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マップの使い方

「ねえ、ケット・D――」


僕はケット・Dに尋ねた。


「さっき上級国民とかって言ってたけど、それって芭蕉先輩のLVと関係あるの?」

「あるよ。〈SOS〉インストール後は、全員LV1からってわけじゃなくて、初期LVは父親のLVの半分を継承する仕様なんだ。だから、高LVの父親から生まれたやつは最初から高LVになる。でも、いなくなると社会的に影響が大きいやつは基底世界に転移させられないから、たいていはLV1からになるんだよ。だから、ちょっと驚いたぞ」


適性評価にそんな項目もあったっけ。


「じゃあ、芭蕉先輩のお父さんは高LVのユーザーってこと?」

「ユーザーかどうかは関係ないな。別にユーザーじゃなくてもLVは計算されるから」


ワームやバグにもLVがあるからそれはそうか。


「確かに私の父は名のある家系の人だそうよ。母はお妾さんだったみたいだけれど」

「父親、ね。あたしがLV1だったのはそういうわけか――」


芭蕉先輩に続いて安峰さんもセンシティブなことを言う。

安峰さんの家もお金持ちっぽかったけれど、芭蕉先輩とは反対に男妾の子だったりするのだろうか。


僕の家の場合は――なんて考えてしまって、脈拍が上がりそうになる。

大丈夫。

このくらいではフラッシュバックは起きないはず。


「どうして継承するのは父親のLVだけなの?」


僕は気を紛らわせるために、そんなことをケット・Dに聞いてみた。


「もしも両親のLVを継承する仕様だったら、親世代のLVの格差が子世代にそのまま反映されちゃうだろうが。今の仕様なら、男は別に女のLVを気にしないから、低LVの女にも高LVの男をゲットするチャンスがあるんだ」

「低LVの男にはチャンスがないじゃん」

「そこはLV上げを頑張れよ」


僕がケット・Dと話している間に、安峰さんは芭蕉先輩のスマホを直接覗き込んでいた。


「これって地図アプリだよね?」

「多分、そうじゃないかしら?」

「それ、あたし欲しかったんだよね。基底世界がどうなってるのか気になるし」

「〈マップ〉か? 世界地図じゃなくて、今いる建物の地図を表示できるアプリだけどな」

「そうなんだ? ちょっと開いてみてよ」

「構わないけれど――」


僕もちゃっかり芭蕉先輩のスマホを覗いてみる。

芭蕉先輩のスマホの画面に学校の地図が表示されていた。

中心に現在地を示す赤いマーカーがある。


「これが芭蕉の部屋だね」


〈マップ〉の基本的な操作は元の世界の地図アプリとほとんど一緒みたいで、地図上でスワイプすれば地図を移動できるし、ピンチすれば縮尺を変更できる。

ただ、ケット・Dが今いる建物の地図と言っていたように、地図をどこまで移動しても、あるいは縮尺を最小にしても表示できるのは学校の地図だけ。

今いる建物というと、厳密に言えば女子寮になるはずだけれど、築地南高校の寮は渡り廊下で校舎と繋がっているためか、校舎や男子寮の地図も同時に表示できている。

それらを含めて1つの建物という扱いなんだろう。


まあ、そうじゃなかったとしたら、僕たちが校舎にある保健室から転移した際に、女子寮にいた芭蕉先輩を巻き込んでいないか。


画面右下に階を選択するためのボタングループがあって、今は2Fがアクティブになっている。

校舎についても2階の地図が表示されていて、僕たちの2-Aの教室や芭蕉先輩の3-Fの教室が表示されている。

芭蕉先輩が1Fのボタンをタップすると、1階の地図に切り替わって保健室などが表示されるようになったけれど、校庭などの情報は表示されない。

表示できるのはあくまでも今いる建物の地図だけのようだ。


「やっぱり、表示できるのは学校の地図だけか」

「そうみたいね」


そうなると、あまり有効な使い方が思いつかない。

よく知らない駅で使うくらいだろうか――。

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