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バックスラッシュの使い方

「――時枝。起きて」


安峰さんに揺り起こされて、僕は目を覚ます。


斜木が襲いかかってくる。

僕は安峰さんを思いきり左奥に突き飛ばした。

そして、僕はすぐに〈スラッシュ〉を躱さなければならない。


しかし――。


その〈スラッシュ〉が来なかった。

斜木は、前回は袈裟に振り下ろしたはずのスマホを、なぜか後ろを振り向きながら左袈裟に振り下ろしたのだ。

つまり、僕が安峰さんを逃がした方へ。


もしかして今のが〈バックスラッシュ〉だろうか。

直前にスマホを操作したように見えた。

わざわざアプリを切り替えてまで、斜木はどうしても安峰さんを始末したかったらしい。


安峰さんが糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。


「なんで――?」

「そう聞くってことは、これが最初なのか? だが――」

「――2回目だ!」


僕はタイマーを1秒に設定した爆弾を至近距離から自爆覚悟で投げつける。


「うおッ――!?」


爆発で吹っ飛んだ斜木が床に叩きつけられる。

僕も反対方向に吹っ飛ばされた後、すぐに起き上がって斜木に背を向けて走り出す。


最初から予定が狂っているじゃないか。

前回とまったく状況が変わっていない。


でも、今の動きからすると、斜木の優先目標は安峰さんだったことになる。


バカか、僕は!


当たり前だ。盤面を逆にしてみろ。

安峰さんの〈スリープ〉は食らったら終わりのアプリじゃないか。そして、おまけに〈ブレーク〉まである。

斜木からすれば真っ先に安峰さんを潰したいに決まっている。


大江戸線の改札内に駆け込んだ僕は、爆煙が消えるのを待って倒れている安峰さんのステータスを確認する。


  ――――――――――――――――

  名前          安峰流伽

  ――――――――――――――――

  LV             3

  属性             善

  ――――――――――――――――

  分類          ユーザー

  性別             女

  年齢            18

  ――――――――――――――――

  電池           42%

  状態           終了中

  ――――――――――――――――

  アプリ           2 ›

  ――――――――――――――――


電池はまだ充分にあるのに終了中の状態。

放置すればもう助からない状態ということなのだろう。

ステータスを開いている間にも、安峰さんの電池はみるみる減り続ける。


斜木のステータスは?


  ――――――――――――――――

  名前          斜木双葉

  ――――――――――――――――

  LV             1

  属性             善

  ――――――――――――――――

  分類          ユーザー

  性別             男

  年齢            17

  ――――――――――――――――

  電池           68%

  状態            正常

  ――――――――――――――――

  アプリ           4 ›

  ――――――――――――――――


アプリの数からしても、まだ〈スリープ〉は斜木の手に渡っていない。

実際、一覧にも〈スリープ〉はなかった。


大丈夫だ。

これなら斜木を爆殺できる。


僕が2人のステータスを確認している間に、斜木は距離を大きく詰めていて改札の前まで迫っている。

僕は斜木に追いつかれたふりをして、改札の方に向き直ってスマホを構える。

斜木はといえば、改札を飛び越えようとして――見えない壁に弾き飛ばされた。


「ぐおッ――!」


そう。

前回、日比谷線の改札を飛び越えようとしていたお前は知らないはずだ。


改札には見えない壁があるんだよ!


床に後頭部から落ちてすぐには動けない斜木。

そこに僕はこれでもかと爆弾を投げつける。


――1発目。これは前回の安峰さんの分!

――2発目。これは今回の安峰さんの分!

――3発目。これは次回があるならその分だ!


  斜木双葉を殺しました。

  LVが2上がりました。

  アプリを5個入手しました。


もうもうと立ち込める爆煙。

それが消えた時、そこには斜木が無様に倒れていた。


ざまあみろ!

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