかったけど。

でも、今回のネスト攻略に参加したいと言ったのはこいつの方なのか。

斜木がいたから、てっきり斜木が罪滅ぼしのために参加したいと言って、こいつはそのお目付け役か何かで来たのかと思っていた。


僕は〈スタット〉を開いて、三剣のステータスを表示してみる。


  ――――――――――――――――

  名前          三剣尚矢

  ――――――――――――――――

  LV            20

  属性             善

  ――――――――――――――――

  分類          ユーザー

  性別             男

  年齢            30

  ――――――――――――――――

  電池           98%

  状態            正常

  ――――――――――――――――

  アプリ           5 ›

  ――――――――――――――――


胡散臭い男だけれど、LV20なのは本当みたいだ。


  ――――――――――――――――

  スラッシュ      15 / 15

  バックスラッシュ   15 / 15

  ダブルスラッシュ    7 /  7

  アロー        15 / 15

  トリプルスラッシュ   3 /  3

  ――――――――――――――――


アプリ一覧を見てみると、攻撃アプリが充実している。

というか、それしかない。

クー・Dは本当に攻撃一辺倒の登用をするらしい。


僕がステータスを見ている間に、三剣もスマホを僕たちに向けていた。


「どうやら、この中では僕がいちばんLVが高いようだね。つまり、僕がリーダーということでいいのかな?」


三剣の提案をケット・Dが即座に却下する。


「は? いいわけないだろうが。貴様は吾輩の配下ではない。リーダーは――彩輝かな」

「彩輝君はいちばんLVが低いじゃないか。僕を除くのであれば、次にLVが高い弦音君がリーダーを務めるべきだと思うけれどね」

「あいにく、弦音はユーザー登録したばかりで、出動は今回が初めてなんだ」

「へえ。そんな人材がよく埋もれていたものだ。それなら、華嵐君は?」

「華嵐は頭が悪すぎる」


「おい!」と中三川さんが突っ込む。


「美呼君は?」

「美呼は性格的にリーダーには向いていないな」

「――流伽君は?」

「流伽は頭が悪すぎる」


「おい!」と安峰さんが突っ込む。


「つまり、消去法で彩輝君ということか」


三剣が肩をすくめる。


「俺は――消去法関係なしに、リーダーは時枝がいいと思う」


そう意見したのは斜木だった。

僕は思わず斜木の顔を見てしまった。

ついでにステータスも。


  ――――――――――――――――

  名前          斜木双葉

  ――――――――――――――――

  LV             4

  属性             善

  ――――――――――――――――

  分類          ユーザー

  性別             男

  年齢            17

  ――――――――――――――――

  電池           98%

  状態            正常

  ――――――――――――――――

  アプリ           4 ›

  ――――――――――――――――


LVが4まで回復していた。

つまり、あの後、出動する機会があったみたいだ。

少しは立ち直れたんだろうか。


「久しぶりだね、斜木」

「――ああ」

「2人は知り合いなの?」


芭蕉先輩が僕に尋ねる。


「はい。この人は渋谷八高の生徒で斜木双葉って言います。さっき、僕が他のユーザーに殺されかけた話をしましたけど、この人がその僕を殺そうとした悪意のあるユーザーなんです」

「――え?」

「〈スラッシュ〉っていうアプリでぶった切られました。もう仲直りしたんですけどね」

「――そういうものなの?」


芭蕉先輩が困惑した視線を僕と斜木とに交互に向ける。


斜木がバツが悪そうにしながら「体に傷は残らなかったか?」なんて言うから、僕は思わず笑ってしまった。


「何言ってんの。大丈夫だよ。なんなら確認する?」

「いや、そういうつもりじゃない。傷が残らなかったならそれでいいんだ」


そんな僕たちのやり取りに、なぜか新宅さんが顔を赤らめている。

新宅さんは実はエッチなのかもしれない。

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