バッドエンド?
「――時枝。起きて」
安峰さんに揺り起こされて、僕は目を覚ます。
眠りから覚めた直後、僕は安峰さんの腕を思いきり引っ張って後ろに庇う。
そして、急いで〈タイムボム〉を開こうとしたのだけど、最初は待ち受け画面じゃないか。
慌ててスワイプしてホーム画面を出す。
あ。間違えて〈ロールバック〉を開いちゃったし。
ホーム画面の左上のアイコンに、右手の親指を届かせるのは難しいって。
〈タイムボム〉を開き直そうとしている間に、あえなく僕は〈スラッシュ〉をまともに食らって、床にぶっ倒れてしまった。
もうめちゃくちゃだよ。
でも、このタイミングで〈スラッシュ〉を食らっているなら、ちゃんと〈タイムボム〉を開いていたとしても間に合わなかっただろう。多分。
そうじゃなかったら、カッコ悪すぎる。
斜木は続いて安峰さんに襲いかかるつもりらしい。
3回目にして、バッドエンドを引いたかもしれない。
僕がそう思った時、フラッシュが光った。
同時にシャッター音。
安峰さんが〈スリープ〉を使ったのだ。
斜木が立ったまま眠ってしまう。
「時枝!」
安峰さんが床に仰向けに倒れた僕を介抱しようとしてくれている。
どうにか右手くらいは動かせそうだ。ただ、もうクォータはないから〈ロールバック〉は使えない。
間違えて開いた時に、実行ボタンも非活性になっていたし。
僕は〈スタット〉を開いて、スマホを自分に向けてみる。
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名前 時枝彩輝
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LV 2
属性 善
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分類 ユーザー
性別 男
年齢 17
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電池 42%
状態 終了中
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アプリ 2 ›
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状態は終了中。致命傷を受けたということか。
電池が徐々に減っていく。
前回の安峰さんと比べて電池の減りが遅いのは、安峰さんが僕の胸を圧迫して止血をしてくれているからだろう。
「時枝――。あんた、どういうことなの?」
このままだと僕の人生は強制終了することになる。
せっかく安峰さんが生きているのに。
「そんなことより、時間を巻き戻せないの?」
安峰さんが僕に尋ねる。
「もう巻き戻せないんだ。クォータが足りない」
僕の言葉に安峰さんが唇を噛む。
「――待ってて。ケット・Dに連絡してみる」
安峰さんがスマホを操作するために止血をしていた片手を離すと、僕の電池の減りが早くなった。
でも、その通話は繋がらないんだよね。
「繋がらないよ。ケット・Dは15:30までは電話に出られないんだ。それより止血をお願い」
不通を確認した安峰さんは、すぐに両手で止血を再開してくれる。
僕の電池の減りがまた遅くなる。
といっても、もう32%しかないけど。
「なんで知っていたの?」
「過去2回、僕は生き残ったからね。でも、安峰さんが――。だから、戻ってきちゃった」
安峰さんが、驚いた瞳で僕を見つめた。
「バカなんじゃないの!? これが最後なのに!? どうする気なの――?」
「今、考えてるところ」
安峰さんを浅草駅まで行かせて新宅さんを呼んできてもらおうか。
時刻は15:00。
上野広小路駅から浅草駅まで移動だけでも往復で16分。
新宅さんが到着するのは15:20くらいだろう。
でも、その間、安峰さんに止血をしてもらうことはできなくなる。
さっきのペースで電池が減っていくとしたら、僕の人生が終了する方が絶対に早い。
そうなると、新宅さんはケット・Dに呼んでもらうしかない。
ケット・Dと連絡が取れるのは15:30。
新宅さんが来るのは15:40だ。
それまで、僕の電池は――。
持たなそうだ。
止血がある状態でも1分で1%減っている。15:30くらいに0%になるだろう。
ケット・Dにお別れくらいは言えるかもしれない。
いや、待てよ。
もう1人いるじゃないか!
こいつを使ってやる!




