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妹のこと

私には妹がいる。名前はまだない。


最初は名前をつけていたのだけれど、同じ名前の女子にゴミのような扱いを受けてから、やめた。

妄想の中で妹の名前を呼ぶたびにそいつを思い出して、過呼吸になるなんてまっぴらごめんだからだ。


そんな妹を、現実に作り出せるようになったのは私が強大な力を手にしてからのことだ。


東京バベル。

メンテナンスルーム。


メンテナンス用の台の上に、妹が仰向けになって目を閉じている。

私は〈スタット〉のカメラを妹に向けてボタンを押した。

妹のステータスが表示される。


  ――――――――――――――――

  名前        イモウト・D

  ――――――――――――――――

  LV             0

  属性            中立

  ――――――――――――――――

  分類          デーモン

  性別            不明

  年齢            不明

  ――――――――――――――――

  電池           20%

  状態            正常

  ――――――――――――――――


妹は私が〈デーモナイズ〉で作ったデーモンだ。

自由にカスタマイズできるから趣味を全開にしてしまった。


外見は女子高生。

ツインテールの女の子。

服装は築地南高のブレザー。

普段はその下に隠されて見えない肌着やボディライン。


細部に至るまで徹底的にこだわった。

完璧な仕上がりといえる。


ただ、そうやってカスタイマイズしすぎたせいで、妹はかなり電池の消耗が激しい。

すぐに電池切れになって、こうして倒れてしまう。


だから、最低でも3日に1度は充電をする必要がある。

さもないと、妹はシャットダウンしてすべての記憶を失ってしまう。


私は自分のスマホを妹のスマホに重ね合わせた。

〈バッテリー〉で妹に私の電池を分けてあげるのだ。


やがて、妹が目を覚まして半身を起こした。


「おはようございます。お兄様」


妹の私に対する呼称は〈デーモナイズ〉で任意に変更可能だ。

デフォルトはマスターだった。


「おはよう。今日もかわいいね」

「ありがとうございます。お兄様」

「でも、君はもう少し丈夫にならないといけないね」

「申し訳ありません。お兄様――」

「君を責めているわけじゃないよ」


私は妹の頬に手を触れかけて、思いとどまった。

妹の皮膚感は人間とは違う。

あくまでも無機質なテクスチャー。


だから、私は妹に触れることができない。


私はいずれ見つけるつもりだ。

最愛の妹を人間に変えられるような、そんなアプリを――。

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