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上級国民

「――彩輝君。起きて」


芭蕉先輩に揺り起こされて、僕は目を覚ます。


「起きたね。そうしたら、私に合言葉を教えて?」


芭蕉先輩がまた同じ台詞を言う。


「『時よ止まれ、お前はなんと美しい』」

「たいへんよくできました」


芭蕉先輩はそう言って微笑み、スマホの操作を始めた。


「――時間を巻き戻したの?」


安峰さんが僕に聞いてきた。


「うん」

「――なんで?」

「僕にもわからない」

「なんでよ。まさか、あたしに何か隠し事をする気?」

「いや、本当に僕にもわからないんだ。前回、芭蕉先輩は安峰さんと2人だけで何かを話した。安峰さんとの話し合いが、芭蕉先輩にとって必要なことだったみたいで。その後、芭蕉先輩に頼まれて僕が時間を巻き戻しちゃったから、話し合いの結果はもう芭蕉先輩しか知らないことになる」

「なんで? それなら、芭蕉の記憶にだって残らないはずじゃん」

「そのための合言葉だよ。話し合いの結果によっては合言葉が違ったんだと思う」

「――そういうことか。やってくれるな、芭蕉。あたしと2人だけの話し合いか。いったい何の件だろう?」

「あまり詮索しない方がいいかもしれないよ。安峰さん、泣いていたから」

「あたしが?」

「うん」

「――そうなんだ」


僕と安峰さんが密談をしている間に、芭蕉先輩は〈SOS〉のインストールを完了していた。


「インストールできたわ。ゾンビプロセス症候群も発症しなかったみたいね」

「まったく。無駄に時間を取らせやがって。それで、ホーム画面には何のアプリがあるんだ?」


ケット・Dの問いに対する、芭蕉先輩の答えは予想もしないものだった。


「〈アロー〉、〈マップ〉、〈ダブルアロー〉、それと〈?〉っていうアプリ」


ケット・Dが目を丸くする。


「マジで? さては、弦音。貴様、上級国民だな?」

「さすがは芭蕉先輩――」

「――っていうか、芭蕉。あんたLVいくつなわけ?」


芭蕉先輩に〈スタット〉を使おうとする安峰さんを僕は止めた。


「あ。ステータスは見ないほうが――」

「なんでよ」

「いや、ほら。芭蕉先輩、ステータスを見られるの嫌がってたから」

「そういや、そうだったけど――。じゃあ、時枝は気にならないわけ?」

「気にはなるけど――」


僕は安峰さんと芭蕉先輩の顔色を同時に窺う。

芭蕉先輩は少し僕に微笑んだ。


「〈スタット〉だっけ? でも、私のスマホにはそのアプリは入っていないみたい」

「標準アプリだから、弦音も使えるぞ。上からスワイプするとコントロールパネルが出てきて、そこに虫眼鏡のアイコンがあるはず」

「ああ、これかしら?」

「開くとカメラが起動するはずだ。カメラのフォーカスを当ててボタンを押せば、対象のステータスが表示される仕様だ」

「自分のステータスを表示するにはカメラを反転させればいいのね」


芭蕉先輩は〈スタット〉を自分に使ってみるつもりらしい。


「これが私のステータスか――」


芭蕉先輩はしばらくスマホを眺めた後、無意識にスマホを僕に向けて〈スタット〉を使ってしまったらしい。

しまった、という表情を芭蕉先輩は浮かべた。


「あ。私、彩輝君のステータス見ちゃった――」

「僕は別に構いませんよ」

「ごめんなさい。お詫びに私のステータスも見ていいよ」

「いいんですか?」

「うん」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「なら、あたしにも見せてよ」

「いいよ」


僕と安峰さんは芭蕉先輩のステータスを見せてもらった。


  ――――――――――――――――

  名前          芭蕉弦音

  ――――――――――――――――

  LV            15

  属性             善

  ――――――――――――――――

  分類          ユーザー

  性別             女

  年齢            17

  ――――――――――――――――

  電池          100%

  状態            正常

  ――――――――――――――――

  アプリ           4 ›

  ――――――――――――――――


「LV15!? 高っか――」


安峰さんが思わずそう口に出した。


僕も同じ感想だった。

アプリを4つも持っているってことはLV8以上なのは確定だったけど、LV15とは。

バクゲキ・コンビよりもLVが高いじゃないか。


芭蕉先輩のアプリ一覧はこんな感じだった。


  ――――――――――――――――

  アロー        15 /15

  マップ        15 /15

  ダブルアロー      7 / 7

  ?           3 /  3

  ――――――――――――――――

2025/01/25:年齢の誤りの修正

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