ロック解除
「そうしたら、ステータスに表示されないことも話そうか」
中三川さんが言った。
「2人はどこの高校?」
「僕たちは築地南高です」
僕は敬語で答えた。
中三川さんが18歳だったからだ。
少なくとも中三川さんは1個上のはずだ。
「あれ? それって新しい学校だよね?」
「そうです」
「いいなあ。私たちの学校は古いからさあ。雷門高校。何年生?」
「2年です」
「あたしも一応2年」
「私たちは3年。2人はどんな関係なの? 彼氏彼女?」
「同級生です」
「席が隣り同士」
「お隣りさんなんだ?」
「私と華嵐ちゃんは家がお隣りさんなんです」
「ね。幼稚園の頃からの幼馴染で大の仲良し。華嵐と美呼。嵐を呼ぶバクゲキ・コンビとは私たちのこと! このコンビ名、カッコよくない? 誰も使ってくれないけど。ちなみにバクゲキっていうのは、莫逆の友のバクゲキだからね?」
「そ、そうなんですね」
「あ。今、私のことバカっぽい思ったでしょう?」
「まさか。そんな失礼なこと思ってませんよ」
「本当かな? 言っておくけど、美呼の〈オラクル〉は嘘を見抜けるアプリだから、私たちの前で嘘はつけないぞ」
新宅さんを見るとうんうんと頷いている。
正直に言うしかない。
「すみません。ちょっとバカっぽいと思っちゃいました――」
「ピンポンピンポン! 正解です!」
中三川さんは別に機嫌を損ねていたわけではなかったらしい。
「私、実はバカなんだよね――」
「でも、雷門高校って別に偏差値低くない気がしますけど」
まあ、高くもないけど。
「いや、それがさあ、まぐれで入っちゃったんだよね。鉛筆転がして埋めるだけ埋めておいたら、それがほとんどあっててさ」
「そんなことあります――?」
「でも、さすがに大学は美呼と別々になっちゃうかもしれないんだよね。美呼は受験する大学を変えようかって言ってくれたんだけど、私はだめだって言ったんだ。だって、そうじゃん? 親友の私が美呼の足枷になってどうすんだって」
中三川さんはちょっとしんみりしているらしい。
初対面なのであんまり感情移入できないけど。
「もう頑張ってるとは思いますけど、受験勉強の追い込み、頑張ってくださいね。あと、大学受験でも転がしましょう。鉛筆」
「そうだね。この先も美呼と一緒にいるためには、それしかないよね。よし! 美呼と同じ大学を目指して、もうちょっと頑張ってみよっか!」
中三川さんの決意を聞いて、新宅さんはスマホを挟んで合掌した両手を口元にあてて、感激したような顔をしている。
2人の仲が良いのは本当みたいだ。
「さっそく帰って勉強しちゃう?」
「うん!」
「じゃあ、また今度ね! 行こっか、美呼!」
そう言ってA4・A5出口のある方に歩いていきかけた2人を、ケット・Dが「ちょっと待て!」と引き留めた。
「華嵐。貴様、なぜ吾輩が呼び出したと思っている?」
「あ、そうだった。アプリのロックを解除するんだっけ」
中三川さんはペロッと舌を見せた。
「じゃあ、ちゃちゃっと解除しちゃおうか。時枝君。スマホのホーム画面を出して」
僕は中三川さんに言われるままホーム画面を出した。
中三川さんは僕が見ている前で〈アンロック〉のアプリを開いて、QRコードでも読む時のように〈?〉のアイコンにカメラを合わせた。
すると、中三川さんのスマホの画面にアプリのロックを解除するかどうかの確認を求めるダイアログが表示された。
ボタンは解除またはキャンセル。
中三川さんが解除をタップする。
「はい。これで解除できたよ」
「ありがとうございます」
僕は自分のスマホのホーム画面に目を落とした。
〈?〉だったアイコンが、いつの間にか別のアイコンに変わっていた。
時計の文字盤の縁を取り巻くように反時計周りの矢印が描かれている、そんなアイコンだ。
アイコンの下のアプリ名も、今は〈ロールバック〉と表示されている。
ステータスのアプリ一覧にもちゃんと反映されていた。
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タイムボム 15 / 15
ロールバック 3 / 3
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またホーム画面に戻って〈ロールバック〉を開いてみる。
どうやら、クロック系のアプリらしい。
ブルースクリーンの中央に14:31と現在の時刻が表示されている。
その上には10月19日と小さく今日の日付。
時刻や日付をタップしても変更できるわけではなさそうだ。
日付時刻の下には実行ボタン。
画面の右上にはクォータ。これは固有アプリ共通の仕様かもしれない。
2025/01/26:空白文字が抜けていたのを修正




