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咄嗟の英会話

てっきり、ワームホールからバグが勢いよく飛び出してくるものだと思っていたら、今回はそうじゃなかった。

のろのろと這い出てきた。


巨大なダンゴムシである。


  ――――――――――――――――

  名前          ピルバグ

  ――――――――――――――――

  LV             1

  属性             悪

  ――――――――――――――――

  分類            バグ

  性別            不明

  年齢            不明

  ――――――――――――――――

  電池          100%

  状態            正常

  ――――――――――――――――


数は2匹。


「芭蕉が倒すんだっけ?」

「そうだね。芭蕉先輩、お願いします」

「〈Arrow〉でいいのかな?」

「〈ダブルアロー〉がいいかもしれません。堅そうですし」

「わかった。やってみるね」


芭蕉先輩がスマホを構えてボタンを2回押す。

直後、目にも止まららぬ速さで射出された2本の矢が、1匹のダンゴムシの甲殻に突き立っていた。

絶叫しながら仰向けにひっくり返ったダンゴムシは、左右7対の肢を痙攣させたあとで終了したようだった。


もう1匹のダンゴムシが警戒するように丸くなる。

身を守るつもりのようだ――なんて思っていたら、それは復讐のためだったらしい。

丸くなったダンゴムシが凄まじいスピードで転がってきた。


「ちょ! 安峰さん! なんとかして!」

「あいよ」


僕たちの目の前まで転がってきていたダンゴムシを、安峰さんが〈スリープ〉で眠らせる。

もっとも、眠らせたからといって1度転がりだしたダンゴムシが止まるわけもなく、僕たちはそのまま轢かれてしまった。


「痛ッ!」

「ほげッ!」

「Ouch!」


ダンゴムシに轢かれた順番で僕、安峰さん、芭蕉先輩が叫ぶ。

こんな時にまで咄嗟に英語が出てくるなんて、さすがは帰国子女だ。


なお、僕たちを轢いたダンゴムシはしばらく転がった先で止まった。


「まあ、バグとの戦いはこんな感じです――」


起き上がって制服についた土を払いながら僕は言った。


「――大変なのね」

「今回はちょっと油断があったかもね。あたしが最初に眠らせればよかったわけで」


安峰さんが言い訳をする。

情けない。


「それより、芭蕉先輩。バグを倒したからLV上がったんじゃないですか?」

「うん。そんな通知が来てたよ」

「倒したバグのLVと同じだけLVが上がるんです」

「そうなんだ。新しいアプリも手に入ったみたい」

「そういえば、芭蕉先輩LV15でしたね。LV16になったからです。LVが2ⁿになるとアプリが手に入るみたいです。ちなみに何のアプリでした?」

「未知のアプリはロックされちゃうんじゃないの?」

「いえ、別に毎回、未知のアプリが手に入るわけじゃないので――」

「そうなのね。でも、今回手に入ったのも未知のアプリみたい」

「マジで?」


安峰さんがスマホを芭蕉先輩に向ける。

僕も芭蕉先輩のステータスを確認してみた。


  ――――――――――――――――

  名前          芭蕉弦音

  ――――――――――――――――

  LV            16

  属性             善

  ――――――――――――――――

  分類          ユーザー

  性別             女

  年齢            17

  ――――――――――――――――

  電池           99%

  状態            正常

  ――――――――――――――――

  アプリ           5 ›

  ――――――――――――――――


LVは16に上がっている。

電池が減っているのはさっきダンゴムシに轢かれたからだろう。

アプリの数は5になっていて、一覧を見てみると――。


  ――――――――――――――――

  アロー        15 / 15

  マップ        15 / 15

  ダブルアロー      6 /  7

  ?           3 /  3

  ?           1 /  1

  ――――――――――――――――


「本当ですね」


確かに〈?〉が増えていた。

しかも、クォータが1ということは――。


「っていうか、神話レアのアプリじゃないですか!」

「そうなの?」

「クォータが少ないほどレアらしいです」

「いいなあ、芭蕉。あたしのは普通のばっかりなのに――」

「何かすごいアプリなのかな?」

「実はケット・Dの話だとそうとも限らないみたいなんですけど、でも、そうだといいですね」

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